情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

共謀罪と同じ法案でつくられるサイバー監視システムの基となる条約の問題点

2006-05-05 23:38:59 | 共謀罪
共謀罪と同じ法案で新設されようとしているサイバー監視システムについて,民主党が「ネット上のあらゆる行為が検閲や監視の対象になる可能性があります」と危惧していることはここ←でお伝えしたとおりだ。そもそも,この法案は,日本が,2004年通常国会でアルバニア、クロアチア、エストニア、ハンガリーにつぐ5カ国目として承認したサイバー犯罪条約に基づくもの。この条約は,個人のパソコンを含むあらゆるパソコンが海外の捜査機関の捜査対象となることを容認するもので,批准に至っているのは,アルバニア,ブルガリア,クロアチア,キプロス,デンマーク,エストニア,フランス,ハンガリー,リトアニア,ルーマニア,スロベニア,マケドニア,ウクライナの13カ国のみという状況(2006年5月5日現在)。なぜ,日本はこの条約の国内法化をインターネット上での十分な議論もなく推し進めようとしているのか?

この条約は,欧州評議会(欧州43ヶ国、日本、米国、カナダ、メキシコがオブザーバー)によって策定され、2001年(13年)11月8日に採択されたもの。同月23日に日本を含む29カ国が署名しているが,日本以外のアジア諸国は署名していない。

 そもそも,この条約は,コンピューター犯罪に関する途上国の国内法を先進国の利害に合う形で法整備させるためにつくられたものとされている。

 したがって,欧米先進国は,自国の主権やIT産業が大きく制約されるおそれがあるので、IT産業からの消極的な意見が強いこともあり、フランス以外の先進国は批准していない。

 この条約の内容だが,①コンピュータ・データ及びコンピュータ・システムの秘密性、完全性及び利用可能性に対する犯罪(今回の法案では,ウィルス作成罪)などを新設するとともに,②コンピュータという手段によって行われる犯罪全般に関する証拠の収集方法などについて規定している。

 究極的には,個人のパソコンを含むあらゆるパソコンが国内外の捜査機関の捜査対象となり,裁判所の許可がなくとも捜索・押収・監視・盗聴が行われ,メールのリアルタイム傍受までも行われることになりかねないものだ。(末尾条約の一部参照)

 Linux OSによるオープンソース運動などの新しい考え方やコミュニケーションのグローバル化との関わりを否定し,マイクロソフト中心のネットワーク秩序の維持に資するものとなっているという見方もある。

 今回の法案では,条約の一部が国内法化されようとしているに過ぎないが,それでも,民主党が,

①政府案ではネット上のあらゆる行為が検閲や監視の対象になる可能性があります。

②メールの受信記録、ある個人がどのサイトを閲覧したしたかというような情報を90日間保存するよう、令状なしでもプロバイダ等に要請できるようになります。

③ある一人のパソコンの差押令状があれば、同じサーバーに接続している他のユーザーの受信メールなどもごっそり押収可能になります。

として強く反対せざるをえない内容になっている。


もう一つの問題は,このサイバー法案が,共謀罪と同じ法案の中でつくられようとしていることだ。しかも,法案を読んでもよく分からない…(ここの「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」参照)。悪法は国民に分からぬまま,セットで通してしまえという与党の意図が明らかではないだろうか。


(条約はここ←)
第二十一条 通信内容の傍受
1 締約国は、自国の権限のある当局に対し、自国の国内法に定める範囲の重大な犯罪に関して、コンピュータ・システムによって伝達される自国の領域内における特定の通信の通信内容についてリアルタイムで次のことを行う権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。

a 自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、当該通信内容を収集し又は記録すること。
b サービス・プロバイダに対し、その既存の技術的能力の範囲内で次のいずれかのことを行うよう強制すること。

i 自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、当該通信内容を収集し又は記録すること。
ii 当該権限のある当局が当該通信内容を収集し又は記録するに当たり、これに協力し及びこれを支援すること



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (mew-run7)
2006-05-06 02:43:40
こんばんは。



事後報告で申し訳ありませんが、サイバー刑法改正案

に関して、記事の中でこちらのブログを紹介させて頂きました。



これからもこちらで、色々なことを、お勉強させて頂きたいと思っています。

よろしくお願いいたします。
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共謀罪を廃案に! (日本国憲法擁護連合)
2006-05-06 11:08:41
はじめましてです。

共謀罪には、インターネットの規制もふくまれています。言論の自由の危機です。共謀罪を廃案に!おいこみましょう。
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外堀から本丸へ (みんなのちから)
2006-05-07 21:21:14
有事関連法、国旗・国家法、国民保護法、教育基本法、

共謀罪、そして、憲法9条へ向かうこの流れ。

まだまだ多くの人には実感のない事です。

いかに多くの人に理解を広げていくか。

恐怖を煽り過ぎることなく、しかし、早急に、危険を

伝えていかなければならないのではないでしょうか。

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はじめまして (春霞)
2006-05-08 03:38:36
はじめまして、TBありがとうございます。

共謀罪はもちろん、サイバー法案の方も勉強させて頂きます。国会で強行採決されずに、「勉強」だけで終わるといいのですが……。

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