ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

あっ、と驚いたんだよ。

2012-10-28 19:23:39 | Weblog
平取にはアイヌの人がたくさん住んでいる。
昨日のお風呂で出会った木村さんもそうだったしね。

チセでおじさんと話した。色々なことを教えてくれた。
北海道にはアイヌのコタンがいくつもあって、木彫りをしている人がたくさんいるが、本物のアイヌの木彫りをしている人はほとんどいないと言う。

阿寒湖のお土産屋さんには店頭で木彫り細工をしている職人さんがたくさんいる。
そのことを言うと、「あれはね、お土産用の木彫りなんだよ」

なるほど、そうだ。

お土産用と伝統の木彫りは違うということだ。お土産屋さんは売れるものを彫る。伝統的な木彫り職人は、売れなくても伝統のまま彫る。

なるほど、そういう事だ。

もうおじさんしかいなくなってしまったらしい。という話。
おじさんは貴重な存在だ。

で、驚くのはここから。

アイヌが虐げられてきた歴史や、現状。これからどう受け継いで行くべきか・・・などなど、長々と話した。

そこで、驚愕の事実。

アイヌの伝統的な木彫りを受け継ぐ唯一の職人のおじさん。・・・東京出身。

えっ?えっ?どういうことですか?えっ?あれ?

聞くと、30年前に北海道に移住して来て、アイヌの木彫りの師匠に弟子入りしたそうだ。
二風谷の人たちにとても可愛がられ、お嫁さんを紹介されたそうだ。そうやってアイヌの人と結婚するケースは多いらしい。
でも、おじさんは断った。おれ、付きあっている子がいるから。だって。
そうして、おじさんは彼女を二風谷に呼び寄せ、そこで結婚をしたってわけ。
奥さんは今、アイヌの伝統的な織物を織っているそうだ。

この地区でお嫁さんを紹介されて、断った人は初めてだったという。

てっきり、アイヌの人と喋っていると思ってたから、それはとてもとても驚いた。笑ってしまった。おじさんも笑っていた。

ここはね、本当に面白いんだよ。みんな優しいしね。

おじさんはそう言っていた。

昨日出会った木村さんの話をしたら、あぁ、ヒデのことだね。アイツはまだ若いのになかなかすごいヤツだぞ。と、集落の重鎮みたいなことを言っていた。

移住して・・・特に、スペシャルな地区に移住して、こんなに馴染んじゃっている人を初めて見たよ。

継承者であり、伝道者。素敵なおじさんと過ごした一日でした。

おしまい。

トンコリ。

2012-10-28 17:31:04 | Weblog
おじさんは、木彫りの作業を中断して、アイヌの伝統楽器「トンコリ」を演奏して見せてくれた。

トンコリは五本の弦を張った弦楽器。その特徴は、フレットを押さえないということ。五本の弦を一本ずつ爪弾いて奏でる。至ってシンプルな楽器だ。
フレットを押さえないということは、五つの音階しか出ないということ。
沖縄音階にレとラがないように、アイヌ音階というのがあるのかもしれないな・・・などと想う。

このトンコリもおじさん作のモノ。トンコリは人を象ってある。
ギターのヘッドにあたる箇所が頭。ちゃんとトルコ石の瞳が付いている。
弦が張ってある箇所が身体なのだが、なんと、トンコリには魂が入っている。傾けるとカラコロと音がする。それが魂の音なのだ。
おじさんが作ったトンコリには心臓もつけてあるそうだ。

弾かせてもらった。これがなかなか難しい。いや、簡単なんだけど難しい。
一から五まで、弦の音程の高さが順番にはなっていないのだ。
弦を弾くだけの楽器なのだ、弾くのは簡単だが、出したい音を奏でるには慣れと練習が必要だ。

ちょっと遡ってみる。

2012-10-28 16:53:45 | Weblog
ちょっと遡って、二風谷の話の続き。

鮭の産卵の瞬間を捉えることを諦めて、アイヌ文化博物館へと向かった。

アイヌの住居、チセが立ち並ぶ。新しいチセがいくつかあり、それらは20代30代の若者が最近建てたものらしい。
伊勢神宮の式年遷宮と同じ、20年毎の伝統技術の継承を目的としている。

文化博物館で、アイヌの文化と歴史に触れ、少し学び、次に幾つかのチセを巡ってみた。

伝統工芸実演中の文字があるチセに入ってみると、なんと・・・

クマのウンチ、鮭の産卵、今朝から二度もご一緒したおじさんが、木彫りをしているではないか。

こんにちは、また会いましたね。てな感じ。

決断は廊下から。

2012-10-28 15:40:41 | Weblog
トトに聞いてみた。
なぜ雪月花廊を喜茂別に作ったのか?
トトはこう答えた。
廃校になった校舎を見に来た時、鍵が閉まった扉の窓から中を覗いた。100メートルもある長い廊下が目に入った時に、ここなら何かが出来る。ここで何かをやろうと決意した。

ここには100メートルの長い廊下がある。
移動用にキックボードが数台置いてある。昨日は宿泊の親子が廊下でキックボード競争をしていた。

廊下には、往年の品々がそのまま飾ってある。例えば歴代校長やPTA会長の写真、小学生が書いた標語やポスターや習字。卒業製作の手形。などなど。
それに加えて、トトのコレクションが所狭しと飾られている。

ここもまたとりとめもなく、そのとりとめの無さが、また素晴らしいのである。

礼儀知らずな僕なのに。

2012-10-28 14:43:12 | Weblog
ゆうべ、団欒室にて。

トトが言う。まだお腹いっぱいか?

お腹いっぱいです。

そうか、俺は夜食を食うけど、食うか?

いや、俺はいいです。

少しなら食えるだろ?食え。

・・・じゃあ、いただきます。


エゾシカシチュー&オムライスが出て来た。結構なボリュームで驚いた。
頑張って食べた。美味しかった。

縁もたけなわ、そろそろ解散。食器の片付けをかって出た。
いいよいいよと言われたが、片付けくらいはと、グラスや皿を洗い始めた。

トトの一言。
「あなたは礼儀を知った人だ」

あぶねぇ。やっといて良かった。礼儀知らずな僕の胸に、少し刺さった一言だった。

風の目覚まし。×2。

2012-10-28 14:17:13 | Weblog

風の音で目が覚めた。正確には、風が引き起こす様々な音で目が覚めた。
テントもタープもバタバタと凄い音を立てている。
遠くから風がやって来る音がする。轟音。こっちに向かい音をあげてやって来る。まるで、地震の前の地響きのように。轟音。

とりあえず、テントとタープのガイドロープを強化する。風速10メートルを優に超えて吹き続ける風に耐えられるのか・・・微妙。

雨も降って来る。気温はさほど低くはないはずだが、風に伴って雨も降って来れば・・・寒い。
寒いので、テントに入った。テントの中も寒いので、寝袋に入ったらうつらうつらと眠ってしまった。

また轟音と揺れで目を覚ます。せめて風だけでも止んでくれればなぁ。
本格的に降り出した雨に、ブーツを濡らされてしまった。悲しい。

強風の中、お昼ご飯を作って食べ、団欒室に避難してきた。
暖炉の前に座って、濡れた靴下を乾かしている。

明日のお昼頃までは、この風が止まないみたいだ。
時折吹き付ける恐ろしいくらいの突風に、テントが破壊されないことを祈るばかりだ。