今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

きれいなPEN-Wの巻

2019年11月30日 15時00分00秒 | ブログ

その前に、ローライコードⅤを終わらせてしまいます。シャッターの粘りと巻上げが重くゴリついています。

 

 

スローガバナーのメンテナンスが必要のようです。チャージレバー部の摩耗もゴリツキの原因ですが、矢印の部分の潤滑切れも影響しているようです。モリブデングリスが完全に乾いています。

 

内部のミラーなどを清掃します。左上は外部から液体が侵入したのでしょうか、乾燥してスクリーンにカビのようなものが発生しています。分離して洗浄します。

 

 

過去の所有者の名前ですかね?ここに書いてあるとは気が付きませんね。

 

 

きれいに清掃をしてスクリーンを戻します。

 

 

シボ革を接着してチャージノブを取付けて完成。

 

 

で、届いていたのがきれいなPEN-Wですね。塗装の劣化が少ないです。

 

 

シャッターが固着するのでオーバーホールをして行きます。

 

 

 それでは、洗浄した本体を組み立てて行きますよ。

 

 

この個体は過去に修理を受けていまして、やはりシャッターの不調だったのでしょう。シャッターバネが80°ぐらい曲げられています。動かなければシャッターバネを強くすれば・・との発想ですが、曲げたって強くなりません。それより何故固着するのかを考えるべきです。

 

曲げが極端なので真っ直ぐに矯正をすると折れますので、オーナーさんご了解でこのまま再使用としました。シャッターの調子は良好です。

 

 

巻上げのカムを組んで行きます。

 

 

平行でファインダーのレンズを分離して清掃、再接着をしておきます。

 

 

研磨洗浄をしたカム板(シャッターリング)をセットします。

 

 

スムーズで節度のある回転かを確認します。

 

 

 レンズは後玉のバルサム曇りは少ないですが、コーティングの劣化はありますね。

 

 

 バルサムの黄変はありますが、現存の中では良い方です。レンズの清掃をして行きます。

 

 

新しいヘリコイドグリスを塗布して組みます。

 

 

ピント調整をして完成です。塗装の状態やシャッター・レンズのコンディションは良好な方の個体ですね。塗装が劣化しますので使用後は手汗の塩分を清掃するようにしてくださいね。

 

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もっと初期型のPEN-FTの巻

2019年11月25日 18時10分00秒 | ブログ

このPEN-FTは#1084XXと1966年11月の製造ですから前回のFVより初期の個体です。一応作動はしていて露出計も動きますが、なぜかオーバー気味になっています。セルフタイマーレバーのお辞儀が深いですが、この角度は経験的に調整範囲を超えますので、たぶん付け替えでしょう。

 

ハーフミラーはきれいなので交換不要とのことでしたが、このミラーは初期型に使われていたミラーではありません。20万台頃ですね。見にくい腐食はありませんので再使用は可能ですが、私なら交換しますね。セルフタイマーレバーは調整してみましたが、案の定水平にはなりません。まぁ、許容範囲かな?

 

イヤな感じは油のにじみです。これはスプロケット軸に水油を点けられているようです。

 

 

スプロケットの表面にも染み出しています。

 

 

巻上げ機構にも大量の油が・・

 

 

下側にも点けられています。

 

 

取り合えず分解洗浄で脱脂をしてから組み立てます。

 

 

 シャッター幕にも油が回っており、回転抵抗が非常に大きいです。洗浄脱脂をします。

 

 

油でドロドロのシャッターユニットも分解洗浄をします。

 

 

シャッターユニット本体の組立。古い初期型としては摩耗は少なく特に問題はありません。洗浄をした改良前のスローガバナー。このタイプはギヤの摩耗による不具合が起きがちですが、この個体は良好です。

 

巻上げのフィーリングもだいぶ改善されました。今日は身内の検査で病院まで送り迎えをしたので、ここまでです。

 

 

 接眼枠は欠損していますので新品と交換しました。留めネジは初期は専用の頭の大きなネジです。中期以降は標準ネジに簡略化されたために、取付穴にネジ頭が埋没するようになって、それが原因で取付部が破損している個体が多くあります。

 

セルフタイマーユニットの取付ネジ部に接着されている調整ワッシャーが片方無くなっています。このまま取り付けるとユニットが斜めに取り付いてしまい作動不良となります。

 

ハーフミラーは交換しました。11万台付近まで基板の調整抵抗は半固定抵抗が使われています。これで組立完成。

 

 

付属の40mmも問題ありそうです。絞りリングの回転が固着気味です。

 

 

 過去に分解を受けていて、すでにスリ割りは大きな力が掛かっています。試しに緩めようと力を掛けてみましたが固着していて簡単には緩みません。絞りリング部の潤滑が全く無く摩耗しています。

 

ヘリコイドグリスが抜けていますので清掃と追加をして洗浄をした絞りユニットを組み立てます。

 

 

絞り部に若干の歪があるようで、ガイド№側では良好ですが、絞り値側では終端で少し重いです。先端部を「ゴチン」と当てている個体に多い不具合です。

 

 

カメラとレンズ共、過去の分解でおかしなことになっていた個体ですが、カメラ本体は初期型としては状態は悪くはありませんでした。コンディションの良い初期型の個体はもめっきり少なくなって来ましたので貴重な個体です。

 

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初期型のPEN-FVの巻

2019年11月23日 20時40分00秒 | ブログ

.PEN-FV#1067XXは1967年9月の生産で、FTで言うと16万台頃の初期型に属する個体ですね。放置が長かったと見えて光学系の劣化が大きいようです。全反射ミラーとプリズムの汚れが見えます。

 

トップカバーを開けて見ると・・未分解の個体ですが、セルフタイマーのリンケージも腐食が進んでいます。

 

 

全反射ミラーにはカビがありますが清掃は可能の範囲です。しかし、反射率は低下していますので新品と交換するか悩むところ。

 

 

プリズムのコーティングが劣化しています。

 

 

変更前のセルフタイマーですが、ギヤの錆が多いです。果たして正常に作動するか・・

 

 

残念なのがリターンミラーの腐食が進んで清掃ではきれいにならないこと。撮影には影響はないので、こちらも交換をするかこのままにするか?

 

 

 問題発見。これも多い不具合ですが、圧板のカシメが外れています。前回も書きましたが、この頃のオリンパスはカシメ不良が多いと感じます。実際に作業をしているのは工場ではなく外注でしょうけど。

 

カシメ不良と言うよりはカシメリベットの肉厚が薄く強度が無いのです。まるで事務用品の鳩目に近い。

 

 

すべて分解洗浄をして組んで行きます。

 

 

撮影画像には影響ありませんが、オーナーさんのご希望によりリターンミラーを交換しました。残念ながらプリズムには微細な腐食があります。PEN-FとPEN-FTの初期までのプリズムは腐食します。それ以後の腐食は見られませんので、品質を改良したようです。

 

スローガバナーが改良前の初期型シャッターユニットですが、幸い摩耗は進んでいません。シャツターバネも条数の少ない改良前ですからテンションは上がりません。

 

完成した前板を組み込みます。

 

 

この個体は光学系の劣化が進んでいましたが、ビューファインダーのレンズにカビがありますね。経験的にこのカビは落ちないのです。

 

 

初期型はレンズの組立はねじ込み式です。中期からはサークリップ式になり組立の簡略化をしています。一番右のレンズ#2のコーティングにカビがあります。

 

 

折角ミラー関係を新品にしたので、レンズも私の判断で交換させていただきました。

 

 

かなり厳しい状態のセルフタイマーユニット(改良前タイプ)を復活させて、ほぼ組立完成。巻上げのフィーリングは初期型特有の「ヌルッ」とした感触で、これはシャッターバネとリターンミラーユニットにより作り出されている感触で、中期以降の個体とは明らかに違います。

圧板は接着で補修しました。表面の研磨と取付けステンレス部のカビを清掃してあります。

 

 

PEN-FVにも変更後のユニットで組まれている個体も存在しますが、この個体はまんま初期型でした。長期放置により光学系の劣化が進んでいましたが、メカ部分の消耗は少ないため信頼性は高いです。外観のへこみや傷も少なく良い個体となりました。

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ワニ(ヘビ?)革のPEN-FT(B)の巻

2019年11月19日 20時30分00秒 | ブログ

さて、作業に掛かりますよ。

 

 

先日、海外旅行前にストラップ吊環の緩みを修理した個体ですが、今回はオーバーホールをします。しかし、本革のシボ革は両面テープ貼りなので剥離の時に痛んでしまうのです。また、洗浄が出来ませんので拭き上げをするしかありません。

 

直前まで露出計は動いていたそうですが、現在は不動です。メーターは正常ですので、回路のリード線を新製しておきます。

 

 

30万台なのでハーフミラーの見にくい腐食はありませんが、スリガラスのようになっています。これは交換になります。

 

 

問題が発見されました。チャージギヤ#1の取付座のカシメが緩んでガタと空転がありました。この頃のオリンパスはどうもカシメ不良が目につきます。機械がヘボなのでしょう。2回巻上げになるのは、ギヤがガタついて逃げるためでしょう。

 

再カシメをしてみましたが、全く利きません。オーナーさんには確認していませんが、私の判断でC地板を交換することにします。とは言っても、本来は分解しない前提の組立がされていますので手間が掛かります。

 

良品のC地板の軸にグリスを塗布してギヤを取り付けて行きます。

 

 

ギヤ軸にガタは無いか、スムーズに回転するかを確認します。

 

 

スローガバナーユニットとシャッター幕を取付ければシャッターユニット完成。

 

 

巻上げの感触とシャッターの調子も良好です。

 

 

接眼プリズムは真鍮(初期はアルミ)のプリズムホルダーによって固定されますが、過去に衝撃を受けたようではまぐり(欠け)になっています。

 

 

露出メーターからの光路プリズム・ミラーを清掃して3Mカバーを接着します。

 

 

セルカバーが無くなっている個体は多いですね。この個体は剥離していましたので再接着をしておきます。

 

 

メカの組立はほぼ終了。ハーフミラーは新品に交換しました。あとは露出計などの調整をして行きます。

 

 

 予期せぬトラブルが発生して画像を撮り忘れました。トップカバーを付けてシャッターを切るとボタンが途中で引っ掛かりシャッターが切れないという現象が発生しました。原因はのレリーズバーとバーガイド間の隙間が画像(別のユニット)隙間より1.5倍程度広いためにレリーズバーが垂直に下降せず引っ掛かりが発生するものでした。当初の2回巻上げ現象もこれが要因だった可能性もありますね。バーガイドはねじ込み式ではなく圧入式で完全に圧入はされていていました。じゃあ、バーガイドの首下の寸法が変わったということ?

 結果的にスペーサーを入れて解決しました。しかし、C地板のカシメ不良やら、いろいろ問題のあったユニットでした。塗装は不自然に黒光りをしていますね。コンパウンドで研磨されたような鏡面です。この個体に貼られている本革のシボ革ですが、純正と違って再剥離をするとダメージが大きくなります。元々、修理のための再剥離は考慮されていない素材なのです。このような仕様の場合、修理時はダメージがあることをご承知のうえご依頼くださいね。

 

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ボルシーというカメラの巻

2019年11月17日 18時00分00秒 | ブログ

アメリカ製のボルシーBというカメラです。1947年頃の製造らしいですから戦後すぐですね。コンパクトサイズですが厚みはあってトップカバーも含めてダイカスト製でがっちりと出来ています。シャッターのT(タイム)が利かないということですが、シャッター羽根を制御するレバーに問題があるようです。

 

レバーの板厚が薄くて細く長いので先端部に変形があります。それによってT時にシャッター羽根を保持できないようです。

 

 

小さくとも距離計連動とはすごい。レンズとミラーの汚れで見にくい状態ですので清掃をしておきます。

 

 

がっちりとしたヌメ革の専用ケースに入ると如何にもアメリカっぽい雰囲気です。しかし、シャッターはエバーセット式のためチャージとレリーズが連続する動作となるのでブレやすいでしょうね。最速1/200ですが現在はバネの劣化でシャッタースピードはもっと低下しているでしょうからね。

 

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