広く浅く

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ヌプリで山線を行く

2013-09-01 23:23:38 | 旅行記
前回の記事最後で、ホームから車内を覗きこんでいたのは、この方。
まんべくん!
蟹、ホタテ、アヤメを組み合わせた、長万部町のイメージキャラクター。
そういえばこういうのもいたなと思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここ何年か、ご当地ゆるキャラが乱立している。
最初は秋田県の「スギッチ」や彦根の「ひこにゃん」のような、単にかわいいだけだったのが、やがて奇抜な言動をするものが現れて人気を呼ぶようになった。そんなキワモノゆるキャラとして、今は「ふなっしー」が全盛だけど、走りがまんべくんだったのではなないだろうか。
まんべくんは2003年に登場。やがてツイッターを使い始め(札幌の企業に委託していた?)、毒舌で話題を集めるも、2011年にその発言内容が物議を醸して、その後は町と委託会社でごたごたしたらしく、どうしていたかと思っていたが、ご本人は元気に出迎えてくれた。

ヌプリが長万部に到着する前、車内放送でヌプリスタッフが「ホームでまんべくんが皆様をお迎えしております」と放送した。たしかに、事前の情報でもそんなことが書いてあった。
ところが、列車が駅に到着しても、ホームには誰もいなかった。

それから数分経って、やっと、まんべくんがホームにやって来た。
“重役出勤”みたいで、さすがまんべくん。しかも、普通こういう場合って、役場の人とか誰かが付き添って来るものだが、まんべくん1人で現れた。1人で跨線橋を上って下りたのか。
前回の写真の通り車内を覗いたり、カメラに急接近したり、ゆるキャラらしからぬ奇抜な行動は健在。


長万部では降りた人はほとんどなく、新たに乗り込んだ人のほうが多い(10人もいないけど)。
札幌から来た「ワッカ」号が到着し、10時21分、入れ違いにヌプリが発車。まんべくんが1人で見送ってくれた。(この後、まんべくんはワッカの出迎えに回ったのだろう)

ヌプリは、いよいよ“山線”区間へ入り、観光列車らしくなる。
小樽までは140.2キロ。停車駅は、黒松内、ニセコ、倶知安、余市。かつてここを走った、急行「ニセコ」や特急「北海」とおおむね同じようだ。
黒松内以外は聞いたことのある地名だが、こんな場所にあったのか。

北海道の車窓といえば、広々とした、あるいは荒涼なものを連想するけれど、山線は山線というだけにそうではなく、線路沿いすぐまで木々が生い茂る区間が多いように感じた。でも、本州とはどこか違い、やはりこれも北海道の風景の1つなんだろう。
所々、木々の間に広いトウモロコシ畑が広がる。
穂が出ていた
国土交通省の「清流ランキング」上位の常連である、「尻別川」と寄り添うように進んでいく。
たぶん尻別川
1分停車の黒松内(10時43分)を出ると、「みなさん、こんにちは」と年配の男性による車内放送が流れた。
上りワッカと下りヌプリの黒松内-倶知安間で行われる、「羊蹄まちしるべ研究塾」による地域紹介のガイド。
ガイドの内容は地名の由来、アイヌや方言などの文化、動植物など多岐にわたり、とてもためになった。走行中はしゃべっていない時間のほうが短いくらい熱心に話してくれたが、決して耳障りでなく、飽きなかった。
この日ガイドしてくれた男性は、話し方もメリハリがあって聞きやすかった(ご本人は「年寄りなので声がしわがれていますが」などと謙遜されていたが)。ひょっとしたら、元学校の先生だった方とかじゃないだろうか。
本来ならJR側でガイドをするべき(バスガイドとかJR東日本のリゾートしらかみを考えれば)なのかもしれないし、地元の好意に甘えているようにも思えるが、これはこれでユニーク。今回のヌプリの旅で、いちばん印象的なものだったと言っていい。

ガイドで知ったことをいくつか。
・長万部以前から、沿線の所々で小さな赤い実を付けた低木があったが、それは「エゾニワトコ」。
・北海道弁(アイヌ語でなく)として、「あずましい」「がおる」「ばくる」「じょっぴんかける」を紹介。→あずましいは、津軽弁でもおなじみ。じょっぴんかけるは施錠すること。
・キタキツネは近年、青森でも見つかっている。青函トンネルを通って渡った(監視カメラで目撃されている)。→青函トンネル開通時、新聞で専門家がそういう可能性を指摘していたのを読んだ記憶があって、子どもながら信じられなかったが、現実になったとは!
・狩猟民族であるアイヌの人々は、野生動物を神聖視した。ただし、エゾリスだけは忌み嫌い、姿を見ると猟を中止して帰るなどしていた。→この後、エゾリスを目撃してしまった!(別記事にて)


動物といえば、先頭の自由席・1号車に、「ヌプリシート」なるものが設置されていた。
 

 
春・キタキツネの草原、夏・エゾヒグマの山、秋・エゾリスの散歩道、冬・クマゲラの森
記念撮影用に、北海道の四季と動物のぬいぐるみなどで装飾された座席。譲り合って撮影する場所で、ずっと座っていてはいけない。4種類あり、本来は4両に1つずつ設置する(指定席の場合は発売しない席となる)のだろうが、車両変更に伴って1か所にまとめたようだ。また、本来は壁面にも装飾(イラスト)があるらしいが、それは省略されていた。
ヌプリでは、1つ前の座席も「撮影用スペース」として、座れないことになっていたので、1号車では12名分の席が減っていた(着席できなくなっていた)ことになる。それでも充分に空席があったけれど。


左車窓にニセコ連山が見えてきて、11時29分ニセコ着。9分停車。
右がニセコ連山
国鉄時代は、カタカナの駅名といえばニセコと滋賀県のマキノしかなく、ニセコのほうが先にできたので元祖・カタカナ駅と言える。
隣は「昆布」駅
この列車の本来の目的地であり、専用観光バスが接続する駅だけに、降りた人も乗って来た人もいるが、僕のように乗り通す人もいる。全体の客数は、函館発車時よりはやや増えたが、空席のほうがずっと多い。
のどかなホーム
山あいの町の駅といったたたずまいのホームでは、停車時間を使って「ニセコ駅前温泉綺羅乃湯」による特産物の販売。ニセコミルク工房の飲むヨーグルト(車内販売があれば、ここのアイスクリームも食べられたのに)や地酒やお菓子が並ぶ。
長万部からはサラリーマン風の一団も乗っていたが、その方々も含めてほぼ全員がホームに出て来たので、それなりに売れていた。
濃厚なのむヨーグルト(150円)。ホルスタインと「ブラウンスイス」という品種の牛乳らしい
ここでも、
ゆるキャラが登場
ニセコ町マスコットのアカゲラ(クマゲラではない)の「ニッキー」。こちらは正統派ゆるキャラか。



羊蹄山が右側に見えるのだが、上は雲がかかっていて山すそしか見えない。
それでも、富士山のような大きな山であることをうかがわせる。

11時53分、倶知安に1分停車。
途中、銀山駅で5分運転停車して、普通列車と交換。


12時39分、余市着。8分停車。久々に大きな町という感じ。ニッカウヰスキーの創業地であり、ソーラン節の発祥地(有力な説ということらしい)やリンゴなど農業もニシンなどの漁業も盛んな土地でもあるという。

ここでも、ホームで「余市町観光物産センター・エルラプラザ」による販売。
地元産のリンゴを使ったアップルパイが名物(山本観光果樹園で製造し、エルラプラザで焼いた)だそうで、その焼きたてを1個300円で売っていた。
車両変更によって車内販売が中止となった「ヌプリ」の下りでは、函館を出て以来初めての食べ物を入手できる場所となる。(ニセコのは、酒粕どら焼きと酒まんじゅうとか、基本的にお土産用お菓子なので)
アップルパイ
シナモンが入っていない、サクサクタイプ。リンゴも大きいのが入っていて、おいしかった。

でもエルラプラザ自体が駅の中にあって、そこでリンゴやワインのアイスクリーム(ジェラート)を売っているらしい。8分停まるんだったら、改札を出て買えば良かった…

ホームでは、役場か観光協会か何かの人が何人も出て町のPRが熱心に行われ、宅地の分譲まで宣伝していた。
「どうぞ」と何かを手渡された。ポケットティッシュ? いや、赤くて丸いものが入っているからあめ玉?
ミニトマト「アイコ」でした
申し訳ないけれど、僕はトマト(ミニトマト含む。煮たのは大丈夫)がかなり嫌い。
でも、もらってしまったからにはいただきました。旅行中の野菜不足解消にもなるし。
たしかに甘くて、昔のトマトよりは食べやすい。でも、やっぱりトマト独特の味と食感はする。(トマトが苦手な人って、食感がダメという人が多い。だから、いくら甘くなったとしても、好きにはなれないと思う)

そして、またまた、
ゆるキャラ!
リンゴの顔でニシンを腰にさした「ソーラン武士」。これはテレビで見たことがある。
運行初日だけ出迎えとリーフレットにあったが、それ以外の日でも来てくれたらしい。


余市を出ると、わずか21分で終点(北海道式の言い方では「終着」)・小樽。
左車窓に日本海が見え隠れするようになった。(アップルパイを食べるのに集中していたため、写真はありません)
3時間前には右側に太平洋を見ていたのを思えば、長いようで早い旅だった。1つの列車で太平洋と日本海が見られるのって、他にはあまりないのではないだろうか。

国鉄型気動車に標準搭載されているオルゴール「アルプスの牧場」が中途半端に鳴って、252.5キロ、5時間の旅が終わった。
※国鉄では、客車は「ハイケンスのセレナーデ」、電車は「鉄道唱歌」と放送で使うオルゴールの曲が決まっていた。客車と電車では曲の終わりでオルゴールが自動で止まるが、気動車のは止まらない構造なのでフルコーラス流れないことが多い。ちなみにJR北海道の新しい特急車両では、種類にかかわらず3曲とも電子チャイムで搭載(アルプスの牧場もフルコーラス演奏される)されており、終着駅の放送などで聞くことができる。
車両変更で車内販売がなくなったのは残念(アイスクリームが食べたかった! それに昼食の駅弁も)だけど、沿線のガイドやホームでの出迎えなど、楽しんで乗車できた。観光路線として今後の発展に期待したい。
【4日追記】今期は函館-小樽の「ヌプリ」と長万部-札幌の「ワッカ」で運転区間を分けて刻んで運転したが、昨年度は「ヌプリ」単独で札幌-函館間を通しで運転されていた。利用状況や所要時間、そもそも通しでなくニセコへの観光客輸送が目的という列車の性格を考えれば妥当なんだろうけれど、特にヌプリが長万部止まりでは、その先(大沼や函館)へつながりづらい。函館方面へは通しての運転があっても悪くないのではないだろうか。

【2014年6月12日追記】翌年2014年夏の状況。
当初から毎日「ニセコエクスプレス」車両での運転。(キハ183系は8月から運転再開予定なので、車両に余裕はできているはずだが)
函館-札幌で1往復(札幌発7時57分、函館発13時55分)と、減便・区間延長となった。札幌発が「ヌプリ」、函館発が「ワッカ」と上下で愛称が異なる。



この後、道内で3つの(臨時でない定期の)特急列車の指定席に乗ったが、いずれも隣の席にも人がいた。車内販売が買いにくいし、弁当も食べにくい。
今回の旅行で、のんびりと列車の旅を楽しめた数少ない列車でもあった。



小樽から先も函館本線は札幌方面へ続くが、電化されて列車本数が増える。すぐ接続の快速電車で、札幌へ向かった。
小樽を出ると、石狩湾(日本海)すれすれを走る。
すぐ外が海
海の家らしきものがあり海水浴をしている人たちがいた場所もあった。

小樽から40分ほどで着いた大都市札幌は、先ほどまでののんびりした旅とは別世界の喧騒に包まれていた。
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