ほんとに便利な世の中になったものだ!と感激したのはこの10月、ポーランドのワルシャワで開催された「ショパンコンクール」。
このコンクールのアプリがあると知り早速インストールして楽しんだ。
日本人の参加者も多く、ステージが進む毎に彼らを含めその演奏を楽しんだ。こんなにショパンを聴いたことって最近なかったなあ~♪
アプリなので、これから朝のセッションが始まります、とかステージの結果が出ますよ、といったお知らせが届く。
またピアニスト一人一人のページでは経歴からプログラム、その演奏、そしてインタビューまで読む&見ることができるようになっている。
そしてコンクールの本番では司会者がピアニストの名前、曲目そして奏者が選んだ楽器の名前を紹介する。
するとカメラはピアニストが楽屋から細い階段を上って出て、演奏を終え楽屋に戻ってくるまでをとらえる。
確かに朝日新聞の記事でコンクールがピアニストの原石を見つけるという役目を終え、今や一大エンターテインメントとなった、というのもうなずける。
私はピアニストが選んだ楽器にも興味をひかれた。第2ステージまではヤマハを弾くピアニストがいたが、その後はスタインウエイ、ファツィオリ、カワイと3つのメーカーのピアノが選ばれていた。
ピアノの側面にメーカー名が書かれるようになってどれくらいになるのだろう?全くいい宣伝になりますものね。
ピアニスト側から見て右手側の側面、観客からは見えないだろうにと思われる左手側の側面にもメーカー名が入っており、ファツィオリは椅子にも名前が入っていた。
実はファツィオリはずっとその音色を聴きたいと願っていた楽器なので、このショパンコンクールでたとえ機器を通した音であっても、聴けたのは嬉しく、ほくほくした。
今回のコンクールでは1位のブルース・リウさん、3位のマルティン・ガルシア・ガルシアさん、5位のレオノーラ・アルメリーニさんが弾いていたのだけれど、キラキラする輝きのある華やかな音が耳に心地よく残った。
「ファツィオリ」という名前を初めて知ったのは11年前に読んだ「パリ左岸のピアノ工房」という本の中だった。
そこに描かれたパリ左岸にひっそりと存在するピアノ工房を想像してワクワクした。
その中で、現代の名器として語られているイタリア北部の山の中で全て職人の手作業によって生み出されるという「ファツィオーリ」(この本の中では”ファツィオーリ”と紹介されている)というこのピアノについての一章があった。
それを読んだ当時から今に至るまで、この楽器の音色を聞きたいという願いを抱き続けていることを再認識させられた。
こうなると、次は生で聴きたいな~!
パリ左岸のピアノ工房(新潮クレスト・ブックス)T.E.カーハート:著、村松潔:訳
結局、今またページを開き最初から読み返して、ページから立ち上り溢れ出すピアノの音にうっとりする。