情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

自民党が進める有害情報閲覧防止法案の恐ろしさ~政府による検閲は許されない!

2008-03-29 09:49:50 | メディア(知るための手段のあり方)
 自民党の一部議員が今国会ででも制定しようとしている「青少年有害情報閲覧防止法」には多くの問題点があるが、問題点の怖さを正確に伝える報道はまだまだ少ない。他方、この法案は、油断したら、あっという間に成立してしまう。そこで、今回は、この防止法の恐ろしさについて説明する。

 この法案が例によって、政府による表現の自由規制となっていることが重要だし、ある意味、それが問題点の全てだといってもよい。

 ポルノや犯罪誘発情報などが青少年の育成にとって有害たりうることは否定しない。したがって、そのような情報に青少年が接しないようにするための「ゾーニング」(区分け)規制をすること自体は必要だと思う。

 したがって、青少年が利用するパソコンなどにフィルタリングソフトを導入することにより、青少年が有害情報に接しないようにするというこの法案のコンセプト自体には反対しない。

 しかし、問題は、冒頭の図にも書いたように、

①有害であるかどうかの基準を政府(青少年健全育成推進委員会)が決定する、

②必要な処置などに関する是正命令や立ち入り検査を政府(主務大臣等)が決定し、それに違反すれば処罰される、

③削除などの処置に伴う民民間の紛争については、政府(主務大臣等)が指定した機関が政府(主務大臣等)の示す指針に従って処理をする

という、政府による検閲となっていることだ。

 先進諸国では、このような規制は、政府以外の独立した機関が行ったり、業界団体による自主的機関が行うことが多い。そして、有害性について司法の判断に全面的に委ねているところもある。この法案のように、政府が全てを決めてしまうようなシステムはきわめて珍しい。

 今回は、有害情報だが、このシステムが構築されれば、政府は、ネット上の誹謗中傷表現についても、同様のシステムを盛り込んでくることは間違いない。

 現に今回の法案にも、規制対象として、「特定の青少年に対するいじめに当たる情報であって、当該青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの」が含まれている。

 政府がこのような名誉毀損的表現の規制にまで踏み込むことを許してはならない。表現の自由規制に政府が直接踏み込んでくると、最初は、ポルノや犯罪誘発情報に限定されていても、それはすぐに拡張してしまう。

 たとえば、政府の施策批判について「テロを煽っている」とは、政治家に対する批判について、「政治家の子供がいじめられているから削除しろ」とか、拡張解釈したら、どんどん規制範囲が広がっていく。
 
 政府が行う様々な施策が正しいか誤っているか、それを自由に語ることができなければ、誤った施策をただすことはできない。だからこそ、施策を実行する政府がメディアを規制することを許してはいけない。

 ところが、例えば、朝日新聞は、上記のような根本問題にふれず、【議員立法案は、有害情報を「著しく残虐性を助長する情報」「著しく犯罪、自殺及び売春を誘発する情報」などと定義。業界の自主判断ではなく、独立した権限をもつ行政委員会が具体的な基準を定め、携帯各社やネットカフェ業者などにフィルタリングを義務づける】というあまりに無批判的な評価しかしない(※1)。

 確かに条文には、「青少年健全育成委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」と書いてあるが、それを実効あるのとする何らのシステムも設けられていない。NHKの経営委員長が選出された経過などを見ると、この条文は何ら意味のあるものではないことは明白だろう。

 メディアは、なぜ、このような根本的な批判をしないのか?…と怒りが湧いてきたら、「マスコミはなぜ『マスゴミ』と呼ばれるのか」(現代人文社より近刊)を予約してください(笑)。

 冗談は置いておいて、この法案は、政府が2010年の成立を目指す、現代の治安維持法、「情報通信法」のさきがけとなるものだ。なんとしてもたたいておく必要がある。

 ネットの民主主義のため、自民党のトンでも法案に反対しましょう!

 自民党に抗議の声を!
 マスメディアに抗議するよう求めよう!

※1:http://www.asahi.com/politics/update/0321/TKY200803210348.html







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何でもね…。 (田仁)
2008-03-29 16:02:56
「竹花豊」って、警察官僚OBでB層右翼の特に教育利権や、「インターネットホットライン」とかって天下り団体のネット規制利権に目がない、欲ドオしいヒトが裏で糸を引いているそうです。
ソレに、ユニセフの名を借りて日本中で寄付金集めをしている不明朗な団体も乗っかってるって。
怖いですねぇ?欲に呆けると、日本の漫画業界はぶっ潰せ!的な話になって行ってても、「自分達は正義!」とか言い切れちゃうんですってさ!
まあ、何処かの土浦事件の少年とか、何処かの「沖縄ノート」を訴えた老年とか、みたいに、ですが。
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また悪法ですね (飯大蔵)
2008-03-29 22:59:39
お邪魔します。
この人たちの発想はこういうことのようですね。民主党の対案がポイントのようですね。
記事中に出ている奈良県の女性議員、私はフェミニストのつもりですが、顔も名前も見たくない女性もいるのですね。
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追加情報!(度々ご容赦。) (田仁)
2008-03-30 00:46:04
背景には、矯風会も居るそうです。
キリスト教右派の、戦前から続いてる。
陸軍系偕行社と言い、利権で息が長い、欲の化けモノみたいな。
米本国の矯風会は、禁酒法成立にも関わったって。
アレも悪法でしたし。
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矯風会は… (ヤメ蚊)
2008-03-30 07:46:46
反戦活動などにもまじめに取り組んでいる団体では?この件について、政府よりの見解に立っているとすればそれは問題ですが…。
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どうもソソッカしくって、御免なさい。 (田仁)
2008-03-30 16:52:49
なるほど!調べました。
ヤメ蚊先生の仰る通り、例の安部・中川が目の仇にした国際女性法廷とか、です?
確かに、私も擁護の態度を取ってました。
従軍慰安婦問題の関係ですね。
国際法廷に直接関わった側の女性団体の末端の方とは、面識もあります。
どうもソソッカしくって、御免なさい。
エクパット東京が、非常にポルノ規制の網を曖昧に広義に取った、現状の法案の推進に深く関わっているようでして。
エクパット東京の背景に、矯風会があるんですね。
(キリスト教系団体の相関図には、Keatzchen氏とかお詳しいか知れませんが?)
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Unknown (nazo-)
2008-03-30 18:20:16
いや、それが治安維持法の強化に一役買っているという黒歴史を抱えているんですよ。

http://www11.atwiki.jp/stop_kisei/pages/30.html

ついでに言うと、表向きは共謀罪に反対している癖に共謀罪と同等かそれ以上の「監視・密告社会」化を進める危険な法案を「子どもを守れ」と叫びながら推進しているのです。こちらも見てください。

インターネット・ホットラインセンターの二枚舌
http://news410.blog104.fc2.com/blog-entry-46.html
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アップルパイ・イシュー (ゴンベイ)
2008-03-31 20:57:48
この手の問題の立て方をアメリカ英語では「アップルパイ・イシュー」というようです。

去りにし日々、今ひとたびの幻: [児童ポルノ]アップルパイ・イシューと対抗勢力としてのblog言論
http://t2.txt-nifty.com/news/2008/03/blog_2eea.html
>apple pie issue=誰にも拒否できない話題=
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只、ゴンベイさん…。 (田仁)
2008-04-01 21:50:44
日本人は文化論的にアップル・パイを拒否して食べなくても平気だって恐れも…。
てか、明確な被害者を対象としたセカンド・レイプが「アリ」若しくは、まだセカンド・レイプ犯な会社が潰れてないから…。
多分、今法案の推進者も、そういうヒト達ですヨ!?
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