tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

AIJ:なぜこんなことが・・・蓄積社会と犯罪

2012年02月28日 18時28分19秒 | 経済
AIJ:なぜこんなことが・・・蓄積社会と犯罪
 戦後の貧しい社会では、日本の国も企業も個人もほとんど蓄積を持っていませんでした。蓄積を持たない社会では、誰もが日々働かなければ食べていけないことをよく知っていました。

 日本人はしゃにむに働いたようです。その結果、個人にも企業にも、国にも蓄積が出来ました。「恒産無ければ恒心無し」といいます。恒産は生活の安定にも、精神的な安定にも、将来の発展のための投資にも重要です。

 こうして生まれた蓄積(恒産)は、虫に食われないように、腐らないように確り貯蔵できなければ意味がありません。「貨幣と金融機関」は、そのために大きな役割を果たすことになりました。
 かつては銀行預金は元本保障で、適切な利息が付きました。

 今その安心感が、急速に崩れています。何故でしょうか。マネーゲーム流行のせいだ、などという答えが返ってきそうです。しかし真因に遡れば、それは、それぞれの人間がそれぞれに持っている「邪な欲望」が次第に表に出てきてしまったせいではないでしょうか。他人の蓄積を「自分の所に振替えよう」という欲望の顕在化です。

 資本主義は倫理と共存しなければ崩壊することは多くの先人の指摘するところですが、欲望が勝り、倫理が後退する中で、マネー資本主義と名を変えたギャンブルの跳梁が大きな原因になっている様な気がします。世の中には、正業よりギャンブルを好む(誘惑に負ける)人も大勢いるのです。

 インカムゲイン(国民所得を構成する所得)は社会を豊かにする所得です、しかしギャンブルで得る所得、キャピタルゲインはもともとゼロサムで、単なる所得の移転に過ぎません。
 にも拘らず、今は会計基準でも、この2種類の「ゲイン」を区別しない方向に振れ過ぎています。

 アメリカが主導したこうした動きは、経常収支の赤を資本収支の黒で埋めなければならないという要請から始まり、次第にマネー資本主義、金融工学などへと外見は高度化しましたが、本質は、あくまで価値の創造ではなく、価値の移転(価値を創造しない虚業)です。

 エルピーダの倒産は残念なことですが、原因は分析可能で再建も可能でしょう。それに引き換え、AIJの場合はどうでしょか。ギャンブルには多くの場合犯罪も同居します。

 前述のように、かつて、銀行が元本保証で適切な利息をつけ、預金を預かるようになり、社会は安定しました。しかしこうした社会の安定が急速に劣化しています。
  
 今、世界中が、ソブリンリスクも含めてそういう時代にはまり込んでしまっているのではないでしょうか。これでは資本主義は成り立ちません。AIJの問題はそういううねりの中で起きた事件と考えるべきでしょう。
 本質は資本主義の劣化です。資本主義の立て直しが必要なようです。そのためには、実業に携わる人が、口を開かなければなりません。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私にとって難しい内容ですが、時々訪問して読ませていただいています。 (子育て中の主婦です)
2012-03-02 09:41:44
ほかのブログで以下のような記事がありました。
今回の記事とは関係ないですが、tnlaboさんの見解をお聞きしたいと思いましたので添付します。
トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20120302
返信する
子育て中の主婦の方が、こうした今の世界の基本的な問題に関心を持たれるとはtnlaboにとっては驚きで、しかし素晴らしいことです。 (tnlabo)
2012-03-02 12:02:41
かつて書きました「懐かしきブレトンウッズ体制」2010.11.20、その次の「基軸通貨国の責任」「TPPの胡散臭さ」2011.11などをご覧いただければ、かなりご理解いただけるかと思います。何卒宜しく。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。