2019年/ベトナム/79分
原題:Rom
- 監督・脚本:チャン・タン・フイ
出演:チャン・アン・コア(ロム)、アン・トゥー・ウィルソン(フック)、WOWY(金貸し屋)、カット・フーン(ギーさん)
物語:活気に満ちたサイゴンの路地裏にある古い集合住宅。多額の借金を背負う住民たちは、大金が当たる”闇くじ(デー)”に熱中している。14歳の孤児ロムは、宝くじの当選番号の予想屋として生計を立て、生き別れた両親を捜すための資金稼ぎを心の拠り所にしている。ライバルの予想屋フックは野心家で当選の確率も高く、ロムとフックはいつも競い合っていた。そんな中、地上げ屋から立ち退きを迫られ追い詰められた住民たちは、ひたむきに予想と向き合うロムを信じ、借金をすべて返すために一攫千金の賭けに出る。果たして、ロムは彼らを救うことができるのか――?!~「公式サイト」より
闇くじ「デー」とは:ベトナム政府公認の”正当な”くじの当選番号の末尾2桁を予想する、ハイリスク/ハイリターンな違法くじ。「デー」と呼ばれている。
姿の見えない《胴元》が取り仕切り、《賭け屋》が運営し、その間を《走り屋》が繋いでいるが、実態は誰にも分からない。 ベトナムの労働者階級(人口の7~8割を占める)に尋ねれば、まず間違いなく全員が「デー」を知っているほど浸透しており、急速な都市開発から取り残された人々が、自宅を担保に《賭け屋》に借金を重ね立ち行かなくなるなど深刻な社会問題となっている。
「デー」を賭ける時間帯は早朝から抽選開始の30分前まで。抽選は毎日16:30に発表される。~「公式サイト」より
久しぶりの川越スカラ座、「ブックセラーズ」を友人と観たのがはるか昔に思える。
予備知識なく、珍しいベトナム映画だし、題名からしてきっと走り回り爽快感に満ちた作品なのだろうと思っていたが、始まってすぐその予感は打ち砕かれた。
冒頭、闇くじ「デー「に関する説明文が続くのだが、えっ、どういうくじなの?それが深刻な社会問題になっているって、ど・ゆ・こと?と頭の中は疑問符だらけに。
しかも、ホーチミンではなくサイゴン・・・懐かしい名前だけど(Wikiで検索したら、「現地では今なお「サイゴン」という表現が、様々な場面で使われており、都市名としては「ホーチミン市」よりも通じる」とあり、なるほどと納得)
結局、そういう闇くじ「デー」があり、それに人々は人生を左右されているらしい、という見当はついたのだが、作品が展開していくにつれ人生を左右される、どころではなく闇くじ「デー」に振り回される人々の生活のありように苦しくなってくる。
そこにあるのは混沌、狂乱、そして生へのひりひりする情熱と欲望、現実の残酷さ。
登場人物それぞれが夢を抱いている。
主人公の14歳のロムと彼のライバルのフックもそうだ。彼らはとにかく走る、走り回る。その背中を押しているのもそれぞれが描いている夢だ。
きっと今も走っていることだろう。そう思うと切ない、どんなにたくましく見えても・・・。