tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トリクルダウン理論 vs.所得税制

2014年12月11日 10時29分57秒 | 経済
トリクルダウン理論 vs.所得税制
 前3回、中身が不明確なアベノミクスと現実の日本経済の動きにつて見て来ました。$1=120円の為替レートでは日本は疾うにデフレを脱出、世界でも物価の安い方の国になりつつあります。外国より安い物価は上がりこそすれ、もう下がりません。

 その中で気になるのは、格差拡大という問題です。原因は大きく3つでしょう。
① 非正規雇用の拡大が、そのままになっていること。
② 輸入物価の高騰がきちんと転嫁されていないこと。
③ 株価上昇の結果、資産(株式)保有者の資産・収入が急拡大していること。
日本もいよいよアメリカ型の所得・資産構造に近づいているようです。

 アメリカは格差社会であっても、「アメリカン・ドリーム」という価値観があり、「何時かは自分もミリオネアに」というメンタリティーがありますが、日本は違います。
 そのアメリカでも、格差社会化がひどすぎ、ピケティの「21世紀の資本論」が広く読まれているようです。

 日本経済は、これから勤勉な日本人の努力で確実に伸びていくでしょう。そこでの問題は「如何に1980年代のような格差の小さな社会を実現するか」になるでしょう。
しかし、「分厚い中間層」という言葉だけが聞こえ、そのための具体的政策の論議は殆どありません。

 あるのはせいぜい「トリクルダウン理論」つまり「上が潤えば下に滴り落ちる」ぐらいで、何か中国の「大人宴を張れば、その徳犬猫に及ぶ」に似ています。
 レーガンがレーガノミクスで高所得者の手厚い減税をして、景気回復に成功と言われた頃から「トリクルダウン」という言葉がよく使われるようになりましたが、その後の格差社会化の進展は現実の通りです。
 
 1980年代日本が「ジャパンアズナンバーワン」といわれた頃は、日本は世界でもトップクラスの所得格差の小さい国でした。日本は日本的な行き方で、世界から羨望の目で見られる国を創りました。

 羨望は嫉妬になったのでしょうか。日本は「プラザ合意」による円高と、アメリカの推奨による超金融緩和、その結果の土地バブルで、築き上げた地位から転落、失われた20年の中で、次第にアメリカ型になる道を余儀なくされました。

 因みに、1980年代と今日の給与にかかる最高税率(所得税+個人住民税)を比べてみると、こんな数字です。
  1986年(昭和61年)    88パーセント
  2007年(平成19年)~   50パーセント
 昔の話ですが、「松下幸之助さんは、給料は高いけど、9割以上税金で取られているんだよ」(昭和49年は93パーセント)といわれていたことをご記憶の方もおられるでしょう。

 「分厚い中間層」「一億総中流」への具体的政策を提示する政党がないのが残念です。


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