今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

変更後仕様のPEN-FV

2012年03月31日 13時44分57秒 | インポート

Dscf100798では、お仕事します。このPEN-FV #1208XXは使われているユニットが設計変更後のタイプとなっていますね。FVはFTの初期仕様という定説もありますが、後期のものは変更後の仕様となっています。ここまで分解をする修理屋さんも少ないとは思いますが、スプール軸の巻上げカムユニットを分離します。ここは、強力なネジロックが塗布されていますので(初期のものぼときつい) 簡単には開きません。しかし、初期は真鍮製のスリ割りネジであったものが、普通の+ビス仕様となっていますね。使われる本数も1本少なく省略をしてあります。で、このようなネジを分離する場合は、軸径の太いしっかりとしたドライバーが必要です。現在、使用しているドライバーはJHTジャパンホビーツールさんから発売されています軸太ドライバーです。力の入るローレット部分の太さが適当で非常に使いやすいドライバーだと思いますね。

Dscf100951 一番下がJHTさんの軸太ドライバー。上のドライバーはC社の組立工程で使用していたNIWA製作所の製品です。(ピンセットもC社支給品)NIWA製作所はすでに廃業されていますので、現在では入手をすることが出来ません。3本の一番下がC社で使っていたままのドライバーで、上2本は後年に入手をしたもの。C社仕様はビットの部分が長く40mmあります。まだ、ビットを保持するチャック部分は左ネジになっています。軸の先端を持って力を入れて締めても緩まない設計で、さすが考えられています。ビットの長さも製品の奥のネジを締める場合には必要な長さです。その点、JHTさんのビットは全長は40mmですが、ビットの有効長さは20mmほどですので、実際の使用に当っては、PEN-F系であればハーフミラーをセットするルーペハウジングを分離する時は長さが足りなくなります。しかし、現在、入手出来るドライバーとしては最良の製品だと思います。http://www.japan-hobby-tool.com/

Dscf101064 シャッターユニットは完成してシャッター幕とドッキングしています。メインバネは変更後の自由長の長くなったタイプ。巻上げギヤ軸も顕著な磨耗は見受けられません。洗浄したユニットに、いつものようにJHTさんの新オイルを注油して行きます。

Dscf100731 38mmは#3299XXと設計変更後のレンズですね。レンズに曇りとシボリ羽根に変質流化したグリスが付着しています。その他、このシリーズのレンズ特有な持病で、ピントリングのガタをご指摘頂いていますが、症状としては軽い方だと思いますね。原因は、硬質の真鍮製のヘリコイドガイドと鏡胴間のガタ。相手がアルミですからねぇ。スライドしていれば減りますわな。25mmなどでは、ガイドを対角に2つ配置していますが、焼け石にお湯でしょう。その他、変質したヘリコイドグリスも関係しています。この設計では無理ですね。

Dscf100997 はしょって完成です。レンズは元々のセット品ではなくて、後年に調達されたものでしょう。しかし、FVとしては、変更後のユニットを使用されており、ボディーにもへこみなどの劣化が殆ど無い、非常に良い個体でした。これはオークションでの入手ではないそうです。さすがお目が高いです。ご希望により、全反射ミラーの交換とセルフタイマーレバーのお辞儀を修正してあります。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


INOBOO SEIKO UNIQUE 15石のレストア

2012年03月29日 16時07分09秒 | インポート

Dscf101044 しつこい風邪でしてね。なかなか体力気力が回復しないので、短時間で完成する腕時計をやります。INOBOOさんの前に、笹原ペンさんからGUCCIの腕時計が来ていました。本物ですけど、ケースや金属ベルトの状態は良くありません。いつも関心するのですが、このような素材を良く探して来られますね。GUCCIは裏蓋の開け方が特殊ですが開きました。クォーツ時計なので面白いことは何も無くて電池の交換と注油をした程度です。

Dscf101158 薄型のケースで、雰囲気は良いですよ。ケースに小キズが多いので、サンドブラスト部分はマスキングをしてから研磨します。純正の金属ベルトは入手は可能と思いますが、恐らく数万円はすると思いますので、渋いめの皮バンドでよろしいのではないでしょうか。

Dscf101326 ここから本題です。どなたでも、ご自身の生まれた年のカメラや腕時計は所有したいもの。私の影響で腕時計趣味に引き込んでしまったようで、オークションで落札後、私のところへ直送で来ました。精度は日差14秒と謳われておりましたが、この時代の時計では無理な精度ですから絶対に嘘です。拝見すると、10秒でトルクが無くなって止まります。これで丸1日動く訳がありません。輪列に埃の糸くずなどが混入していれば、同様な状態で止まってしまいます。ケースは予想よりも大型化された頃のものですね。ユニークはスーパーの改良機械ですが、私の生まれ年のスーパーはケースが小型のものです。画像はケースの裏側。機械は小さいのに、ケースの厚みを厚くして大型化したことが分かりますね。重くなるだけです。楊枝で除去しているのはゴミではなくてステンレスが錆びた痕です。

Dscf101434 錆落としとケースの研磨を終えた部品は、全て超音波洗浄をしておきます。

Dscf101597 洗浄した地板に部品を組み込んで行きます。二番車にカナ車を圧入しておきます。下の香箱車のホゾ孔は意外に磨耗は少ないようです。

Dscf101629 途中はしょって最後にテンプを取り付けました。振り角も大きく、ひずみも無いですね。但し、この頃はまだテンプの耐震装置は装備されていませんので、落下などは禁物です。天芯が折れてしまいます。この頃は15石にアップされていますね。三角の受けの三つのホゾにはルビーが使用されています。

Dscf101715 針の金めっきがくすんでいますので軽く研磨をしてから取り付けます。めっきは非常に薄いので、あまり深く研磨をするのは禁物。下地の真鍮が出てしまいます。

Dscf101221 プラスチックの風防は、黄ばんだものも味となるのですが、残念ながら1ヵ所クラックがありますので交換とします。何種類もの風防を取り寄せて、高さが厚いタイプの29.3mmを選択して使用しました。風防は、メーカーによっても形状が異なりますので、古い風防の寸法で必ずドンピシャということはありません。こうして、余った風防が増えて行きます。交換にはセイコーのワンピースケース用の工具を使いました。こちらの方が風防にキズを付けにくいのです。原理は、風防を絞って寸法を縮めている間にベセルに挿入をするのです。

Dscf101855

文字盤はギョーシェ彫り風プレスのもので、この文字盤は人気があって、なかなか見つかりません。文字盤の清掃をしてから、研磨をした針をセットします。ケースの状態も比較的きれいでしたので、きれいに仕上がっています。但し、風防は新しめで浮いていますので、しばらく使って馴染ませたら良い味か出て来るでしょう。今回は、ベルトはご自身でお好きなものを付けて頂くため未装着とします。カン幅は大型の18mmですから、選択肢は多いですね。これで組立は終了。後はエージングをして歩度調整をします。


またまた来ましたPEN-FT三兄弟(2)

2012年03月20日 22時37分06秒 | インポート

Dscf101478 muraakiさんからまた3台のFTが来ています。新しくPENの世界に入られる新人さんに供給するのが目的です。13万代の比較的初期の個体が1台と30万代が2台ですが、手馴れた選択眼で、巻上げがぎこちないのを除けば、作動は特に問題は無いと思います。では、1台づつUPしますと長くなりますので、問題があったところのみをレポートしましょう。まず、13万台の個体ですが、まず気が付くのは巻き戻しダイヤルのノブが違いますね。この頃はFなどと同じローレットタイプが正規です。樽型の中期以降の部品に交換された理由はなんでしょう? リターンミラー横の遮光クロスが剥離ぎみですね。その他、ピントの再調整などを受けていますから、部品の入れ替えなどが有ったのかも知れません。

Dscf100954_2 すみません、UPに時間が空きました。退院した翌日から風邪の症状となりまして、1週間近く寝ておりました。病院で風邪を貰って来たようです。そこで、どこまでやったっけな? 本体はシャッターなどはすでに完成させておりました。初期型特有のテンションの弱さで、巻上げは頼りないぐらい軽くスムーズです。前板関係をやります。プリズムなど全て分解して行きますが、遮光クロスの剥がれを見ていると・・うん? リターンミラーがグラグラするぞ。蝶番の上下のガタも大きいですね。

Dscf1010941 裏側です。遮光クロスを剥離して点検すると、リターンミラーのピボットネジ↑に緩みがあって、ご覧のようにリターンミラーが偏心して動いてみます。これで、ファインダーのピント調整を受けていたわけが分かりました。ここまで分解して点検している修理はあまり見ませんが、ここまでやらなければ発見できない重大な不具合もあるのです。ですから、工数が掛かっても手を抜かずに作業をします。

Dscf101175_2 新しいペンファンの方への供給用ですから、完全を追及するあまり、あまりコスト高にすることも出来ません。接眼アイピースの左角に欠けがありますが、このまま再使用とします。ハーフミラーですが、画像は曇った状態のものを清掃したところ。組み込んでみましたが、反射率の低下でファインダーが暗めとなりますね。このままでも使用は出来ますが、悩んだ挙句に新品を使用することとしました。


クローム改のPEN-FT(B)

2012年03月16日 22時39分06秒 | インポート

Dscf100719 すみません。検査のため入院しておりました。今日から平常通りに作業を致しますので、修理のご依頼をお待ちしております。作業再開は、オークションで購入した元クロームボディー機を純正ブラック外装に交換したという個体。それなら、元のブラックを治した方が良かったような気もしますが・・・その後、プロにメンテナンスを依頼されたとのこと。セルフタイマーレバーのロック不良とのことで、あら、ほんとですね。巻上げレバーを最後まで働かせないとセルフコッキングが作動しない?? 2回巻上げなんでしょ。ファインダーの左右でピントがズレる。これもほんと。そもそも、ファインダーのピント調整をされた形跡がありますが、フィルム面と一致していませんね。では、分解をして原因を探って行きます。

Dscf100855 この本体は、全体の特徴から概ね# 320000番代の機械だと思いますね。製造時期は1969-11月で、トップカバーの#2417XXは1968-10月付近の製造でしょうから、本体の方が約1年ぐらい後に製造されたものですね。本体は、それほど使い込まれた形跡はありませんが、巻上げギヤの軸受が、かなり磨耗が進んでいます。5段階評価で3.5ぐらいですね。画像は洗浄したユニットですが、ギヤと軸受のクリアランスが過大で遊んでいますね。使い込まれていないユニットの軸受に磨耗が進んでいるものがあるのは承知していて、潤滑グリスの塗布量の違いでしょうかね。金属は油膜が切れると急速に磨耗します。まぁ、正確なプロセスは私では説明できません。

                                                                               Dscf101095光学系をチェックしています。この個体はリターンミラーを分解されていますね。ネジロックが外されています。リターンミラーは外周に白い曇りがありますが、32万代の個体としてはちょっと疑問。そんなに劣化はしていない頃です。20万代前期の個体に多い曇り方です。交換されたとすると、ピント調整は納得が行きます。交換されたとすると理由は分かりませんが・・

Dscf100885 いつものように、ダイカスト本体部分を組み立てて行きます。巻上げレバーはトップカバーの個体から移植されたようです。

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リターンミラーを含め、光学系には特に問題はありませんでした。ハーフミラーは、うちのものに交換されていました。部品売りをお買い頂いたのでしょう。再使用してあります。シャッターダイヤルと露出計のギヤの噛み合わせが大幅に変更されていました。今回は正規に戻して露出計を調整して行きます。

Dscf101283 再組立でピントは問題ないですね。シャッターダイヤルとセルフレバーは他の個体から移植のため、セルフレバーの水平位置がお辞儀気味でしたので調整をしておきました。セルフレバーは部品による寸法誤差が大きいため、交換の場合は必ず再調整をする必要があります。

Dscf101366 ライカマウントのニッコールも来ていましたね。5cm f2 ですが、絞り羽根部分のレンズが激しく曇っていました。すでに過去に清掃を受けていますが、ヘリコイドグリスの気化ガスが影響したものでしょう。コーティングはすでに剥離をしている部分がありますので、慎重に清掃して行きます。

Dscf101422 このFTは、ブラックモデルから専用部品を移植しているため、クロームモデルからの外装交換機であることの形跡は全くありません。私的には、オリジナルブラックを元にレストアした方が良かったのではと思いますが、手放す時にはクロームからの改造機であることを明記して欲しいと思います。まぁ、無理でしょうけど・・・私のノートには記録しておきます。ニッコールについては、ご覧のようにそこそこきれいになっていますね。ヘリコイドの1ヵ所に引っかかりがありますが、稀少になりつつあるレンズですから大切にお使いください。


砂入りのPEN-F

2012年03月13日 20時40分49秒 | インポート

Dscf099724 PEN-Wと一緒に来ているのがPEN-F #2206XXですが、これ、調子悪いですね。高速が1/30程度しか出ていません。普通は低速の1秒が止まるとかですけどね。これはイヤな感じですよ。

Dscf099848 底蓋を分離してみると、何だかじゃりじゃりですよ。これは砂が入っていますね。過去にも砂入りの個体はありましたが、精密機械にどうして砂を入れるかなぁ。。。海水浴に行って、パラソルの下に放置していたとか? 精密機械に砂は大敵です。金属部品がガタガタになってしまうのです。

Dscf099955スプール軸を分離してみると・・あらら・・フィルム室にも砂が入っているということは、どういうことですか? 高速のシャッターが極端に遅い原因がこの辺にあるのかも知れませんね。

Dscf100075 シャッターユニットは洗浄して砂と古い油脂を洗浄してあります。このユニットは、可動部分か多く、どこの潤滑が切れても不調や作動フィーリングに影響がありますので、オイルワークは欠かせません。そこで、今回は、JHTジャパンホビーツールさんから提供頂きました新しいオイルを使ってみます。このオイルの特徴は、オイルが乾燥して後でも、潤滑性能を保持するという高性能なものです。最近の自転車チェーンでは、同様なものが出ていますが、精密機械に使用出来るオイルというわけです。カメラの場合は、一度、オイルを塗布すると、次のオーバーホールまで潤滑が出来ませんので、その意味でも非常に有効です。使用方法はベンジンにて10倍に希釈して注射器で注入が推薦されていますが、私は時計も扱いますので、カメラより精密な時計では、注射器は使いません。オイラーに少量付けてピンポイントに塗布します。http://www.japan-hobby-tool.com/

Dscf100135シャッター幕の回転に抵抗感があります。ここはベアリングなどは入っていませんが、砂の粉砕粉などが入り込んでいると作動不良を起こします。

Dscf100245  ブレーキはいけませんね。Oリングは変形固着して、Oリングが接触するブレーキリングの内周も錆が発生して抵抗となっています。

Dscf100315ブレーキのOリングを交換してハンマーを取り付けます。

Dscf100477 まぁ、こんなところですね。シャッターは高速が改善して非常に良い感じです。巻上げも滑らかに改善して、新しいオイルは好印象です。全反射ミラーは激しい腐食は無いと判断して、再使用としています。プリズムには数点黒い腐食があるのが残念です。

Dscf100577本体は完成。付属の40mmの清掃をしておきます。レンズの状態は良いと思いますが、内部に埃が多数混入しているレンズです。すべて分解洗浄の上、再組立をして行きます。

Dscf100664 もう一つ。20mmが来ていますが、例によってレンズの曇りがありますね。これは汚れているのではなくて、レンズのガラスが腐食しているのです。20mm、25mmは確認をして入手するように。で、どうしても使ってみたいとのことですので、オリジナルにはなりませんが、手磨きで研磨しておきます。

Dscf100723 ご覧のように(見えませんね)研磨の後、組み立ててあります。これでPEN-WとPEN-Fは完成とします。