情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

朝日新聞記者行動基準~権力を監視する原点への回帰となるか!

2006-12-03 04:41:34 | メディア(知るための手段のあり方)
 朝日新聞社は、報道・評論、紙面編集に携わる記者が、その職責をまっとうする上で必要となる行動基準をまとめ、発表した。この基準(←クリック)は、冒頭、【記者の責務】として、「記者は、真実を追求し、あらゆる権力を監視して不正と闘うとともに、必要な情報を速やかに読者に提供する責務を担う。憲法21条が保障する表現の自由のもと、報道を通じて人々の知る権利にこたえることに記者の存在意義はある。」と高らかにうたっている。

 そして、そのためには、「権力の不正や反社会的行為の追及など、その取材に大きな社会的意義があるときは、例外的に承諾を得ずに録音することがある。」と明言した。これまで不明確なまま放置していた問題にはっきりと決着をつけた形だ。

 無断録音が必要な場面があることは、当たり前だ。何をこれまでためらっていたのか?権力を追求するためには記録に残すことは身を守るために当然必要だ。

 問題は、この行動基準をどこまで守る気があるのか、ということだ。以前、ジャーナリスト宣言をしたときには、同業者から【社員のメールを保存して、後でチェックできるようにする。「訂正しない」と宣言したはずのNHK特番改変問題の記事を書いた記者を読者サービス部門に異動。高らかに「ジャーナリスト宣言」しているわりには、やることが何だか変だぞ、朝日新聞―。】と批判された(サンデー毎日2006年3月19日号←クリック)。

 今回、変だぞって言われないためには、まずは、本田記者を現場に復帰させることで、この基準が本気でつくったものであることを全社的に、社会的に示してはどうだろうか(ここ参照←クリック)。

 今後の朝日の記事に注目し、もし、権力の監視が弱かったら、この行動基準を守るよう迫りましょう!
  
■■上記サンデー毎日本文引用開始■■
朝日新聞社によると、3月1日に「ネットワーク記録・分析システム」が導入された。全社員を対象に、会社のサーバーを経由したメール送受信、ウェブサイトの閲覧記録を3年間保存、その記録をチェックできる。
「個人情報や企業に関する情報が社外に漏洩するなどネットワークが不正に使われたり、当社のシステムやサーバーが外部から攻撃を受けたりした際に、危機管理上、通信内容を調査し、対応措置を整えるのが目的です」(広報部)

 しかし、社員、特に記者たちの中から大ブーイングが起きているのだ。
「情報源と微妙なやり取りもある。会社に見られる可能性があれば使えなくなりますよ。自由な言論を掲げる報道機関が検閲まがいのことをするのかと、みんな呆れてます」(中堅記者)

 こうした声に会社側は、
「社員の行動を日常的に監視するシステムではない」
 と主張する。
「非常時に、守秘義務を課せられたごく少数の調査メンバーが、蓄積データの一部を調べるだけで、情報源の秘匿の原則を脅かすものではありません」(広報部)

 だが、このようなシステムの目的の一つが、社内情報を外部に漏らす「犯人」捜しにあることは間違いなさそうだ。朝日広報部も、システム導入のきっかけになった出来事の一つとして「月刊誌への社内資料の流出問題」を挙げる。
「流出問題」とは、昨年8月に月刊誌『現代』(講談社)に共同通信出身のジャーナリスト、魚住昭氏の「NHKvs.朝日新聞『番組改変』論争『政治介入』の決定的証拠」と題する記事が載ったことだ。

 記事では、魚住氏が入手した「証言記録」に基づき、NHKとの対立のきっかけになった朝日新聞記事の取材場面が詳細に再現されている。これに対して、朝日新聞は『現代』が発売される前日にわざわざ記者会見を開き、「社内の取材資料が流出した疑いがあるので調査する」と表明したのだ。

 長野総局記者の虚偽メモ問題を機に社内に設置された「編集改革委員会」委員長の内海紀雄専務は、今年1月の社内報で、取材資料の流出を「十字架として背負っていかなければならない」とまで述べている。

 だが、前述の魚住氏は「朝日の幹部は全く分かっていない」と断言する。
「報道機関の役割は事実を伝えることです。しかし、朝日は自ら出すべき録音記録を隠ぺいした。だから私が事実を示したのです。それを『流出』ととらえた時点で、もう報道機関じゃないと思った。だから、メールやネットの情報管理をすると聞いても驚きません。『何をしでかすか分からないヤツがいるから監視しよう』という発想は既に捜査機関や国家と同じですよ」

 そもそも、企業が社員のメールを見ても法に触れないのか。田島泰彦・上智大教授(メディア法)は話す。
「是非は別として、米国でも日本でも、従業員が仕事をしているかを使用者側がチェックするのは、合法とする判例が定着しつつある」

 実際、朝日新聞も企業としての危機管理を強調する。
「企業の情報管理に対する社会の目は厳しさを増しており、説明責任を求められることも少なくない。各企業ともセキュリティー対策に細心の注意を払っており、そうした時代の趨勢に適う体制整備は必須と考えています」(広報部)

 だが、田島教授は言う。
「他企業がやっているから、というのは理由にならない。問題は、報道機関がそれをやっていいのか、ということです。いくら条件をつけても、経営側が必要と判断すれば見られるわけで、社内の自由に最大限配慮しなければならない新聞社が、それを公然と始めるのは間違っている」

 朝日新聞にはもう一つ、こんな出来事もある。

 NHK特番改変問題を最初に報じた社会部の本田雅和記者が4月1日付で「アスパラクラブ運営センター員」に異動になる。「アスパラクラブ」とは健康や子育て、資産運用などの生活情報やイベントを提供する会員制読者サービス部門だ。

 本田記者は55年生まれで、79年に入社したベテラン。主に社会部畑を歩み、アフガニスタンやイラクの戦場を取材した経験も持つ。

 外から見ると、読者サービス部門とはなにやら場違いに映る。

 NHKの特番が「政治家の圧力で改変された」と本田記者は書いたが、この記事について、朝日新聞は、
「記事には不確実な情報が含まれていたが、訂正する必要はない」(昨年9月)
 と結論を下している。
「もともと、上層部や他部から異動させろという圧力は強く、ついに社会部が抗しきれなくなった。一つの部に長い『ロートル』は他部署に出すという社の方針に絡めて巧妙に追い出された形と聞きます」(元同僚)

 本田記者は、02年に専修大学で行った講演でこう自己紹介している。
「朝日新聞がよく左寄りだとか言われてますけど、その中でもさらにマイノリティーの反体制派です」

■異動する本田記者を直撃

 社内では「記者というより運動家」という声がある一方、「事件が起きれば真っ先に受話器を取り、現場に飛び出す根っからの記者」(前出・元同僚)との評価もある。前述の講演では、横浜支局でデスクをしていた時に「県版をほとんど署名記事にして上司とぶつかった」などというエピソードも明かしている。

 その本田記者自身、今回の異動に何を思うのか。本誌が電話で直撃すると、
「くだらないことを聞くなよ。ジャーナリストなら、もうちょっとまともなことを取材したらどう?」
 と切られた。

 いずれにせよ、型にはまらない記者が一人、紙面から消えることになる。

 魚住氏は警告する。
「朝日の幹部の根本的な勘違いは、取材の行儀が悪いからマスコミ不信が起きていると解釈しているところです。だから無断録音を禁止したりする。ところが、NHK問題ではそれがネックで録音記録を出せなくなった。ミスした記者は次々に切っていく。負のスパイラルです。危ない橋を渡らずに調査報道などできるわけがない。このままでは、現場は誰も思い切ったことをしなくなりますよ」

 朝日新聞の秋山耿太郎社長は、今年の年頭あいさつでこう述べている。
「管理の側面が強すぎると、現場に自由の風が吹かず、朝日新聞の紙面の特徴であるリベラルな言論までが色あせてくる懸念もある」

 他社のことではありますが、言うこととやっていることが違うのではないでしょうか、社長!
■■引用終了■■




★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。


最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ヤマボウシ)
2006-12-03 11:32:17
こんにちは。
朝日が「行動基準」を発表したのがいつかと思ったら、今月1日付なのですね。ということは、社会部の廃止(または「社会グループ」への降格)と同時だったわけです。今の時勢からすれば、社会部こそ最も活躍してくれなければならないときなのに、<言行不一致の極>という気がします。
グループ化は… (ヤメ蚊)
2006-12-03 15:16:40
前にあちこちで聞いたときは、大勢には影響しないんだということでしたが、実際に政治部との垣根が低くなるということは、政治部の圧力がかかるということになるのではないか?という危惧はありますよね。

そういう意味でも朝日の今後の記事に注目しないといけませんね。
朝日 (ヤマボウシ)
2006-12-03 20:43:31
私は10月下旬に次のようなメールを社会部に出しています。
-------------------------
私は20年ほど前、自分が生まれる前から家では購読していた毎日新聞の報道姿
勢に不満を持ち、貴紙に切り換えました。ところが、特に今年に入ってから貴紙
への不満が日を追うごとに強くなっております。
 最近の不満の1つは、衆院補選を目前にした現時点までに、貴紙は耐震偽装事
件に関するイーホームズ藤田社長の告発およびその内容を報道していないことに
あります。耐震偽装被害者の数は北朝鮮拉致被害者よりも多く、事の重大性は明
らかです。
 また、来週にも強行採決が予想される共謀罪新設に関しても、上記のように私
が購読を止めた毎日新聞でさえも先日には社説で批判しましたが、貴紙の取り上
げ方の甘さには強く不満を感じております。
 いずれの件も20年前、否、数年前の貴紙であれば、社説や政治面のみならず
社会面でも連日大きく取り上げていたと思われます。このままでは20年前に毎
日新聞を離れた同様に貴紙を離れ、今度はインターネットの情報のみに頼らざる
を得ないこととなります。
-------------------------
 つまり、もう20年ほども朝日の記事に注目してきたわけです。
 たとえば先月12日に行なわれた8000人規模の教基法改正反対集会について、翌日が休刊日だったにせよ、その夕刊での報道は第二社会面のベタ記事だけで、これには本当に失望させられました。
 すぐにでも購読を止めたいのですが、老母が正月の特集記事を読みたいというので、その後に東京新聞にでも切り換えようと思います。
RE: 朝日 (ヤマボウシ)
2006-12-04 10:49:58
産経系のZAKZAKまで《社会部は「社会G」のほか、教育G、労働G、医療Gなどに細分化されてしまったのだ。/ 今回の改革について、朝日関係者は「社の上層部による社会部つぶし」と話す。社会部は数々のスクープはあげているが、「左傾化が強く、一部幹部に嫌われている」(同)というのだ。》と伝えています。今頃「左傾化が強く」なんて言われても、片腹痛いですが。
内部で頑張っている記者に (ヤメ蚊)
2006-12-04 20:57:15
エールを贈り続けましょう。良い記事を書いたらすぐに電話を本社にかけましょう!
御趣旨には賛同しますが…… (ヤマボウシ)
2006-12-04 21:39:42
1つの新聞としてでなく、個々の記事に期待するとなると、玉石混交のインターネットを読むのと変わらなくなってしまうと思うのですね。それとも、エールを送っていれば、いつか好転するときには助けになるということでしょうか……。
ところで、ご存じかもしれませんが、藤原新也氏が次のようなことを書いています。→
http://www.fujiwarashinya.com/talk/index.php?mode=cal_view&no=20061102
楽観はしていません… (ヤメ蚊)
2006-12-04 22:00:20
それは、私がメディアの範疇で書いたエントリー・記事を見ていただければお分かりだと思います。放送行政のあり方、クロスオーナーシップ問題など、システムとしてかなり厳しい状況にあることは間違いありません。
私の提案は、①それでも、頑張っている記者に気力を出していただくこと、②新聞社への読者の反応は少ないので、いい記事を評価することで、新聞のあり方が少しは変わりうること(道警を道新が追及できたのは読者の鳴りやまぬ電話での声援があったからだと聞いています)から、行ったものです。