今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

落下の衝撃ローライ35の巻

2023年07月31日 20時00分00秒 | ブログ

やっと一段落出来ました。相変わらず暑い日が続きますので外出は控えてエアコンを利かせた部屋でカメラを直している方が安全です。そんなところにローライ35 #3154XXXが来ましたよ。不注意で落下をさせてしまい、シャッターの低速側がおかしくなったとのことです。カメラを振ると「カチャカチャ」と変な音がします。後で分解してみるとネジが1本遊んでおりました。

トップカバーとシャッターダイヤルを分離して原因を探りましたが、予想していた部分の故障ではなく、地板を取り出して点検しなければならない状況です。

 

前カバーを分離して作動を確認して行きます。シャッターダイヤル部分が落下時に当たって陥没と機械にもダメージがありました。陥没の修復とガバナーの調整をしておきます。

 

シャッターダイヤルの「4」右に欠けている部分があります。ここに衝撃を受けています。

 

ジャーマニーですからファインダーはプリズム。押さえの板バネは以後のL型になっていない初期タイプ。プリズムのテープに張り付いて板バネの役目をしていません。

 

スプール軸の洗浄グリス塗布とプリズムの清掃をして矯正をしておいた板バネで押さえます。

 

この個体は遮光用の毛糸が取り外されて普通のモルトが貼られています。

 

 

オリジナルと同じ毛糸でやり直しておきます。

 

 

沈胴チューブのフェルト調整をしておきます。

 

 

この個体はドイツから購入されたとのことで、あの有名な方でしょうか? それを国内でメンテナンスされたとのことでした。しかし、トップカバーがペコペコなんですね。今回の落下だけではなく何度も落とされている難儀な個体ということかな? まさかこの状態でドイツから買わないでしょうから・・

トップ面にも細かなへこみがあるのでと一緒に出来るだけ修正をしておきました。(元には戻りません) メーター窓を研磨して接着します。

 

本体に裏蓋をセットすると何か窮屈な感じです。点検すると裏蓋もへこんでいました。吊環部がアンダーカバーも含めて陥没しています。これを修正しておきます。

 

あとは通常作業。シャッターとレンズをメンテナンスしておきます。

 

 

シャッターを本体に取付けて前玉を取り付けます。

 

 

トップカバーを留めるネジがいい加減なものが付いていますので純正と交換しておきます。

 

裏側の化粧ネジにこのスリ割りネジが付いている個体を見ますね。どなたかが製作されたのでしょうか? 今回はオーナーさんのご希望により純正ネジと交換しておきました。

 

過去に何度落されたのでしょう。不運な個体です。今度はストラップが付きますので落とされないようにね。尚、この個体はドイツのカメラ屋さんから購入されたそうです。

 

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しばらく更新が減りますの巻

2023年07月24日 20時00分00秒 | ブログ

毎日大勢の方がブログを見てくださっているので私も頑張って更新をさせて頂いていますが、9月の中古カメラ市用の作業が詰まっていまして更新をする余裕がきびしくなりました。8月後半までは、たまに見に来て頂く程度で丁度良いと思いますので悪しからずよろしくお願いいたしますね。

で、PEN-FTのオーバーホールのご依頼で到着していますが鉄道模型も入っていました。

アメリカ型の蒸気ですが、MADE IN JAPANは分かったのですがメーカーが不明です。HO模型とトーイの中間のような車両で私も見たことがありません。B型の蒸気は古くなると軸の摩耗などによりロッドの位相が狂ってまともに走らなくなりますね。この個体もモーターも回りません。ブラシの形式がエンドウに似ていますがもっとランクは下がるようです。マグネットの接着離脱などがありますので動くように整備をします。

軸受け部に古いグリスが固着して回転が重いです。パーツクリーナーで洗浄してモリブデングリスを塗布します。

 

集電ブラシなどを磨いて取りあえず動くようにしておきます。

 

 

で、FTの作業は一段落をしてからです。ローライフレックス2.8Fですが、生産が後期の個体でしょうね。シボ革がビニール製になっています。全体に非常にきれいで使用感がありません。シャッターとレンズのメンテナンスをしています。

レンズの前玉外周に曇りが発生していますので分解清掃をします。きれいになりました。

 

巻き上げレバー軸のグリスが切れていてハンドルの回転が重いです。グリスを注油して行きます。

 

フィルムを装填してオートマットの利きと巻き上げを確認します。

 

 

こんなにきれいな個体もあるんだなぁと感心しています。

 

 

次のローライフレックス3.5Fは打って変わって色々ありそうです。被写界深度スケールが片方しか動きません。

 

 

 


31万台のPEN-FTブラックの巻

2023年07月19日 20時30分00秒 | ブログ

さて、暑くても作業はして行きます。PEN-FTブラックの#3159XXと良い時期の個体ですが、巻上げのゴリツキとハーフミラーの劣化ぐらいかなぁ、気になるところは。恐らくこのカメラもあまり書くところが無いと思います。

 

未分解機と思いましたが、アンダーカバーに打痕の修正痕とトップカバーを外してみると青のビニールテープ。まてよ、このテープの色は何度か見た記憶があります。ハーフミラーを交換した形跡も無し。モルトもやり直した形跡無し。何をしたのでしょうね?

では、暑いのでゆっくり確実に作業をして行きます。ダイカスト本体を洗浄してモルト貼り、スプロケット軸などを取付けて行きます。

 

シャッターユニットはチャージギヤ軸の摩耗も無く問題ありませんでしたよ。洗浄脱脂の上組み立て注油をしておきます。

 

シャッター幕を取付けて本体に組み込みます。幕もきれいですね。

 

 

ははぁ、過去の分解でハーフミラーの交換もされていないのにファインダーの無限調整をされていますね。調整後はネジロックをしておかないとダメですよ。完成後にピントを確認したところ、かなりのオーバーインフ気味でした。今回の分解で調整がズレることはありますが極わずかですし、工場での調整からも大きく外れています。何を調整したのでしょう?

プリズムのコーティングにカビ汚れがあります。これは慎重に拭かないとコーティングが剥がれる危険があります。

 

ファインダーのハウジング。レンズの清掃とモルトの貼り替えをして取り付けます。

 

 

接眼プリズムのコーティングは工場で貼った遮光用のテープの糊が原因で曇るのです。拭き上げには注意が必要です。

 

31万台としては劣化が激しいハーフミラーでかなりメッキが透けています。保管が良くなかったと思われます。

 

新品と交換します。

 

 

これでメカの組立終了。露出計調整と無限調整をして行きます。

 

 

実際はもっと黄ばんでいますが・・ブラックモデルは決まってトップカバーのPEN-FTが変色しています。アクセサリーシュー裏のゴム板が原因です。このオーナーさんの過去にメンテナンスをした個体はすべて色入れをやり直しているので古い塗料を溶かして取り除きます。

色入れをやり直してすべて終了です。特に問題のない平和な個体でした。

 

 

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暑さは今日までベビーローライの巻

2023年07月18日 19時00分00秒 | ブログ

異常な高温は今日までとのことで、睡眠不足のためか早くも夏バテの症状が出て来ました。作業途中で小休止をすると睡魔が襲って来ます。作業はベビーローライですが、特に壊れているわけではなく、シャッター不調やレンズの汚れなどで、通常のメンテナンスですから書くこともありません。

低速とセルフタイマーが不調ですのでガバナーを分離洗浄します。

 

 

繰り出しにゴリツキがありますのでフォーカシングカムなどにグリス塗布します。

 

 

スクリーンとミラーの清掃。スクリーンの構造は他のローライとは異なります。正確に位置合わせをしないとフード締め込みで割る危険があります。

 

前カバーにシャッター、絞りリングが付いていないので取付けは簡単。

 

 

ただし、ロッキングレバーの取付は少し面倒。

 

 

シボ革の剥がれ補修と外観清掃をして完成。

 

 

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オーバーホールするよPEN-Dの巻

2023年07月16日 10時00分00秒 | ブログ

寝起きのアイフォンに「きわめて危険」と表示されていました。今日は気温が上がりますね。皆さんも熱中症に充分お気を付けください。私はクーラーを利かせて一日作業をします。で、カメラ店様ご依頼のPENは費用的な制約で限定修理が多く、オーバーホールになることは稀です。特にPEN-Dの状態のよろしくない個体となると余計ですが、今回はオーバーホールご指示を頂きました。じゃ、頑張るよ。

気になるところを列挙しておきますよ。この個体はかなり乱暴に使われた個体で外観もへこみがありますがレンズは前玉に傷が多いです。交換したいところです。

 

巻き上げのロックが掛からないとのこと。このカメラでは良くあることです。の部分が陥没気味です。

 

PEN-Dのトップカバーは開口面が大きく、またカメラが重いですからゴツンと当てると大きなダメージになります。の部分が下がっています。

 

両サイドの吊環部が落下により陥没しています。その他裏蓋中央にもへこみがあります。修正をしておきます。

 

 

露出計は感度低下をしていますが、そもそも調整抵抗が1k程度と小さく、あまり感度の改善にはなりませんが、今回は抵抗を抜いておきます。

 

バネがすごいことになっていますね。

 

 

巻き止め不良はネジロックされている調整ネジを一度緩めてあるので緩んでしまったのでしょうね。なんか油と接着剤でベチョベチョです。こういうところに作業者のセンスが出て来るのです。

 

スプロケット軸を分解しようとしても抜けて来ません。そもそもスプロケット内径と軸が固着気味で位置が合っていませんので抜けません。

 

 

幸いシャッターは未分解で状態は悪くないようですが、ヘリコイドグリスが抜け気味です。では、暑いですが折角オーバーホールを頂きましたので頑張って作業をして行きます。

 

梅雨はどこへいっちゃったの? 日中は暑くて車でスーパーへ買い出しにも行けないし・・では、洗浄したシャッターを組んで行きます。左の本体は基礎設計はPEN-Sと同じですが、絞り羽根がシャッターの後にあるので右のハウジングが異なります。

組立てたシャッターの裏側に絞りリングを取付けて後玉を付けます。

 

 

グリスを入れ替えたヘリコイド部を合体します。

 

 

この個体はのチャージコロが標準より外径が大きなものが使われています。稀にチャージストロークの調整が取れない個体の救済用かと思います。

 

洗浄をした本体を組んで行きます。回転が重いスプロケットと軸の嵌合を調整して組み立てます。

 

 

メーターユニットを載せて組立完成。

 

 

メーターのガラスが剥離しましたので、表面キズを研磨して再接着をしました。そもそも、樹脂ガラスを表から取付ける設計は、裏側は全く接着シロがない状態(表面から接着剤が見える)で接着させている構造に無理があるのです。一般的な裏側からの接着ではメーター本体とのクリアランスが確保できないので苦肉の策でしょう。

調子は非常に良いと思います。PENの相場も、もう少し上がればオーバーホールもやり易いのですけどね。

 

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