今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

またPEN-FVが来たよの巻

2019年01月29日 12時54分18秒 | ブログ

前回に続いてきれいなPEN-FVが続きます。シリアルは#1343XXと、前回と違って後期型のユニットが使われている個体になります。PEN-FTと比較してPEN-FVはどのくらいの比率で生産されたのでしょう? シリアルと製造年月から推測すると、PEN-FV#106400 とPEN-FT #117300  の製造は同じ1967年3月で、PEN-FV #134300とPEN-FT #301400 の製造は1969年7月です。28カ月間の製造台数はPEN-FV が27,900台(996台/月)で、PEN-FT は184,100台(6575台/月)になりますかね。実際には欠番もありますから、この台数よりは下回っていたと思います。

で、後期型のFVを探していたオーナーさんがやっと見つけた美品なのですが・・

後期生産の個体とすると光学系が良くないようですね。

 

 

ファインダーを覗くとスクリーンの端に汚れが見えます。表面から見てみると・・あぁ、ここだ。何か液体が染みています。

 

未分解機のようですが、この個体は水没ではなく水が侵入しているようです。セルフタイマーは不動ですが、バネが腐食しているのが分かります。

 

セルフタイマーを取り除いてみると・・。これは只の水ではなく、乾燥すると白く結晶する液体のようです。

 

 

通常、ルーペの留めネジがここまで腐食することはありません。液体が溜まってレンズも曇らせています。

 

では、ダイカスト本体から始めますが、モルトの貼ってある部分のダイカストが激しく腐食していて削って取り去らなくてはなりませんでした。

 

モルトはオーナーさんが入手された市販キットを付属して頂きました。一般の方には便利なアイテムと思いますが、私は使用しないことにします(笑)

 

先に塗装の剥離した部分をタッチアップしてからモルトを貼ってあります。

 

 

シャッターユニットは特に問題はありません。O/Hで組み立てます。

 

 

洗浄しましたが、スクリーンの右上にシミが残ります。

 

 

オサエバネにも侵入した液体の形跡が残っています。

 

 

プリズム側にも汚れがあります。

 

 

この頃の全反射ミラーとしては劣化が進んでいます。新品と交換します。

 

 

作動不良のセルフタイマー。歯車と軸受けにも腐食があります。

 

 

分解をして錆を磨いてから組み立てます。

 

 

全反射ミラーは清掃で使用可能でしたが、オーナーさんが奮発して新品を使いました。

 

マウントの11時の部分にフランジバック調整用のワッシャーが入ります。(この個体は)

 

セルフタイマーは快調に作動しています。

 

 

付属の38mmもきれいなレンズですが、絞り羽根に油が回り始めていますので清掃しておきます。

 

これで本当の美品になりましたね。探していた後期型の美品を手に入れて良かったですね。

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針の色を直したよの巻

2019年01月26日 17時59分24秒 | ブログ

先日のスピードタイマー角目に刺激されて自分の角目の針の色を直そうと思いましたよ。それと、この文字盤は以前にe-bayで購入したリプロの文字盤なんですが、純正と比べて青色の違いやSEIKO Speed-Timerのタンポ印刷が太い、インデックスの白ラインが無いなどが気になっていました。また、輸出モデルではこのような仕様となっているのか、カレンダー窓が黒く潰されています。国内モデルは銀のヘアラインとなっているので、それを修正してやろうと思いました。で、2枚貼り合わせのプレートを分離しました。

基板は銀のヘアラインで、カレンダー部分にちびっこギャングのようなアイマスクを印刷してあります。リプロ部品は工数を省略しているのが普通ですが、ここだけは無い方が良いということ。そこで、インクを溶かして取り去りますが、基板にはクリアーがコーティングされていますので、それも落ちてしまいますけど、まあ、面積が小さいので無視をします。

針を塗装して取り付けました。それまでの蛍光レッドよりは落ち着いて見えます。国内仕様では、SEIKOと下に5 SPORTSが白地で入るのですが、工程簡略で金色1色とされているので暗い印象となっている。6時の軸穴がズレているのは,文字盤の足の取付精度が悪いため。本来は6時位置のクロノグラフ分表示は10 20 30は黒字で40 50 60は褐色系の字となっている様ですが、リプロでは薄い黄色字(40 50 60)で印刷されていますが殆ど見えません。たぶん、経時で色素が飛んだ文字盤を参考に作られたのでしょう。しかし、今回の文字盤は不良品で、そもそも40 50 60 が印刷されていません。工程漏れですね。これがリプロクォリティーです。もちろん、良品を保証してもらいましたけどね。この文字盤はおまけです。

 現在出回っている文字盤にも、印刷内容が異なっているものも見受けますが、出元は同じ香港辺りの部品商でしょうね。ここまで作れるのなら、多少のコストアップでも、もっと高精度のものを期待しますね。

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フランスから初期型PEN-FVの巻

2019年01月25日 17時36分51秒 | ブログ

目のコンディションは改善方向なのでボチボチ作業を始めています。この初期型PEN-FV #1064XXはフランスからの修理ご依頼です。当然、私はフランス語が分かりませんので、国内の代理人の方を経由しています。あまり使われなかったきれいな個体なんですけどね。製造はFTで言うと#117000 と同じ1967年3月の製造で、当然使われているユニットはすべて初期型のものなので、安定性には難がある厄介の個体です。

当然、現状はフリーズ状態となっているわけですけど、O/Hで問題はないと思うのですけどね。では、本体を洗浄してモルト貼りから組み立てて行きますが、初期型は巻上げユニット周辺のネジは全て真鍮のスリ割りネジで、強い緩み止めが塗布されていて、不用意に緩めようとするとスリ割りを壊すか頭がねじ切れるかです。分解を想定していないと言うか、ネジの緩みを懸念していたようです。まぁ、そこは経験で分離しますが。

リターンミラーですが、長期間、革ケースに入っていた影響か、外周のメッキは飛んで無くなっています。しかし、使用できない状態でもありませんが、オーナーさんのご希望により交換することにします。

 

新しいミラーを貼ったミラーホルダーを取り付けました。ミラーユニットも当然初期型です。

 

最後のプリズム関係を組み立てて、前板関係は完成させます。

 

 

シャッターユニットは摩耗はしていませんが、スローガバナーは初期型です。しかし、特に歯車の偏摩耗はありませんので洗浄注油してあります。シャッターバネは少しくたびれているんですね。まぁ、今回は再使用とします。

 

シャッターが完成しましたので、前に完成している前板を組み込みます。

 

 

全反射ミラーは腐食も無く見かけきれいでしたが、こちらも交換をしておきました。

 

これでメカは完成。

 

 

トップカバーを取り付けましたが、巻上げレバー裏のネジは丸皿のスリ割りネジで、アンダーカバーもスリ割りネジ(巻き戻しは+ネジ)が初期型の特徴。

 

 

付属の38mm。長期に保管されたレンズは後玉のコーティングが劣化します。全体のO/Hをします。

 

 

その他、巻き戻しクランクもPEN-Fと同じローレットタイプです。きれいな個体ですが、どこで入手されたのでしょうね。まぁ、海外でもファンの方がいらしてうれしいですね。

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SEIKO スピードタイマーの針交換の巻

2019年01月21日 19時50分46秒 | ブログ

すみません。正月早々、目が厳しくてね。眼科に掛かっているので作業はゆっくり目にさせて頂きますね。で、セイコー・スピードタイマー6138-0030ですけど、右側がご依頼の個体で左側は私の所有です。私の方は文字盤とベゼルはリプロ部品で針は再塗装ですが、リプロ部品も何種類か出回っていて青の色も微妙に異なります。私のものは文字盤の青が紫掛かっていてあまり良い感じではありません。右側の文字盤は純正かなぁと思いますが、きれい過ぎとも見えますのでリプロ部品かも知れません。

オリジナルの長い秒針と小針はオレンジ掛かった黄色だったようですが、黄色は長い時間の間に色素が飛んでしまい白っぽくなっています。長短針も劣化しています。

 

そこで、最近はオークションで入手が出来るようになったリプロ針が付いてきました。しかし、出来はあまり良くなくて、特に軸の長さはホゾ穴が純正とは異なっていたりで、そのまますんなりとは取り付いてくれません。特にクロノグラフの場合は、長い秒針を急速に0時に復帰させるため、針とホゾが完全に固定されていない場合、停止位置がずれてしまいます。

短針はきつめでしたが何とか入りました。長針がいけません。穴が小さくて無理をすると歯車ホゾなどを痛めてしまいますので、穴をリーマで拡大をして取り付けました。画像の小針は純正でもいくつか規格があります。右のリプロ針の軸は長すぎで、このまま使用すると短針と接触をしてしまいます。よって、ヤスリで短く削ってリーマ修正のうえ取り付けました。

問題は長い秒針。こちらも穴が小さく、ホゾの奥まで入りません。取付けで復帰ボタンで復帰させると完全に針とホゾが固定されていないため、0時を行き過ぎて58秒まで行ってしまいます。対策としては、穴を拡大してホゾの奥まで差し込むかですが、今回は、元の針を塗装して取り付けました。よって、微妙に色が違います。問題なければ自動巻き機構を取り付けて行きます。

 機械をケーシングしてから自動巻き機構と回転錘を取付けて完成。

 

 

あぁ、やはり針がきれいになると時計がシャキッとしますね。秒針のオレンジ色はJR中央線の103系から使われているパーミリオンオレンジをそのまま使用しましたが、中々合っていますね。自分のも塗り替えようっと。古い時計をレストアする場合、何度も抜き差しされた針の劣化に頭を悩ませるのですが、今回のリプロ針は救世主なんですね。しかし、残念ながら出回っているスピードタイマー用はあまり品質(精度)が良くありません。まぁ、自分で時計を直す人は、修正するぐらいの技量があって当然。ということかも知れませんが、クロノグラフの場合、秒針と軸との確実な固定は最重要ですから、もう少し精度が良いリプロ品が出たらうれしいなと思います。文字盤などは「高品質版」と言われるものも出ては来ましたけどね。と言うことで、ご自分のスピードタイマーの針をリプロ品と交換したいとお考えの方には、そのまま簡単には付きませんよ。ということをご理解頂ければと思います。

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PETRI Color 35 ニコイチの巻

2019年01月17日 19時46分14秒 | ブログ

カメラ店様から以前に来ていたペトリ・カラー35のクロームボディー2台です。手前の方が見かけの程度は良いが露出計は不動。後ろの方は部品取りで付いて来ましたが、露出計は生きていて、清掃すると程度もあまり変わらないので、希少なカメラですから、なるべく両方生かすようにしたいと思います。

ローライ35に構造が似ていますが、中身の設計は全く異なります。レンズは40mm f2.8と明るく、テッサータイプ。シャッターはペトリMS B 1/15~1/250 発売は1968年7月のようです。

 

それまでのペトリのイメージとは全く違う力作ですね。沈胴式のレンズは背面のダイヤルで繰り出します。レンズが出ていないとシャッターは切れない構造。

 

このように沈胴させます。シャッターボタンの外周がシャッターダイヤル。

 

 

でと、事前の検査で露出メーターとCdsは生きていることを確認しています。では、回路を疑いますが、電池室には電池の液漏れの形跡があり、ここが怪しい。尚、ピンセット先のレバーは巻上げと同調して動き、露出計の電源が入るスイッチを制御しているのですが、現状では電気接片に当たっていません。常に通電している状態。レバーは少し左側に曲げれば良いのですが、無理をすると折れる危険性があります。

電池室は金属製でオリンパスでしたらプラ製の電池室を接着留めがセオリーですが、こちらは2本のネジで取り付けられています。

 

接点を研磨して半田付けをしました。これで行けるかと思ったのですが、何故か線間の抵抗値が異常に高くメーターは作動しない。

 

オリジナルのリード線は途中で疑似断線の状態でした。では、芋ずる式で新線を通します。

 

エポキシ接着剤の劣化は仕方ないのですが、それにしても、触るとパラパラとミラーやガラスが取れて来ます。ファインダー内の表示が傾いていたのは反射ミラーの脱落でした。

 

露出メーターは復活、ファインダーはきれい、ヘリコイドグリスの交換をしてあります。あとはレンズとシャッター。

 

シャッターは問題なく清掃注油とレンズの清掃でおしまい。

 

 

 二台目の方ですけどね。じっくり点検すると片側にしかない吊環が欠落しています。あぁ、だから部品取りなのか・・取りあえずホットシューを分離してトップカバーを洗浄します。

 

これ、PENの吊環ですけど、オリジナルより少し小さめ。オリンパス35系ぐらいが合いそうですけどジャンクが無いので今回はPENで行きます。オリジナルは吊環がクルクル回転するタイプですが、PENは回り止めの突起があるので、このまま取り付けられません。トップカバー側を削ってしまえば簡単ですが、それでは、オリジナルの吊環が調達出来た時に都合が悪いので、精密ヤスリでスペシャルワッシャーを作りました。その時、私のところに来ることは無いでしょうけどね。

ちょっと小さめですけど無いよりはマシ。

 

 

あ~、良く見るとジャンクだわぁ。過去にシボ革が剥がれて、それを瞬間接着剤で接着してあります。瞬間使うかなぁ?? シボ革の表面にも付着していてバリバリです。これは時間を掛けて瞬間接着剤のはがし液で溶かすしかありません。

全体の作業は同じなんですけど、こちらもファインダーの表示が傾くので反射ミラーを点検すると、やはり剥がれ掛かっていました。

 

レンズはPENのように曇りが発生している個体は見ませんね。ポツポツの白カビはあるようです。シャッターはペトリ製で、オーソドックスな配置と性能的に無理をしていない設計のためか、今でも安定した作動を示します。12時位置にCdsをセットしています。

シャッターダイヤルの回転をカム板に伝えるギヤ。歯の合マークが打たれています。

 

中級メーカーのペトリとしては良く出来たカメラですので、今でもファンの方が多いようですね。当時の販売量も多くなく現存数が少ないことから、希少なモデルとなっています。右はオリジナルのブラックモデルです。製造時期によって、巻上げレバー、鏡胴、ファインダー内表示(feetあり)など、細かな違いがあります。2台復活出来て良かった。

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