tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

海外進出とコスト問題

2013年06月10日 20時46分57秒 | 経営
海外進出とコスト問題
 過度な円高が何とか正常化の方向に進みつつある中で企業の海外展開も再検討を迫られるケースも出て来るようです。
 海外進出にもいろいろなケースがありますが、問題は、低賃金を求めて海外進出したケースでしょう。

 市場に近い所で生産をするというのは原則ですが、プラザ合意以降、特にリーマンショック以降は高すぎる国内コストから逃れて、中国をはじめアジア諸国に展開という、已むに已まれぬ選択をした企業も少なくなかったと思います。

 かつても触れましたように、中国が「世界の製造工場」と言われ始めたころ、賃金は日本の30分の1ほどでした。生産性も30分の1以下でしたので、競争力はなかったのです。
 しかし、海外からの進出企業が技術指導をすれば、生産性は上がって10分の1とか5分の1になります。賃金はすぐにはそんなに上がりませんから、競争力は圧倒的です。

 しかし状況は変わってきました。円安で日本のコストは下がり、中国はじめ途上国の賃金水準はうなぎのぼりです。
 途上国の場合、賃金統計はあまり整備されておらず、地域差が大きく、しかも外資系企業の賃金水準は特に高いので、統計上で客観的かつ正確な比較は困難ですが、現実には、インフレ率がかなり大きい国も多く、合理的賃金決定等の論議は未発達で、賃金物価スパイラルが放置されるケースも少なくないようです。

 私もアジアの経営管理者と話す時、賃金決定は生産性を基準にしないとインフレ激化で競争力低下すよと言うのですが、理屈は分かっても実行困難という意見が多く聞かれます。
 
 その点、日本の労使関係の中では、賃金と生産性の関係は広く理解されていて、自家製インフレ(賃金インフレ)の可能性は小さく、政府・日銀も、インフレ目標は2パーセント、安倍さんお第3の矢では1パーセンと言っていますから、円高さえなければ、大きなコストアップの心配はありません。

 こうした視点から見ると、今後、「低コストを求めて」途上国に進出するという形態は、あまりお勧めでなくなるのではないかと考えられます。
 例えば、最近国を開いたミャンマーの場合、ミャンマーに進出する大義名分は、ミャンマーの低賃金利用ではなく、矢張りミャンマーの経済社会の発展を支援するということになるのではないでしょうか。

 いずれの途上国でも、高生産性・低コストという組み合わせは、そんなに長く続きません。早晩賃金コストは生産性に追いつき、追い越す可能性は大です。何年かごとに、更なる低賃金国に工場移転するというコストもばかになりません。
 それに引き換え、日本の国内コストは、過度な円高を強制されない限り、生産性と賃金のバランスした状態を維持する可能性は高いでしょう。

 しかも経済活動・企業活動が正常化し、研究開発、技術革新が軌道に乗れば、日本の生産性向上はおそらく世界を凌駕したものになるでしょう。かつて日本が「ジャパンアズナンバーワン」と言われた時もそうでした。

 多くの日本企業がもう一度国内の労使関係を見直し、国内労働力を本格的に活用し、それによって生まれた余裕で途上国に進出し、(低賃金利用主眼でなく)その国の経済社会の発展を支援するという循環が最も望ましいと思うのですが。


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