『コットンテール』(2024.2.28.オンライン試写)
60代の作家・兼三郎(リリー・フランキー)は、認知症の末に亡くなった妻の明子(木村多江)の葬式で疎遠になっていた一人息子の慧(トシ=錦戸亮)とその妻さつき(高梨臨)、孫のエミと会う。
酒に酔い、だらしない態度を取る兼三郎に、トシはいら立ちながらも気にかけていた。開封された明子の遺言状には、明子が子どもの頃に好きだった「ピーターラビット」の発祥地であり、夫婦で行きたいと思っていたイギリスのウィンダミア湖に散骨してほしいと書かれていた。兼三郎とトシ一家は、明子の願いをかなえるため、イギリス北部の湖水地方へと旅立つが…。
妻を亡くした男の家族再生を描いた日英合作映画。監督は、日本に留学経験があるイギリス人のパトリック・ディキンソン。母を失った自身の経験を基に、オリジナル脚本を書き上げたという。タイトルはうさぎを表す。
認知症の妻を亡くしたショックや悲しみの大きさがあるにせよ、息子やその嫁に決して心を開こうとしない主人公の自分勝手な言動が鼻について、最後まで感情移入することができなかった。
これは監督自身が父親に対して抱いた屈折した思いが反映されているのだろうが(だから息子は親父に比べればいいやつとして描かれている)、見ていてつらくなるばかり。ただ、裏を返せばそれだけリリーがリアルに演じていたということになるのか。木村が久しぶりに薄幸の女性を演じて本領を発揮していた。