tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費増税延期の経済計算

2016年06月02日 10時27分00秒 | 経済
消費増税延期の経済計算
 安倍総理は突如として消費増税の2年半の延期を表明しました。その結果、安倍総理は、国民の前で公に約束したことを簡単に反故にする信用のできない人間だという評価が定着するようです。

 情けないのは与党内に「ご意見番」を持って任ずるような人がいないことです。
 権力者は往々自分が正しいという錯覚に陥り、誤りを犯します。そこでご意見番が重要になるのです。

 歴史上でも、曽呂利新左エ門とか、水戸黄門などご意見番は有名です。作り噺も多い様ですが、組織はそうありたいという願望が日本文化の中にあるからでしょう。
 戦後の企業でも、松下幸之助と高橋荒太郎とか、本田宗一郎と藤沢専務とかの話は良く語られます。これは実録で作り話ではありません

 トップにずけずけモノが言え、トップもその意見を尊重するような組織は、バランス感覚を持ち、健全で良い成果を上げることが多いようです。
 それが失われた組織は種々の危険性をはらんできます。国民には要注意でしょう。

 ところで、消費増税の延期は決まったようですから、その功罪について少し考えてみたいと思います。

 国民の多くは、消費増税はしてほしくないと思っているでしょう。安倍総理も増税を発表したら選挙に不利と思ってのことでしょうから、この点国民と総理の意見は一致します。

 問題はその間財政再建が遅れることをどう捉えるかでしょう。安倍総理は、増税を延期しても、熊本の復興や、待機児童の解消、保育スタッフの改善などはきちんと行うと述べました。同時に赤字国債は発行しないと明言しています。

 財政再建は2020年に プライマリーバランス(基礎収支)回復という方針です。昨年の試算では2020年度の財政は9兆円台の予想を、来年度からの消費増税と経済成長率を3%台、それに歳出削減で赤字を6兆円台に縮小(これでプライマリーバランスは回復)ということだったと記憶します。

 しかし歳出は復興予算や保育問題もあり、秋には10兆円規模の補正予算を組むとのことですが、消費増税に2年半の延期で税収は増えず、赤字国債は出さないという計算の辻褄をどう合わせるか総理の記者会見では中身の説明はありません。
 建設国債ならいいというのかもしれませんが、いずれも国の借金に変わりありません。

 総理は、2020年にぎりぎり間に合う時点で、消費増税をしますから大丈夫という趣旨のことを言われましたが、2年半増税が遅れた分は借金として積みあがるはずですから、いずれにしても国の借金は増えるわけです。

 もし本当にそれで赤字国債を出さずに済むのであれば、もともと消費増税など急ぐ必要がなかったということになります。こうした計算は定性的な言葉の遊びではなく、定量的な「計算」の世界ですから、足し算と引き算をすれば、正しいか正しくないかはすぐに解ります。
 
 総理の説明が、「こう在りたいものです」という願望なら別として、自信を持って国民に約束し、国民の信用を得て参院選に勝ちたいというのですから、数字は是非検証の必要があります。
 それとも、今回のように、約束は反故にするためにあるのでしょうか。騙される国民のほうが馬鹿だというのでしょうか。

 

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