今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO LM スペシャル 到着の巻

2016年02月08日 19時58分13秒 | ブログ

追加で、ヤフオクで落札したセイコーLMスペシャルが到着しました。(左)右の個体は私が愛用しているもので、お揃いですね。ガラスの風防とケースはキズが多いですが、研磨をされていませんのでエッジがきれいに立っています。私の方は、すでに研磨をされてオリジナルのカットが分からない状態でした。あ~、こういうカットだったんだぁ。。

紺の文字盤はまぁまぁの程度ですが、短針を押し込み過ぎて文字盤にキズをつけています。全体に針の状態が悪いですね。

 

文字盤を外してみると・・日曜車の状態も良くありません。あまり丁寧でない修理を受けて来たようです。

 

動くことは動くのですが、全く測定不能の状態です。テンプの振り角が極端に小さく、したがって、1分で5秒ぐらい進みます。たぶん、ひげぜんまいに問題があるのでしょう。

 

腕時計の到着前に、へこんだフードの修正と洗浄をしていました。同じ精密機械と言えども、サイズが違いすぎて、目の倍率を変えないと見えません。では、分解をして行きます。

 

Cal 5206Aは非常に小型で薄く設計されており、香箱車も非常に薄くなっています。これで8振動の強力なゼンマイが入っているとは・・

 

小さい機械なのに部品点数は非常に多いですね。しかも、各部品のサイズが非常に小さい。老眼にはきびしい機械です。

 

すべて洗浄をして組み立て開始。二番車から組み込んで行きます。

 

 

筒カナは過去の修理で詰められていますね。

 

 

特徴的なのは、角穴車が日の裏側にあること。

 

 

カレンダーの瞬時切り替えなど高級メカを搭載しているため、部品点数は非常に多く、同じLMでも56系の機械と比較して倍ぐらいあるんじゃないの? 分解は紛失に注意です。ほぼ同様の性能であれば、部品点数の少ない方が組立工数も少なく、コスト的には優秀な設計なのでしょうけど、私は、亀戸の52系の方に魅力を感じます。

あらよっと。ひげぜんまいの変形を修正して、こんなところでどうでしょうね。

 

 

文字盤のインデックスの腐食を磨いてあります。針は過去の分解により傷が多く、長針は接着剤が着いていました。秒針はちょっと長いと思いますね。このモデルは、他のモデルより文字盤サイズが小さいので、他のモデルからの流用かも知れません。しっぽ側の曲がりを修正して組んであります。

 調整が終わりましたのでケーシングと最後に自動巻き機構を取り付けます。

 

 

切換伝エ車と一番伝エ車をセットします。

 

 

新しいパッキンをセットして裏蓋を閉めます。

 

 

5206-6080は1971年12月製ですから、1973年発売のM-1より少しお兄さんになるんですね。どちらも日本の精密機械工業の円熟期の製品です。

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おまけのM-1の巻

2016年02月05日 22時38分55秒 | ブログ

茶暮れさんから来たM-1。何かのおまけで付いて来た個体だそうです。画像では、そこそこに見えますが、裏蓋も固着して開かない、まさしく「おまけ」状態です。辛うじて動くので復活させたいとのことですよ。

 

長期に革ケースに入ったままの個体で、アクセサリーのモルトが劣化をしてクロームがダメージを受けています。その他の部分も錆び錆びの状態。あ~ぁ、治すのかなぁ?

 

どうでも良いですけど、バネの掛かり位置が違いますよ。

 

 

これが正解。

 

 

では、トップカバーの分解。カニ目穴を開けなくても良さそうな化粧プレートは溶剤を滴下してガムテープで引き剥がす。

 

一度開けられているよね。

 

 

奇跡的にモルトの劣化によるプリズムの腐食は免れていますけど、過去にモルトを交換されているんですね。対策かな? 初期型特有のエキスパンダーのようなプリズム押え。ここまで凝る必要はないわな。

 

う~ん、シャッター幕がぁ・・。結構来ていますね。ピンホールは無いようですので、そのままにしておきます。

 

長期の巻き癖でシワシワになってますね。コントロール部分のカバーを取り除きます。

 

古いOM系は、ほとんど低速が不良になっていますね。超音波洗浄で復活します。

 

組み込んだところ。調子はよろしい。ギヤの穴手前が1/1000.

 

 

セルフタイマーも同様に洗浄、注油をしてあります。ミラーボックス奥にダンパーが見えますね。

 

配線を半田付けして行きます。

 

 

 「おまけ」じゃないんだってさ。あぁ、こういうことね。プリズムの腐食が無いのが不思議でした。キヤノンの方式だと、私も当時組んでいたので、作業者の組み位置の癖によって、辛うじて助かっている個体もあるのですが、このモデルでは全部同じようになるはずです。

清掃したボディーにモルトを貼っていきます。

 

 

 シボ革を貼る段差調整のテープが貼られています。これはPEN-FTからのお約束ですね。

 

最後にスクリーンを入れて完成。M-1のマウントはPEN-FTと同じスリ割ネジですね。以後は+ネジ。

 

 出品者はアクセサリー取付け部の腐食を隠すために、シューを取付けていたのかな?

 

 シューは、ご覧のように内部と外側の樹脂が完全に劣化をしていてクラックが入っている状態でした。修復不可能で直しません。状態の良いものを入手してください。

 

 標準レンズの50mm f1.4ですが、カビと汚れ。それとグリス抜けの状態です。ズイコーレンズは接着が強いので分解できるか・・

 

何とかね。すべて清掃をして行きます。

 

 

内部は錆が進行していますね。

 

 

生真面目と言えばそうかも知れませんが、ズイコーレンズの組立は緩み止めをしっかり塗布されていて、緩めることが困難な場合が多いのです。溶剤で溶かしてからでも、親の仇のように強力に固着して緩みません。製造後の分解は考慮していないのでしようかね。

 

135mmもカビが盛大に発生していますので、清掃をしておきます。

 

 

いろいろありましたが、何とか完成しました。普段、PEN-FTをメインに作業をしていますと、M-1(OM-1)は同じ設計者の製品とは思えないほど設計も製造も高度に進化をしていて感慨深いものを感じます。コンパクト設計の理念は同じなんですけどね。この後、腕時計が来るみたいですよ。

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23万台のPEN-FTの巻

2016年02月01日 20時09分55秒 | ブログ

ちょっとカメラはサボっていました。PENが少ないので裏で腕時計のケース研磨をしていました。入手されて間もないPEN-FT #2364XXが来ました。MazKenさんのご本を読まれて私のところに来てくださったとのことで感謝です。撮影に不具合なところはありませんが、製造は古い部類の個体なのでO/Hをすることにします。過去に分解を受けていますが、ハーフミラーの拭き上げをされた以外は手を付けていないようです。

あらピンボケだわ。特に意味のない画像なので・・シボ革は接着剤が弱く、めくると、このようになりますね。特に問題のある個体ではなく、素性は良いと思います。

 

O/H作業の多くの時間はパーツの清掃なんですね。古いモルトを取り除いています。この頃のモルトは、ベースが紙製なので、返って剥離はやさしいのです。

 

いつものように、ダイカスト本体を洗浄して、巻上げ関係から組み立てて行きます。スプールシャフトASSYを洗浄、注油して組み込みます。

 

これやってます。スピードタイマーのケースの研磨。私が入手出来る個体は状態は良くないものが多いのですけど、ケース本体は治具を考案して側面を研磨しましたら、中々良い感じに仕上がりました。問題はベゼル。元々、削り代などは殆どなく、しかも三面カットになっている。すでに真円ではないので旋盤で削ることは出来ない。そもそも18.8ステンレスなど削れませんが・・今後の研究が必要です。ところで、先日、日本人所有の零戦二二型が九州の鹿屋基地で国内初飛行に成功しましたね。子供のころからヒコーキ好きとしては涙が出るほどうれしかった。二一型が6.000M以上の高々度性能が悪かったのを二速過給機として改良し、三二型の角型翼端を二一型と同じ折畳翼に戻したタイプ。撃墜王の岩本徹三や坂井三郎などは代表的な五二型より、こちらのタイプがを好んだようです。鹿屋海軍基地は台湾へ進出の発進基地で、坂井三郎は大村航空隊から台北に移動時は、ここ鹿屋を離陸して奄美大島、徳之島、沖縄本島を通過変針して島伝いに台湾へ向かった。零戦の長大な航続性能ゆえに単座戦闘機で飛行が可能となったわけです。現在、元々、私の地元横田基地に展示されていた飛燕二型も川崎でレストアを受けていて、ゼロプロジェクトでは、今後、飛燕や隼もレストアする予定とか。私たちには楽しみなことですが、某国系報道機関から早速非難の記事が出て来たようですね。同じ敗戦国のドイツでは、メッサーシュミットがバンバン飛んでいますけどね。https://www.youtube.com/watch?v=AxW_A_olqUU

いずれこの6139-6031もUPしますけど、今はケースのみ手を付けています。大きな打痕は無いものの、使用による小傷は全体に渡ってありました。これをリューターなどのモーターツールを一切使わず、すべて手磨きだけで研磨しました。普通に手磨きをするとエッジ(稜線)がダレてメロメロになってしまいます。その点を注意しながら、1面ずつ磨きました。3面の合わせ部分など、そこそこ出ていると思います。(元からしたら)

では本題に戻ります。チャージギヤですが、画像の軸の右側が摩耗していますね。まだ軽度ですけど、ギヤの内径も拡大しています。この部分に強大な力が掛かるので、潤滑不足は致命傷となります。

 

私の資料では#2330XXがシャッターバネは変更前の条数の少ないタイプでしたが、この個体は変更後の条数の多いタイプとなっていました。ここら辺がバネを強化した境目でしょうね。

 

ロアーギヤをセットして、巻上げ側と連動させます。右端のボトムキャップは文字通りまだ蓋式になっています。(変更後はシール)ダイカスト本体は変更前の旧型なのです。

 

すでにプリズムホルダーのバネは省略されています。しかし、ホルダーを留めるネジは設計とおり2本です。以後、1本に省略されます。

 

いつものメカ完成画像。セルフタイマーのリンケージレバーは旧タイプのままです。新旧が混ざっている頃の個体ですね。

 

ハーフミラーは交換で付属の38mmは本体よりもかなり後の生産です。内部の構造が変更されているタイプでした。清掃をしてあります。ちょうど、零戦の二二型のように、発動機(シャッターバネ)は強化されているが、機体は旧型のままと言う頃の製品ですね。巻き上げも軽くく外観もきれいな素晴らしいコンディションの個体でした。1968-9月製。

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