tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げさせたい男たち

2013年10月15日 11時45分21秒 | 経済
賃上げさせたい男たち
 「歌わせたい男たち」という戯曲がありましたね。君が代斉唱の問題を取り上げているのですが、実は、君が代反対の教師が、音楽の先生に「聞かせてよ愛の言葉を」を謳ってほしかったのでした、で終わる喜劇です。


 此の所の賃上げしてほしいという安倍政権の言うのを聞いていて、何かあの喜劇を思い出してしまいました。
 自分の言うことが何かの本当の意味も解らずに、ただ「賃上げすれば景気が回復する」という説を盲信し、「賃上げ」「賃上げ」と騒いでいると言ったら言い過ぎでしょうか。

 最も単純に言ってしまえば、賃上げして景気が良くなるなら、世界中から不況はなくなるということになるはずですが、経済というのはそう単純ではないのです。賃上げして景気が良くなるためには、それなりの条件が揃っていなければなりません。

 似たような問題を挙げれば、バーナンキ流の「金融さえ緩めれば不況は避けられる」とか、原子力村の「原発さえ動かせば電力は安く供給できる」と信じても、結果はそう単純ではない、などというのもあるような気がします。

 金融緩和では、アメリカが出口戦略で行き詰まっていますし、原発では「トイレの無いマンションは安いかもしれないが、トイレが高いので、本当に安いのかどうか誰も解らない」というのが本当の所でしょう。

 賃金の問題について言えば、「賃金を上げれば消費が増えて景気が良くなる」と単純に考える人が多いのですが、
① GDPが増えないのに賃金だけ上げても、国民の生活は良くならない
② 賃金が増えた分、利益が減るから、賃金と利益のどちらに分配したほうが経済成長に効果的か分析してみないと結果は見えてこない
という大きな2つの条件があります。

 この2つの条件を「日本の労使」は確り理解していたからこそ、オイルショックを乗り切って「ジャパンアズナンバーワン」になったという実績があります。
 欧米諸国の労使はその辺の理解が足りなかったがゆえに、スタグフレーションに苦しみ、果ては日本に円切り上げを要請したのです。

 経産相に至っては「円安で企業は利益が出たから賃上げを」などと言っていますが、これこそ、折角の円高の効果を相殺(やり過ぎれば帳消し)することでしかありません。

 来年の春闘への動きを見れば、売り上げが伸び、企業の成長が見えて来ている産業・企業では、経営側からも、雇用改善、賃金引き上げの動きが出始め、経済成長がプラスになる中で、労働組合サイドからも来春闘ではベースアップを要求しようという姿勢が打ち出されているようです。

 これは道理(経済合理性)に叶っています。企業や経済が成長するとき、それに応じて賃金(人件費コスト)を引き上げることは、経済の均衡成長の在り方そのものです。

 おそらく、来春闘では、経済成長、企業成長に見合った雇用、賃金の改善がみられるでしょう。これは賢明な日本の労使の行動の成果です。
 くれぐれも政府は「アベノミックスの成果」などと言わないでほしいと思います。それでは部下の業績を自分の業績と言い張る上司のようになってしまいます。


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