天然居士のとっておきの話

実生活には役に立たないけど、知っていると人生が豊かになるような話を綴りたいと思います。

ウナギとアリストテレス

2023-08-16 | Weblog
 今年の土用の丑の日は7月30日でした。
 ウナギを召し上がった方も多いかと思いますが、
 僕は高価なので食べませんでした。
 食べられなかったから僻んで言う訳ではありませんが、
 ニホンウナギは、国際自然保護連合 (IUCN) により、
 2014年から絶滅危惧種 (EN) の指定を受けています。

 2019年7月、この年の土用の丑の日を前に、環境省が、
 「食品ロスにならないよう(ウナギを)大事にいただきましょう。
  食べる方はできるだけ予約して、季節の行事を楽しみましょう!」とツイートしたら、
 「絶滅危惧種を食べるのを推奨するのか」との批判が殺到し、
 わずか3時間後に投稿削除に追い込まれた事は記憶に新しいところです。

 ウナギは、海洋で産卵し、2・3日で孵化した仔魚は
 レプトケファルス(葉形幼生)と呼ばれ、
 成魚とは異なり柳の葉のような形をしています。
 レプトケファルスは成長して稚魚になる段階で変態を行い、
 体型を扁平から円筒へ変えて150から500日後に「シラスウナギ」となります。
 シラスウナギは黒潮に乗って日本沿岸にたどり着き、
 川をさかのぼり、5年から十数年ほどかけて成熟してウナギとなります。
 シラスウナギの段階で捕獲して養殖する技術が開発されたのは明治時代でしたが、
 1970年代になって大量生産、安定供給が可能となります。
 天然なら10年以上かけて成魚になるところを、
 僅か半年で急激に太らせて国産ウナギとして出荷されます。
 土用の丑の日に出荷できるように、その半年ほど前にごっそり乱獲されますので、
 ウナギの消費が土用の丑の日に集中しなければ根こそぎ乱獲されることもなくなり、
 種の保存の観点からは、良いのかも知れません。

 ウナギは、ある年齢までは雌雄同体で、30cm以上になると雄と雌に分かれます。
 5~10年の間、淡水生活をしたウナギは、産卵の為に海へ出ます。
 長らく正確な産卵場所は不明でしたが、
 グアム島やマリアナ諸島の西側沖のマリアナ海嶺であることが分かったのは、
 2009年になってからです。

 アリストテレスは、紀元前4世紀のギリシアの哲学者ですが、
 生物学なども含めて幅広い研究を行った人です。
 科学的な解明を優先したアリストテレスは、レスボス島の研究所で魚を解剖し、
 ほとんどの魚の卵と精嚢を確認していました。
 しかし、ウナギだけは、何回解剖しても、生殖器が見つけられませんでした。
 多分、雌雄同体の時期のウナギを解剖したのだと思います。
 ウナギは、卵から、あるいは、胎児として生まれてくるのではなく、
 地球の胎内から即ち土の中から生まれてくると結論付けました。

 アリストテレスなどが研究したウナギは、ヨーロッパウナギです。
 ヨーロッパ中の川に生息していますが、卵や幼魚が見られていませんでした。
 また、学者たちがどれだけウナギを解剖しても、
 卵や生殖器官の特定には至りませんでした。
 レプトセフェリはウナギの幼生だと分かったのは、1896年の事でした。

コメント
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