今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ローライ35日記の巻

2020年07月28日 20時30分00秒 | ブログ

相変わらず関東地方も梅雨が明けません。酷暑が続くのも堪えるのですが、こう雨が続いて太陽が出ないと気が滅入るよね。そろそろ野菜の値段も上がっているのでしょうね。若い頃の記憶では8月に入っても開けない年もありましたけどね。で、通常作業でローライ35系をやっているのですが、特に書くこともありませんが間が空くので・・まぁ、使用過程の中古ですから色々な問題を抱えてやってくるわけですよ。特に海外仕入れの個体ですからとんでもない事例にも出会います。それを何とかするお仕事です。カバーのへこみも多い機種ですが、中古を選ぶ時、やはり気になるのは外観の程度ですから特にご依頼はなくとも少しでも修復して買ってもらえるように努めます。しかし、嫌なところをへこましていますね。

裏から見ると・・意外に適切な角度で工具が入らないのです。

 

 

ここは通常の作業。スプールギヤのアイドラーが潤滑切れで回転が重くなっている個体があります。

 

このローライ35はテッサーではなくクセナーレンズ付きです。レンズの清掃とやけにヘリコイドの回転が重いです。

 

過去のメンテナンスで硬めのグリスを大量に塗布されていました。すべて洗浄して適切なグリスを塗布します。

 

まぁ、良くなりましたよ。クセナー付きは相場が高いのでしょうか? 私は知りません。

 

このブラックモデルは露出計のガラスが傷だらけ。

 

 

のレバーアテも欠落していて右の化粧ネジも規格外のネジが付けられていますが、これ、なんの効果もありません。この化粧ネジ(巻き戻しレバーネジも)は欠落しているものや過去の分解で傷だらけのものも目につきますので複製を作ろうかと思っています。

 

普通のカメラは樹脂透明ガラスのみですが、ローライ35の場合は露出計自体に0.3mmの板ガラスが接着されています。さすがゴッセンです。そのガラスが粉々に割れていまして・・

 

その上にある樹脂ガラスも傷だらけになったということ。

 

 

板ガラスは交換して接着します。

 

 

モルトを再接着します。樹脂ガラスは傷を研磨して再使用します。

 

 

ファインダーはどの個体でも曇りが出ていますので分解清掃をします。

 

 

これも多い。トップカバー両横のネジですが、国産のPENでもM1.7ネジなのに、何故かローライではM1.4を多用しています。で、当然ネジが細いので緩みやすいわけで紛失している個体も多いのですが、この個体の場合はM1.7のネジを強引にねじ込んでねじ山を破壊しています。海外の方の修理はこんなもの。なんとかしなければなりません。

これはローライ35Sのユニットですが、海外でグリス交換をされたものは硬いグリスを入れられて回転が極端に重いものがあります。丸太棒のような太い腕で扱うので気にならないのでしょうかね? 日本人はこんな部分にも拘るので適正な重さのグリスに入れ替えます。

海外仕入れの個体はfeet表示になっているものが多いですから、国内用にm表示にしておくのもお約束です。

 

 

これも稀に目につくのですが、ある時期に製造された個体に使われているシボ革は劣化をして表面がベタベタになっているものがあります。性能には関係ないので、このままお返ししても良いのですが、自分だったら買いませんので交換することにしました。

の部分はリンクル系の塗装が施されていますが、この個体は殆ど剥離をしていて、清掃で下地のみとなりました。塗れば塗れますけどコストが合いません。

 

サイド部は通常塗料による艶消し黒塗装としました。シボ革はいつもの通りAki-Asahi製を使いました。シボ革の種類は4040.4080.4044がありますが、スクリューマウントライカ似の4040を採用。オリジナルよりはパターンが小ぶりですけど雰囲気は悪くはありません。昔に流通していたスクリューマウントライカ用の素材は当方にストックがありますが、そちらの方がよりグッタペルカに近い雰囲気ですけどね。

裏蓋の貼り替えは問題があります。オリジナルはシボ革を貼った後にストラップ金具をカシメているのでそのまま剥離が出来ません。シボ革のみカットして分離します。

 

これで貼り替えは完了です。

 

 

最後は前面プレートを接着して完成。出来ればオリジナルのシボ革が良いのですが、ある時期のシボ革は製法(材質)が異なっているようで、材質が劣化をしてベトベトに溶けだしているものがありますので、気持ちよく撮影をして頂く観点から、交換は仕方のないことだと思いますね。スキっと新品のような雰囲気となりました。

 

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祖父様の形見PEN-S 2.8の巻

2020年07月22日 21時10分00秒 | ブログ

今日は日中は蒸し暑かったですね。車の電装を改造をしてましたが、エンジンを掛けていない車内の暑かったこと。何とか上級グレードのパーツは着きましたが熱中症には注意が必要ですね。で、戻って、前回のミノルタ・レポのオーナーさんが同梱されて来たPEN-S 2.8 #3437XXのO/Hをします。3年前にオーナーさんお住まい近くの修理屋さんでO/Hを受けているとのことで、撮影には問題はないとのことですが・・ まず、印象は操作作動がガチャガチャすること。∞で絞り板の位置が逆。駒数板の位置が正規でない。シボ革が一度剥離されて両面テープで貼られている(しかも破れあり)シャッターも完調ではない。など色々気になるところがあります。

裏蓋の塗装部分の錆を気にされていますが、これはリペイントをすればきれいになりますけど、シボ革を剥離しなければなりません。

 

駒数ガラスが剥離をしていますが、良く見るとすでに剥がれていたものを透明接着剤で簡易的に着けてあった状態。ちゃんとやり直せば良いのに。また、少し前にも同様のものがあったと思いますが、ファインダーのダストカバーの耳が真っ直ぐに伸ばされている。プロが行った処置ですから何か意味があるのでしょうか? 私には理由が思いつきませんが・・

このようにシボ革が切れています。

 

 

本体側に貼られているモルトは簡単に剥離して下地が元の劣化したモルトがそのままです。この上からは貼れませんよ。

 

まぁ、作業のレベルはそれぞれですけど、私から見ると手抜きですね。では、古いモルトを取り除いて洗浄した本体を組み立てていきます。

 

シャッターは一見動いていますが稀に停止する状態。ユニットとしては前期型の古いユニットになります。シャッター羽根に錆びもあります。シャッターのショット数は多めですね。摺動部に摩耗があります。

 

まぁ、何とかシャツターは組みました。絞り部を留めるナットが緩んでいて絞り端で無理に回すと位置がずれてしまいます。ナットを締め込んでネジロックをしておきます。

 

後玉のカビ(3時付近)を気にされていましたが、残念ですがこれはコーティングがやられていて清掃出来ません。

 

前期型ですからスプロケットはアルミ黒アルマイト製でスプールはグレー成形が特徴です。このスプールは後期型に使われているEL(イージーローディング)タイプと交換することが可能です。実用派の方はその方がフィルムの装填が楽になるかもしれませんね。

程度の良い純正フィルター(UV)が付いています。世代を超えて親族に使い続けられる幸せな個体です。

 

 

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セレンダウンのミノルタ・レポの巻

2020年07月21日 11時12分05秒 | ブログ

ミノルタ・レポのブラックですね。一般にカバーがアルミなのでへこみや傷が多いですが、この個体は非常にきれいですね。ブラックと言ってもレポ特有の青みがかった黒アルマイトです。で、この個体もお約束のセレンダウンです。

前面からもきれいな個体ですね。

 

 

問題はセレンをどうするか? ソーラーセルを代替とする方法もあるようですが、オーナーさんがジャンクのセコニックを同梱されて来ました。こちらのセレンを使えないか?ということです。やってみないと分からない改造は工数が読めませんし、そもそもうまく行くのか分かりませんからね。もう来ちゃったのでやらないわけにも行きません。で、セコニックからセレンを取り出してみると・・寸法はオリジナルは9.5X30 でセコニックが12X30でした。横は合いましたね。セレンの基板は鉄板で1mmと厚いですが2.5mmほど切り詰めなくてはなりません。果たしてパターン部と取出し線に干渉せずに寸法を合わせられるか?

何とか寸法を合わせました。下が加工したセレン。リード線の引き出し部分もオリジナルと同様に成形してあります。リューターなどで削ると高温にしてしまうので、平ヤスリでシコシコ削りました。1mmのしっかりとした鉄は意外に硬く時間が掛かります。

セレンを組み込みましたが、オリジナルのセレンよりもセコニックのセレンの方が厚みがあるのと集電用電極の取り出し位置の違いなどでショートなど不安定な動作をするので調整に苦労します。同時にファインダーの清掃もしておきます。

では、メーター側と結線して行きます。

 

 

セコニックの方が起電力が高いと予想していましたが、劣化や集光レンズとの相性もあるのか若干メーター指示が低いですので抵抗で調整します。

 

絶縁のため収縮チューブでカバーしておきます。

 

 

カメラ位置や振動などで動作に不具合が出ないか点検します。

 

 

で、その他のオーバーホールも実施します。まず、距離リングが固着していて回りません。シャッターは絞り羽根が動かない。レンズの汚れなどあります。

 

シチズンLプログラムシャッターの特徴的なカム板です。

 

 

流石にセイコー同様、時計メーカーのシャッターは作りが精密です。

 

 

スローガバナーは分離して超音波洗浄後注油をして組み込みます。

 

 

ちょっと長くなりますが、それだけPENに比べて機構が複雑なカメラです。このカメラで良くあるのが「カメラを振るとカラカラと音がする」これは遮光壁を留めていたモルトが劣化をして遊んでいるためです。

 

シャッターとの接続部分のモルトも劣化しています。

 

 

 

新しいモルトに貼り替えて取り付けます。これでカタカタ言わなくなります。

この三角のカムは絞りを制御しています。

 

 

このカメラは巻上げがギリギリして感触が良くありませんね。巻上げ部の偏心カムにグリスが無くなっているのも要因ですので清掃グリス塗布をして組み直します。

 

メーターは元気よく作動しています。

 

 

長くなりましたがこれで完成です。じつは今回使用したセコニックのセレンはこのカメラより2年前に(昭和36年)製造されていたものでした。もちろん個体差もありますが、セレンの塗膜、酸化カドミウムや保護ニスなどの厚みがオリジナルより明らかに厚いのです。それも長期に渡って性能を維持している原因かも知れません。カメラ搭載用のセレンとしては、出来るだけ小さく薄くしたいのが設計者の希望ですので、一概にコストダウンとも言えないのではと思います。今回は作業のお約束の前にカメラが届いてしまいましたので作業をしましたが、じつはこのような改造は全く工数が合いません。なるべくお受けしたくないのが本音です。

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後期型のPEN-S3.5の巻

2020年07月16日 20時00分00秒 | ブログ

後期型のPEN-S #1785XX (1969-1製)ですけどね。オーナーさんが入手をして固着していた裏蓋を外したら・・フィルムが装填されたままだったとのことです。私も入手をしたカメラで数回経験をしたことがありますが(ダミーフィルムのパトローネはみんなそれ)せっかく撮影をしたフィルムなのに、元の撮影者は惜しいことをしましたね。タイムカプセルだったのに・・

で、特に外観に損傷のない良い個体ですね。トップカバー横のネジが+ネジの後期型です。

 

で、トップカバーを分解するために駒数カニ目ネジを外しますが、これがある角度まで回って固着して緩まない。ネジを壊して接着をされているのか?

 

この個体は未分解と思いましたが違うようです。カウンターボタンがガラスに接触していますね。ここは隙間が空くように調整して組まれているはずです。

 

何とか分離をしてネジを確認しました。あら良かったネジは無事でした。後期なので下のスプロケットは黒の樹脂製です。

 

シャッターユニットのハウジングが黒アルマイトですね。これはイヤな予感がします。シャッター羽根にも腐食があります。

 

シャッター羽根を開閉させるためのリングが仕様変更されている頃のユニットです。このタイプはO/Hでは性能が改善しない場合があるのです。しかも、何やら鉛筆で細工がしてありますね。意味は無いと思いますよ。詳しくは書けないのですが、さてこのまま組んでみるか?

すみません。やはり性能が出ませんので組み込めない状態となっていますが、ご依頼のオーナーさんとメール・電話のどちらもご連絡がつかない状態ですのでやむおえず作業は一時中止とします。オーナーさん、ブログをご覧頂いている様でしたら至急ご連絡をお願いします。

で、何とか実用範囲としましたので本体に組み込みました。

 

 

ファインダーのレンズを分離して清掃しました。生産後期になると接眼レンズ部分の内側に貼ってあった遮光材は省略されています。

 

その代りと言っては何ですが、カム板押えナットの緩み止め用ネジが新設されています。レンズを清掃してヘリコイドグリスを塗布して組み立てます。

 

後期なのでスプールナットは樹脂製となっています。スプールはEL仕様。裏蓋も洗浄できれいです。

 

ドタバタがありましたが、何とか完成しました。距離リングの先端部のアルマイト剥離が惜しいですが、流石に後期の製造ですのできれいです。

 

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ローライB 35の巻

2020年07月14日 21時50分00秒 | ブログ


リコーキャディかと思ったらローライB 35でした。しかし、よく似た寄り目のデザインだこと。B 35は1969年の発売だそうですのでリコーキャディ(1961年)の方が発売は早いのでした。日本製コンパクトに対抗するために開発された普及版ということです。兄さん達はCdsの露出メーターを装備していますが、こちらはセレン式(C 35はそれも省略)となって、少し古い感じに見えますね。レンズは3群3枚のトリプレットタイプ ツァイス製トリオター40mmf3.5を搭載しています。

左ヨコにかなり大きな打痕がありますね。修正の指示ですが、ここまで大きい(深い)と目立たなくするのは無理ですね。なるべく修正はしますが。

 

ここまでコストダウンしなくてもと思わせるような本体は樹脂製です。内部の構成部品も殆ど樹脂部品です。

 

O/Hをしておきますが、気になったのは鏡胴基部のシャッターダイヤルが固着しているのとASA感度ダイヤルも固着して動かない。では、トップカバーを分離して打痕の修正から始めます。

殆ど樹脂部品ですね。ファインダーは一体式ですが、ブライトフレームと接眼レンズの留め方はUバネで普通のローライ35と一緒です。対物レンズは1枚になっています。

 

板金修正後、洗浄をして欠損しているレバー当てを製作して取り付けます。

 

露出計ユニットを組み込んでダイヤルをセットしますが、125の位置に樹脂バネがあってダイヤルのクリック感を出していますので外周のローレットに噛み合うように取り付けます。

この1本のレバーでファインダー横の支点により巻上げ角をフィルムカウンターに伝えます。非常にシンプルな設計です。

 

ローライ35系のシューは底部にあるため、レールを曲げている個体を良く見かけますね。

 

不用意に力を掛けるとリベットが緩むのでやりたくないのですが、何とか修正をしておきました。

 

スプールのフィルム巻取り方向は普通のローライ35系と逆になりますね。

 

このようになりますね。

 

 

レンズの清掃をして∞調整をしますが、この個体は北米からの仕入れなのかft表示になっていますので、m表示を上側に来るようにセットします。

 

B20なら戦時中に製造された国鉄のBタンク(小型蒸気機関車)なんですけど、どちらも豆タンクと豆カメラです。安価な日本製コンパクトカメラに対抗して、ここまでしなければならなかったのかなぁと考えさせられるカメラです。しかし、トリオターレンズの写りは侮れないとの評価もありますね。

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