広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

こも巻きの是非

2017-03-07 00:14:41 | 動物・植物
3月5日は二十四節気の啓蟄。冬眠していた虫が起き出す頃とされている。
その連想からか、啓蟄前後に「菰(こも)」を取り外す作業を行う施設などがある。
こもは、木の幹にむしろのようなものを巻きつけて縛り、そこに害虫を呼び寄せて越冬させるもの。彼らがまだ寝ている間に、こもを取り外して燃やしてしまうことで、害虫を退治するという狙い。
(再掲)秋田市内の某寺院のこも巻き
秋田市の天徳寺でも行われ、立冬(かな?)のこも巻き作業とともに、毎年、多くのマスコミが報道する。寺院側からマスコミを呼んでいるのだろうか。今年は啓蟄が日曜日だったが、変わらず実施され、報道された。
NHK山形放送局によれば、鶴岡市の鶴岡公園では、6日に実施。

前も触れたことがあったが、こもには、害虫退治としての意味は低いように思えてならない。次のような理由から。
・益虫も“退治”してしまう可能性。
益虫/害虫は人間が決めつけた概念。虫たちは自分がどちらかなんて気にしない。ちょうどいい越冬場所だと、みんなこもへ入ってしまうだろう。害虫とともに益虫の一定数も焼かれているに違いない。

・幹にしがみつく害虫は?
テレビで取り外し作業の映像を見ると、こもを取り外して集めるだけ。
虫たちは、こもの中で越冬するとは限らない。こもの下の幹側にしがみついている可能性もある。
こもを外しただけでは、そうした虫を退治できず、単なる越冬場所の提供に過ぎない。虫を退治したいなら、ほうきで幹をこするとかしないといけないと思う。

・こもの外し方
今年の天徳寺と鶴岡公園のこもの外し方を映像で見て、初めて気づいた。
天徳寺では、おそらくなんの気も遣わずに、こもを一気にめくってはがしていた。鶴岡公園では、くるくると巻物を作るように丸めながら、はがしていた。
天徳寺方式のほうが作業時間と手間は短縮できそう。しかし、はがすときの勢いで、付着していた虫が落ちて、結果的に“助けて”しまうことになる可能性が高いと思う。
おそらく鶴岡では、そのことを意識して、あえて手間のかかるやり方をしているのではないだろうか。

以上から、個人的には、こもには科学的な効果はきわめて低く、現実的には「季節の風物詩」以外の役割はないと考える。
こもを巻いている側にも言い分はあるだろうし、季節の風物詩に金や手間をかけるかどうかはそれぞれの判断ではある。


Wikipediaに出ているが、兵庫県立大学が10年ほど前に姫路城で行った調査では、こもに付着するのはクモなど害虫ではない虫がほとんどという結果が出た。姫路城では、昨シーズンからこも巻きを廃止したという。
皇居外苑や京都御苑では、それ以前からやっていないという。弘前公園や秋田市の千秋公園なんかも、やっていないのではないだろうか。
日本生態学会のホームページに、その研究の要旨(http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/55/B2-15.html)が出ていたので見ると、害虫は「こもを外した部分の幹の割れ目に残るものが見られた」そうだ。
一方、こも側には害虫よりも益虫のほうが多かったことから、「益虫に越冬場所を提供して増やす効果が大き」く、「活用の仕方によっては益虫を増やし、環境に負荷をかけない害虫防除法としての利点がある。」としている。
なるほど。益虫にこもで越冬してもらって、そのこもを焼かずに、こもから出た春以降に害虫を食べてもらおうという、まったく逆かつ長期的な視点になれば、こもの使いみちがあるのかもしれないということか。

「こもは無意味」だと決めつけてしまっていた者として、そういう発想の転換に、はっとさせられた。
外したこもを焼かずに堆肥にするとかできれば、さらに環境に優しくなるのかもしれない。

それにしても、本来なら自然や生き物を大切にするべきであろうお寺というところが、“無益な殺生”とも受け取れるこも巻きを行い、しかもそれをマスコミを通して“宣伝”するようなことには、やっぱり、なんか釈然としないもの【7日補足・パフォーマンス感(?)みたいなもの】を感じてしまう。あくまで私見ですし、檀家でもない者がとやかく言うべきではないでしょうけれど。
【7日追記】マスコミを呼ぶのなら、いっそ、こもを焼く時に、虫たちの霊を慰めるべくお経をあげて、そこも取材させるとかしたらいかがでしょう。

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2 コメント

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バスの話題 (雪こまち)
2017-03-08 06:07:54
いつも楽しみに拝見しております。
記事には関係ありませんが、秋田中央交通と羽後交通のバスの話題があります。
中央交通に3台目の小田急中古のエアロスターが導入されたようです!
窓枠が銀サッシだそうで、これまでの2台とは違いますね。
羽後交通では田沢湖営業所に新車と思われる大型ブルーリボン2が2台導入されました!
ちなみにトップドア車なのでおそらく乳頭温泉や駒ヶ岳の路線に使われそうなようです。
羽後交通の田沢湖の山岳路線の車両はこれまでだいぶ年式の古い中古を使っていたので、ブルーリボン2の導入で引退する車両が出そうな感じですよね。
年度末の関係か最近は両社とも車両更新が早いですね!
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車両導入 (taic02)
2017-03-09 00:38:59
ありがとうございます。
銀窓枠のエアロスターは見かけました。12-38で臨海配属。窓枠だけでも、印象はだいぶ違いました。
中古でもう1台、旧ブルーリボンのワンステップ(?)が入ったとかいう話もありますが、見ていません。

羽後交通の田沢湖はよく知りませんが、中古メインでしかも独特な仕様の車が多いような気がしていました。
新車もトップドアとは、今時珍しいほうでしょうね。観光地向けとして座席なども特殊なのでしょうか。

白ナンバーですが、いつの間にか、ノースアジア大学の送迎バスにも、4台目(マル4と表記あり)が導入されていました。
今まで同様、どこかの中古らしき日野製トップドアなのですが、大型でなく中型。しかもオートマのようです。
この正月、弘南バスで1台だけ同じ仕様の車(前後ドアの朝日自動車中古とは別)を見かけましたが、もしかしたら出所が同じなのかもしれません。
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