天然居士のとっておきの話

実生活には役に立たないけど、知っていると人生が豊かになるような話を綴りたいと思います。

走れメロス

2019-06-20 | Weblog
 「走れメロス」は、太宰治が著した短編小説です。
 多くの太宰の作品の中で、
 一番多く読まれているのではないかと思っています。
 小学生や中学生の読書感想文にはピッタリの本ですからね。
 僕の長男は、小学校6年の時と中学校1年の時に
 読書感想文を書いています。
 中学2年の時もこの本にしようとしたので、
 それは止めさせました。

 ご存知の方が多いでしょうから、あらすじは省略しますが、
 小説の最後に、「古伝説とシルレルの詩から」と書かれていますので、
 古代ギリシャの伝承と
 ドイツのフリードリヒ・フォン・シラーの詩をもとに
 描いた事は明らかです。

 最近読んだ、檀一雄の「小説 太宰治」に、
 「走れメロス」を描いた発端のような話が載っていたので、
 書いておきます。

 太宰は、熱海の村上旅館に入り浸って、いつまでも戻らないので、
 内縁の妻であった小山初代が心配し、
 太宰の友人である檀一雄に往復の交通費と宿代等を持たせて、
 「様子を見て来て欲しい」と依頼します。
 熱海を訪れた檀を、太宰は大歓迎し、
 檀を引き止めて連日飲み歩き、
 預かってきた金を全て使い切ってしまいます。
 飲み代や宿代も溜まったところで、
 太宰は、檀に宿の人質となって待っていてくれと説得し、
 東京の井伏鱒二のところに借金をしに行ってしまいます。

 数日待っても音沙汰がもないので、しびれを切らした檀が、
 宿屋と飲み屋に支払いを待ってもらい、井伏のもとに駆けつけると、
 二人はのん気に将棋を指していました。
 太宰は今まで散々面倒をかけてきた井伏に、
 借金の申し出のタイミングがつかめずにいたようでしたが、
 激怒した檀に太宰は
 「待つ身が辛いかね。待たせる身が辛いかね。」と言ったとの事です。

 後日、発表された「走れメロス」を読んだ檀は
 「おそらく私達の熱海行が
  少なくもその重要な心情の発端になっていはしないかと考えた。」と
 書いています。

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清河八郎の武田信玄観

2019-06-04 | Weblog
 武田信玄は、戦国時代きっての名将であり、
 21歳の時に国主となって以来30年余、諸戦に連戦連勝を重ねるとともに、
 領国の経営にも熱心で、特に治水工事、農業・商業の隆興に力を入れ、
 領民にも深く愛され、今も多くの人の尊敬を集めている人物です。

 ところが、江戸時代に信玄について否定的に述べた人がいました。
 それは新選組の発端となった浪士組を結成した清河八郎です。
 清河八郎は、安政2年(1855年)3月から9月にかけて、母親を連れて、
 出羽国田川郡清川村(現山形県東田川郡庄内町)を出発し、
 善光寺、名古屋、伊勢、奈良、京都、近江、大坂、宮島、岩国、天橋立、鎌倉、
 江戸、日光などをめぐる大旅行をしています。
 その記録を「西遊草」として残しています。
 その中で、諏訪湖に至った時に、武田信玄について述べている個所があります。
 小山松勝一郎の訳では、下記のように書いてあります。
 「武田信玄は古今の兵略家であるけれども、人を慈しむ心がなく、
  平気でむごいことをした大将だから、
  死んだ後に人に辱められることを恐れ、
  自分の像を不動尊の形をまねて銅で鋳造し、
  この湖(諏訪湖)の真ん中に沈めたという記録が残っているから、
  その像は今なお湖の中に潜んでいるであろう。
  まことに陰険なしわざである。」

 どうも清河八郎には誤解があったようです。
 信玄が生前に対面で摸刻させたという、等身大の不動明王があるのは間違いありません。
 現在この像は甲州市の恵林寺に安置されていて、武田不動と呼ばれています。
 「甲陽軍鑑」によれば、信玄は遺言で
 「自身の死を3年の間は秘匿し、遺骸を諏訪湖に沈める事」を残していますが、
 清河はこの辺との混同があるのかも知れません。
 なお、遺骸を諏訪湖に沈めた事は史実ではありません。
 しかしながら、清河が武田信玄に否定的であった事は間違いないようです。

 徳川幕府が成立してから、
 信玄は「家康公を苦しめ、人間として成長させた武神」として高く評価されました。
 信玄の手法を家康が参考にした事から、
 「信玄の神格化=家康の神格化」となるので
 幕府も信玄人気を容認していたとされています。
 どうして清河が信玄を否定的に理解していたのか知りたいと思いますが、
 今から分かるでしょうか?

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