天然居士のとっておきの話

実生活には役に立たないけど、知っていると人生が豊かになるような話を綴りたいと思います。

ニコライと新島襄

2011-02-15 | Weblog
 ニコライの本名は、イワン・ドミートリエヴィチ・カサートキンで、
 幕末の日本に来てロシア正教の布教を行った修道司祭・宣教師で、
 日本ハリストス正教会の主教となった人です。
 何よりも東京の神田駿河台のニコライ堂に
 名を残しているので有名かも知れません。

 1861年(文久元年)に
 函館ロシア領事館附属礼拝堂司祭として着任して後、
 2回ロシアに一時帰国した以外、
 終生日本国内各地で、精力的に正教の布教に努めました。
 彼が、来日する途中、
 アラスカでロシア正教の宣教師をしていた
 インノケンティ師と出会い、
 布教をするためには、
 その土地の文化を尊重するよう教えられます。
 そんな事から、ニコライは函館に到着後から、
 様々な人々から日本語を学びました。
 その中の一人に、
 同志社大学の創始者として知られる新島襄がいます。

 現在の群馬県の安中藩士だった新島は、
 海外渡航を目指していました。
 少年期に江戸で蘭学、英学を学び、
 欧米の文化とキリスト教に強い関心を持つようになりました。
 そして、1864年(文治元年)江戸の英語塾を辞めて函館に渡り、
 航海術を学ぼうと、武田斐三郎の塾に行き、
 その留守居役の菅沼精一郎から
 英語の先生としてニコライを紹介されます。

 ニコライもまた、日本語の先生を探していたので、
 二人の意向が一致し、
 眼病を患っていた新島に医者を紹介すると共に、
 領事館の一室を貸します。
 新島は日本語を教えると共に、二人で「古事記」を読み、
 ニコライからは英語と世界情勢を教えられます。
 気心が知れたところで、
 新島はニコライに海外渡航の希望を伝えます。
 当時は海外に渡ろうとすると、打ち首の時代ですから、
 よほど肝胆相照らす仲になったのだと思います。
 ニコライは新島の才能を知り、
 ロシア正教の弟子にしようとしたのかも知れません、
 新島を引き止めます。
 しかしながら、新島の決意は固く、
 同年7月17日夜、箱館大町築島(現函館市大町)の波止場から
 1隻の小舟に乗り、
 湾内に停泊中のアメリカ商船ベルリン号にたどり着き、渡米します。
 10年後、新島は帰国しキリスト教の布教に携わりますが、
 不可解なことに、帰国以後死去するまでの15年間、
 日本伝道に従事していたニコライに会おうとしていません。
 一方のニコライは時に日記に新島の動向を書き記しています。
コメント (4)
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ロレンスと勲章

2011-02-02 | Weblog
 「アラビアのロレンス」と言えば、有名な人物ですので、
 説明は必要ないかも知れません。
 彼には、勲章に関して2つの伝説があります。

 その一つは、勲章を断ったと言う話です。
 第一次世界大戦の際のアラビアにおける功績によって、
 戦後ロレンスに勲章を授与する事になりました。
 当時のイギリス国王、ジョージ5世からKCBと略称される、
 バス上級勲位章を親授される場に臨んで、
 突然国王の手を押さえ、
 アラブ人への誓約を裏切った事への賞として
 勲位など受ける訳にはいかないと述べたと言う話です。
 しかしながら、これはどうも神話に属する話のようです。
 この話は、親授式の席上ではなく、
 前もって通告を受けた時の話であったようですが、
 関係者と思われる人々の話が微妙な点で食い違っていて、
 正確な真相は分からないようです。
 いずれにしても、ロレンスはイギリスから
 終生勲章は受けなかった事は間違いありません。

 しかし、彼はフランスからは勲章を受けています。
 フランス政府から贈られたのは、
 クロア・ド・ゲルと呼ばれる軍功章でした。
 この勲章を、何と彼の愛犬の首輪にぶら下げて、
 毎日街の散歩に連れて歩いたと言う話が、2番目の伝説です。
 第一次世界大戦の時の、
 アラビアを巡るイギリスの2枚舌ならぬ、
 3枚舌外交の奇怪さは有名です。
 フランスも、イギリスと共に、陰謀をめぐらしています。
 アラブ人の独立を約束するフサイン・マクマホンの書簡、
 オスマントルコ領の分割を約束したサイクス・ピコ協定、
 イスラエル建国の元となった、バルフォア宣言など、
 現在の中東情勢の混迷は、この第一次世界大戦の時の、
 イギリス等の大国の、
 自国の権益のみを考えた場当たり的な外交が原因であると言っても、
 過言ではありません。
 ロレンスならずとも、勲章を断ったり、
 犬の首輪に付けたりしたくなるような気がします。
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