情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

北海道新聞が警察に屈した日~共謀罪という武器を手にすることになるのは…

2006-05-23 00:16:13 | メディア(知るための手段のあり方)
以前,道警の裏金疑惑を追及した道新が道警の逆襲に遭い,自ら白旗を揚げてしまったことを書きましたが(ここ←など),道警本部警務部警務課長、旭川中央署長,釧路方面本部長(警視長)を歴任した原田宏二さんが,「北海道新聞が警察に屈した日」と題して,さらに,詳細なレポートを「明るい警察を実現する全国ネットワーク」のHP(ここ←)に掲載しているので,一部紹介し,共謀罪という武器を手にしようとしている警察の怖さについてお伝えしたいと思います。もちろん,個々の警察官は真面目に仕事に取り組んでいる人がほとんどだと思いますが,組織としての警察の怖さはしっかりと知っておく必要があります。

■■引用開始■■
平成18年2月1日 「道新」朝刊に「北海道新聞社の編集局長ら処分」という見出しのベタ記事が載った。

北海道新聞は31日、道警と函館税関による「泳がせ捜査失敗疑惑」を報じた記事をめぐって1月14日に「おわび」を掲載した問題で新蔵博雅常務・編集局長を減給するなど合わせて7人の処分を決めた。編集局長以外は、当時の報道本部長と外勤担当が減給、紙面化に携わった当時の報道本部次長、記者3人が譴責、当時の編集本部員1人を戒告とした。

平成16年2月10日、私は、記者会見で道警の裏金システムを告発した。それをきっかけに警察の裏金疑惑は全国に波及した。

道警は組織的な裏金つくりを認めたが、3億9000万円もの使途不明金など疑惑の肝心な部分を明らかにしないまま、返せばいいのだろうと言わんばかりに9億6272万円を返還し幕引きを図った。

疑惑の真相解明を求めて北海道新聞の取材班は実にこれまでに1400本以上の記事を書いた。

取材班の彼らは、JCJ(日本ジャーナリスト会議)大賞、新聞協会賞、菊池寛賞、新聞労連ジャーナリスト大賞と大きな賞を総なめにした。

取材班は、道警にとって天敵となった。

「道新」で報道された一連の道警裏金報道の記事を書いたのは、今回処分された当時の編集局報道本部の次長以下の現場の記者たちである。

北海道新聞に守られるべき彼らが、何故処分されなければならないのか。そこには、一連の道警の裏金報道をめぐる道警とのバトルとそれに屈したとしか思えない北海道海道新聞上層部の不可解な対応がある。


平成18年1月14日「道新」第2社会面に「『泳がせ捜査』記事の社内調査報告」なる記事が載った。そして、「裏づけ取材不足」、「『組織的捜査』確証得られず」という見出しも目に入った。

「泳がせ捜査失敗疑惑」記事とは、平成17年3月13日の「道新」朝刊の記事のことである。

内容は、「道警の銃器対策課と函館税関が平成12年4月ころ、(けん銃摘発を目的とした)泳がせ捜査に失敗し、香港から石狩湾新港に密輸された覚せい剤130キロと大麻2トンを押収できなかった疑いがある」とするものだった。

この「泳がせ捜査」については、平成17年3月10日発売の拙書「警察内部告発者」の中でも触れた。だからこの記事は私にも無関係ではなかった。

ここで平成の刀狩と稲葉事件について説明する必要がある。

平成4年、警察庁は全国の警察にけん銃の摘発を徹底するように大号令をかけた。平成の刀狩である。平成7年には国松警察庁長官がけん銃で狙撃されるやそれはピークに達し、平成14年稲葉元警部の逮捕をもって終わりを告げた。

この間、けん銃摘発のノルマに追われた都道府県警察は、けん銃の所持者を秘匿してけん銃だけを押収するという「首なしけん銃」の摘発や捜査員がヤクザからけん銃を買うといった違法な捜査に血道をあげた。

その結果、長崎、愛媛、群馬、兵庫などで、けん銃摘発を巡る違法捜査が発覚した。それはおそらく氷山の一角であったろう。北海道警察も例外ではなかった。稲葉元警部は、道警の銃器対策課のエースともてはやされ、道警のけん銃摘発の実績を背負っていた。彼が所属する銃器対策課では、捜査費が裏金に回されていた。捜査協力者の運用資金に窮した彼は、覚せい剤密売に手を染めるうち自らも使うようになり逮捕された。彼は実刑判決を受け服役中である。

稲葉元警部は、自らの裁判で銃器対策課のけん銃摘発をめぐる数々の違法捜査について証言した。「130キロの覚せい剤の密輸」は、覚せい剤などの密輸を何回か見逃し、最後にはけん銃を摘発するといった違法捜査である。

当時の上原道警本部長は、稲葉元警部の証言について道議会で「そのような事実は把握されなかった」と否定した。

彼はこのけん銃摘発を目的とした「泳がせ捜査」については、平成15年3月3日付で札幌地裁に提出した「上申書」でも詳細に述べた。

自らの罪を認め服役している稲葉には、虚偽の事実を公表する動機がない。私は、稲葉の話は本当だろうと思った。

この問題については、私だけではなく、平成16年に「北海道警察の冷たい夏」の著者である曾我部司氏が「北海道警が闇に葬った大スキャンダル」(月刊現代04年9月号)でも明らかにしている。同氏は、このやらせ捜査の実態を広範囲な現地取材により裏付けたと語っている。その曾我部氏も「闇に葬った」と指摘していのだ。

今となっては、証拠をもってこの事実を裏付けることは極めて至難なことではある。だからといって「泳がせ捜査の失敗」が事実無根であったとは思えない。事実無根を主張・立証する責任は道警側にある。


北海道新聞はどうして「おわび記事」などを掲載したのだろうか。

その記事について北海道新聞の新蔵博雅編集局長はこうコメントしている。「社内調査の結果、全体として説得材料が足りず不適切なものであったとの結論に達しました。疑いを裏付ける続報を展開し得なかった力不足についても率直に反省しています」

そもそも、1年近く前の「道新」の記事について、当の北海道新聞が今になって「おわび記事」を載せなければならなかったのか、理解できる読者はいないだろう。

■■以下略■■


なぜ,お詫び記事を掲載することになったのか,当ブログも合わせてお読み下さい。



※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
相も変わらず… (もーちゃん)
2006-05-23 12:09:48
相も変わらず、警察と言う組織は身内をかばうことばかりに懸命になって、反省することを知らない。

そう言えば、“自衛官変死事件”はいまだに警察は自殺扱いし、遺族が懸命になって“捜査”しておられるようですね(私の知る限り)。この事件でも警察はかなり怪しい動きをしています。私見ですが、この変死事件については実は警察は犯人をとっくに割り出しているが、その犯人が警察関係者や親族だった、あるいは“懇意にしている”暴力団関係者なので、何とかして事件をもみ消そうとしている─そういう風にしか思えません。
返信する