徳永写真美術研究所 運営日誌

本運営日誌は徳永写真美術研究所にておこなわれる活動の記録集です。https://tokunaga-photo.com

古典印画技法 / アルビューメンプリント(鶏卵紙)1

2021年09月27日 | 古典印画技法講座

徳永写真美術研究所における
今年度の古典印画技法講座では
4技法を準備しました。

春にサイアノ(日光写真)
夏にアルビューメン(鶏卵紙)
秋にソルティッド(塩化銀紙)
冬にヴァンダイクの順に進行。



本レポートでは
鶏卵紙の名で知られる
アルビューメンプリントの
初日の取り組みを記します。

鶏卵紙と呼ばれるように
卵(卵白)を使用します。



卵白・塩・水を合わせ泡立て
ガーゼで不純物を漉して
下地を作る卵白液が完成。



明るい場所で卵白液は塗布できますが
ほぼ透明の液体ためムラなく
塗れたかを見極めるのは難しく・・・



硝酸銀を溶解した感光液は
慎重に扱う必要があり
薄明るい光のもと
緊張しながらの作業が続きます。



プリント作業は日光でも
可能とされていますが
TIPAでは紫外線を発する
露光機を使い実習を進めました。

露光後は定着液に浸し
画像を安定させるために
セレン調色を施して仕上げました。



上の写真は
デジタルデータをPCに取り込み
ネガフィルム作成して仕上げた
各段階の図像です。

左から
ネガフィルム・完成写真・元データ

おおよそ予定通りの
セピア写真となっています。

いっぽう
ムラが発生することもあり・・・



本技法は2度の薬液塗布作業があるため
作業工程が長く手間がかかりますが
卵白のほのかな輝きは
他の技法にはない
魅力ではないかと思います。

次回の実習にて
どこまでのクオリティを出せるのか?
ご期待ください。



<ご案内>
10月17日より
古典印画技法第3段
ソルティッドペーパー
(塩化銀紙)スタート
参加受付中です。


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徳永写真美術研究所
大阪・鶴橋にて
写真・写真表現・シルクスクリーンetc.
表現の研究活動をおこなっています。 

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創作実験クラブ / 3日目 包む行為の研究1:美術史に学ぶ

2021年09月15日 | クラブ活動


この日は
包む行為の研究に取り組みました。

その前に・・・
鉛筆を扱った画材研究の
その後をレポートします。



上の写真は
4H~8Bの鉛筆を用い
書く・描くという意識ではなく
面を作った図です。

仕上がった面は濃淡だけでなく
かなり質感が異なる結果となりました。
物質としての存在感が
それぞれに際立ち
画材の範疇を越えた印象を受けます。



こちらは、異なる硬さの鉛筆を
同じ手で2本握り書いた図です。
文字の影を見るような・・・
不思議な空間が生まれたように見えました。



この日の本題について・・・

美術史上で<包む>というと
まずは
クリストとジャンヌ=クロード夫妻
活動が思い浮かびます。



夫妻の計画段階も含めた一連のプロジェクトは
1960年代に芸術の概念を拡張させました。



包むことで存在を変容させる
・・・と短文では解説しきれない
様々な要素が付随したプロジェクトです。
ちょうど数日前
ご夫妻亡き後、甥っ子さんが
パリの凱旋門のプロジェクトを実現させたと
ワールドニュースで流れました。
彼らのプロジェクトが
今なお継続していることを知り
嬉しく思いました。

**

次に
<包む事例2>として
河口龍夫さんを紹介。



氏の展覧会図録にある
「封印された時間」として制作された
化石の拓本を見ました。



太古の地層に眠る化石たちは
言い換えると
地層に包まれているとも言えます。



時を超えて見える図像から
私たちは何を読み解けるでしょうか。

***

最後に
<包む事例3>として
内藤礼さんを紹介しました。



こちらは
クリスト夫妻とは逆で
作品が布に包まれています。

30年程前に私は偶然にも
美術館内に設置されたテントの中で
作者が小さな世界を構築している
現場に遭遇した事があります。




その包まれた空間には
<神は細部に宿る>
・・・と言うにふさわしい世界が
あったと記憶しています。



***

包む行為の研究のための実習では
河口さん、内藤さんの手法を模しました。

下の写真は
種子が付着したスコップを
鉛シートで封印した河口作品です。



実習では同じく鉛で
そして
内藤さんと同じくガーゼで
何かを包むことにしました。



まずは材料の特質を
確かめることから・・・



薄い鉛シートは見た目より
重くて
なめらか
弾力性があって
加工しやすい・・・



ガーゼは
ガーゼの用途を外した
扱いを考えてみる・・・



とりあえず
手あたり次第に包んでみる・・・



鉛とガーゼを合わせてみる・・・



次回の実習では各人の着眼点から
包む行為の研究を進めます。


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表現の研究活動をおこなっています。 

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