今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-EE-3の謎解きの巻

2013年05月30日 14時40分46秒 | インポート

Dscf054346 最近ね。EE系のメンテナンスのお問合せを頂くことが多いのですがね。オークションで安く入手をしたので、お金は掛けたくないと異口同音におっしゃいます。カメラの相場と修理工賃は関係が無いのですけど、そうも言えませんので安めにお答えするのですが、それでも殆どの場合ご依頼がありません。あのカメラ達はどうなったのか心配しています。で、この個体はそんな中でも部分修理と言う条件で来て頂きました。なんでも、巻上げが硬くなってフィルムが切れるのだそうです。しかし、ダミーフィルムを装填してのテストでは全く異常はありません。そこで、手掛かりのフィルムを検証しています。皆さんは原因の推測は出来ますか?

フィルムの左側の最後のコマ周辺がパーフォレーションが破壊されて多重露光になっています。んっ? 撮影枚数を確認すると「24A」。 ここで気がつかれた方はいらっしゃいますかね。そう、この方は女性の方なんですが、24枚撮りのフィルムが撮影を終っても、無理に巻上げてパーフォレーションを壊してフィルムを切ってしまったと推理します。昔では考えられないデジタル時代だから起きる事故ですかね。しらないけど・・・

Dscf054825 オーナーさんがモルトを貼り換えたとのことですが、古いモルトを完全に除去していないのと、不必要な部分にも二重に貼ってあったりで、モルトの接着糊と裏蓋がくっついてどうにもならない状態です。今回はモルトの交換のみという部分修理でお受けしています。しかし、完全に新品と同じように貼り換えることは意外に難しく工数が掛かるのです。上下カバーと裏蓋は分離して、古いモルトの除去に勤めます。

Dscf054687 画像が逆になっちゃったかな? これは古いモルトの上に、補修用のモルトを重ねて貼った状態。古いモルトから、粉状のカスがフィルム室に混入しています。ファインダーも汚れていますね。見なかったことに・・・

Dscf055099 結局、見てみぬ振りは出来ませんのでファインダーの清掃と露出計の校正をしておきました。フィルム室は完全にきれいな状態。モルトはメーカーの指定個所のみに貼っています。それ以外は必要ありません。底カバーに大きなへこみがありましたので、修正をしてあります。

Dscf054955 まぁ、いろいろありましたけど、来てもらって良かった。これで1台救えました。ネガからお子様の写真をお撮りになっているようでしたので、今度は撮影枚数を確認しながらフィルムを切らないようにしてくださいね。

Dscf054446 またまた前後しちゃいました。底カバーのへこみ修正前です。サービスで修正をしてあります。


SEIKO 盲人用腕時計のオーバーホール

2013年05月28日 13時15分23秒 | インポート

Dscf053776_2 以前にシチズンの盲人用腕時計を取上げましたが、こちらはセイコーの盲人用腕時計の男女セットです。文字盤が完全金属製で2針の針も丈夫に設計してあるようです。とは言っても、機械の構造自体は普通の腕時計と同一なので、針に直接触れるという使い方には、ちよっと心配もありますね。

Dscf053624 裏蓋を開けて見ました。なにか見覚えのある機械ですね。どちらも6618Aという機械で、サイズの違いはケースによります。どうもスポーツマン17と基礎キャリバーは同じようですね。

Dscf053853 特殊な模様の金属製文字盤ですね。インデックスは指で確認しやすいような形状です。針は秒針はありませんよ。普通の時計は、針を軸に差し込んであるだけなんですが、この時計は長針は四角い軸(■)になっていて、ビスで留める構造です。ラフに指で触れてもずれないような配慮ですね。短針は軸が太いため、普通の差込式です。

Dscf053946 すべて分解洗浄をしました。そうですね。スポーツマン17と一緒ですね。この機械は、四番車には極小の座が嵌るため注意をして紛失しないようにしなければなりません。

Dscf054024 組立に特には問題はありません。女性用も全く同じですので、同じ作業を2回行いました。測定の結果は、女性用のテンプの方が素直で、データが安定していますね。

Dscf054176 風防が開くわけですから非防水は当然ですが、どちらの個体にも裏蓋にOリングが入っていましたが、どうもオリジナルではないようです。適正なサイズのものに交換をして裏蓋を圧入して完成です。この機械は、ディズニータイムなどにも使われているようですが、ケースは、実用性重視のしっかりとした作りですね。健常者の通常使用として全く問題はない時計です。


稀少なコーワSWが来ましたよ

2013年05月23日 22時22分13秒 | インポート

Dscf052846 珍しいコーワのSWが来ています。興和と言えばコルゲンコーワの薬やさんですけど、私も若い時に、研究所に営業で担当したことがありましたよ。テレビコマーシャルの撮影で、歌舞伎一家の女優さんが来ていた場面にも出会いましたね。その興和がカメラを作っていたんですね。当時としては超広角の28mm f3.2を搭載したカメラで、焦点距離から鏡胴やボディーは薄く設計されています。仙台の笹かまのようなボディーはPENにも似た格子状のシボ革もあって、非常にホールドしやすい感じです。しかし、目立つのは一つ目小僧のようなファインダーですね。工業デザインと言うよりは、設計上の制約からデザインが決まって行ったような感じですね。各リングは薄く設計されているので、硬めにクリック感もあって、あまり操作性は良好とは言えません。この個体は、前玉のキズが多いため、付属で付いて来た個体から移植することにします。

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28mmなので距離は目測式。ケブラー式のファインダーが見えます。シャッターユニットをボードごと取り外します。この個体は、過去に何度も分解を受けていますね。

Dscf053088 ボディーの厚みからケブラー式のファインダーが採用されているのでしょうか? 過去にも分解清掃されていて、コーティングが剥離している部分もあります。しかし、状態としては悪くはありません。

Dscf053251 シャッターはSEIKOのSLVとセルフタイマー付き。各部を分離洗浄して注油しながら組立ました。

Dscf053384 完成したシャッターユニットに清掃済みのレンズを取り付けています。ヘリコイドグリスも抜け気味でしたので、交換してあります。

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完成したシャッターユニットの裏側ヘリコイドの内周部分の防眩塗装はオリジナルの上に補修さけた塗料も劣化しており、再塗装をしてあります。洗浄した遮光マスクにモルトを貼って完成。本体に取付けるボードの留めビスの規格が小さめで(頭も)緩み易いようです。このあたりの設計がちぐはぐなところ。

Dscf053156 シンプルなトップカバーですが、「KOWA」の下のえくぼがありますね。修正を試みますが、まっ平な部分はごまかしが利かないのでほどほどにしておきます。f剥離がある色入れはやり直しのご依頼がありました。

Dscf053384 シャッターユニットを本体とドッキングしています。トッフーカバーはこんな具合。

Dscf053497 ここらへんも設計がちぐはぐなところ。レリーズボタンはサイズが大きくてストロークが小さめなので、非常に良いタッチですが、巻き戻しダイヤルのノブは何なのさ。こんなに細くては非常に操作がしにくいですね。

Dscf053552 その巻き戻しダイヤルのレバーが完全に収納されませんね。部品取り機の方が、板バネを留めるビス頭が低いですね。下もビスも規格外を使ったようにも見えないのですが、接触するわけですから不都合ですので交換をしておきます。

Dscf053646 最後にピント調整をして完成です。大量生産をしたメーカーさんではありませんので、あちらこちらに設計が煮詰まっていない感を覚えますね。操作感など製品としての完成度が低いのかな? まぁ、それを含めて味と言うことで、愛好する方がいらっしゃるのでしょうね。で、数日遅れましたが、5月22日は加藤隼戦闘隊で有名な加藤建夫部隊長が戦死した日でした。ビルマのアキャブ基地を急襲したイギリスのブレニム爆撃機を邀撃に「回セ回セ!」で飛び上ってベンガル湾上空まで追撃し被弾のため自爆したのでした。画像は、私が二十年ぐらい前に作った二型乙の内地の防空塗装機ですが、加藤機は一型装備ですから武装は7.7mmと12.7mm二挺と非力で、とても欧米の防弾防御を施された機体を撃墜することは困難で、肉薄し過ぎたことが被弾の原因とも言われています。かねてより、被弾した時は自爆を公言していた部隊長は率先海面に突入したのでしょう。


岡谷光学 Lord Ⅳb ブラックのレストア

2013年05月20日 23時20分12秒 | インポート

Dscf051566 岡谷光学のロードⅣbのブラックモデルはかなり貴重なのでしょうね。過去にも同じモデルを取上げましたが、今回の個体は、外観の塗装は非常に良いコンディションで、側面のシボ革が欠落しているのが気になる程度です。しかし、巻上げは全く不動でシャッターも切れません。ファインダーは汚れが激しく、レンズにカビもあるという、かなりきびしい状態ですね。まず、不具合の個所を特定していきます。

Dscf051651 レンズはハイコール4.0cmでシャッターはセイコーシャMX1~1/500と定番のシャッターですね。まず、シャッターに問題があるのかを点検します。レンズを分離しますが、すでに過去にレンズを分解するために、工具孔周辺がキズだらけにされています。

Dscf051784 シャッター単独では、不調ではあるが作動はすることを確認しました。つぎは、ちょっと分離が特殊なトップカバーを外します。問題は巻上げ機構とアタリを着けます。ギヤの構造と、巻き戻しクラッチの作動が困難な状態です。それを無理に力を入れて巻上げをしたためのダメージがあるようです。元の原因は、グリスの硬化による固着だと思います。分解洗浄の上、再組立をしていきます。ファインダーもかなりの汚れ(画像は荒清掃後)がありますが、プリズム使用の高級メカのため、致命的なダメージは無いようです。ハーフミラーも何とか使用出来るでしょう。

Dscf051851 シャッターをオーバーホールして行きます。スローガバナーを洗浄していますが、無給油で動いていた個体で、ホゾの磨耗はありますね。

Dscf051946 その他の部分も洗浄注油して行きます。特に問題はありませんね。

Dscf052084 トップカバーの清掃。カウンターの透明保護板が脱落していますので、清掃の上、再接着をします。

Dscf052185 カム板を付けて清掃したレンズを組み込みます。JHTさんのカニ目レンチを逆に取り付けて使用します。

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裏蓋開閉鍵部分のシボ革が剥離していますね。以前も同じような個体が有ったと思います。この頃のシボ革は、ビニールレザーではなくて、紙にコーティングをしたような材質ですから、現在は非常にもろくなっています。紙ですから濡れ雑巾などで拭くことは厳禁です。厚みも薄いですから、補修する場合は、生地を薄くすることが肝要です。

Dscf052478 特徴的な巻き戻しクランク。アイディアだとは思いますが、あのり良い設計とは思いません。スリ割りの留めビスの色が抜けていますね。

Dscf052626 スリ割りには色入れをしてあります。色は101系のパーミリオンオレンジでほぼ合いますね。シボ革も接着してあります。

Dscf052775 指に塗料が付いていたりして・・これで完成です。中々きれいなブラックと思ったら、ft表示ですから北米から里帰り機ですかね。1955年頃といえば、とくかく輸出を増やして外貨を獲得しようと頑張っていた頃ですね。


いろいろやってました

2013年05月18日 20時36分19秒 | インポート

Dscf051351 え~と、短時間で終る作業をいろいろやっていましたよ。まずはPEN-EES-2ですけど、長時間、使用せずに防湿庫に置いておくとシボリ羽根が張り付いてしまいますね。こうなると分解して洗浄する以外にありません。画像は、すでに洗浄したユニットを組み込んだところ。

Dscf051494 ユニット本体に組み込んで作動の様子を見ています。問題ありませんので、全て組立てて終了。

Dscf051575 キヤノンのスクリューマウント50mm f1.8が2本。こちらも防湿庫に保管で曇ってしまいましたね。シボリ部は曇りやすいですね。清掃をして終了。

Dscf051755 つぎはセイコー・チャンピオン860カレンダーのブラック文字盤。リュウズを巻いても巻上げが出来ないようです。すべて分解洗浄をしておきます。

Dscf051664 原因は、香箱車の中に入っているゼンマイが切れていたため。外周部分の破断のため、少しは巻けるんですね。これは交換することになります。

Dscf051831 ゼンマイは交換して、いつものように組立てています。最後は、カレンダー機構を組立てます。

Dscf051944 このユニットは、小さなバネはこの部分の1個だけです。日曜制レバーバネを飛ばさないように慎重に組み込みます。

Dscf052067 この個体は防水ケース仕様です。キズが付いた古い風防を純正新品の風防と交換してあります。すでに何度かの分解で、ベゼルにストレスが掛かっていますので、新しい風防を圧入する時は緊張します。すでに文字盤と研磨をした針を取り付けています。

Dscf052146 ユニットをケースに収めて完成。となりは、一緒に来たアルピニスト。大きく歩度が狂っていました。テンプ部の油切れが原因でした。再調整をして終了。