『ミッシング』(2024.4.25.ワーナー試写室)
沙織里(石原さとみ)の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も空しく3か月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じる。夫の豊(青木崇高)とは事件に対する温度差から言い争いが絶えず、沙織里は唯一取材を続けてくれている地元テレビ局の記者・砂田(中村倫也)を頼りにしていた。
そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で誹謗中傷の標的となる。沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるようになる。
一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の弟の圭吾(森優作)について、世間の関心をあおるような取材を命じられる。
𠮷田恵輔監督が、自身のオリジナル脚本を映画化。幼女失踪事件を軸に、失ってしまった大切なものを取り戻していく人々の姿をリアルかつ繊細に描く。
この映画は、少女の行方を追うミステリーではなく、夫婦の関係、報道とそれを見て反応する人々の姿などを見せることに主眼を置いている。それ故、テレビ報道、SNS、動画などの行き過ぎた様子や問題点があらわになる。
映画を見ながら、思い起こさずにはいられなかったのが、数年前に、山梨県のキャンプ場で行方不明になった少女のこと。彼女の母親も、また誹謗中傷の対象になっていた。その意味では、今日的な問題を描いた映画だと言えよう。
石原が鬼気迫る演技を披露し、青木と中村が見事な助演を見せる。ちなみに、子どもが見付かったかと思わせるシーンが2度あるが、ここは、サスペンスとしてはなかなかよく出来ていた。