K-World (Kの世界)

アルツハイマー型認知症の妻K、
発病後18年目になります。
現在は介護療養型病院に入院中。
(夫Route463)

短編「サンデイモーニング」

2007-05-13 13:54:54 | ケア日記
Kは6時半に起きた。熟睡であった。
昨夜は、パジャマのパンツを着ないで寝てしまった。
いつもは、パジャマパンツを脱がせるのを超嫌がる。
今朝は脱がせる手間なし、着替はスムースにいった。

朝食は、ナタデココヨーグルトにカシスを混ぜたもの、
トースト、紅茶、リンゴ。おいしいと食べてくれた。

8時半、Kをそっとトイレに誘導した。
Kは一昨日から着用の紙パンツを下げて、座った。
「はいどうぞ。うれしい・・」、ひとしきりひとり言。
しばらくして出てきたが、おしっこは出ていなかった。
Kは、おしっこを出したいのに、どうすればいいの?
そんな苦しさを訴えてるような感じがした。

きょうは5月13日、日曜日、母の日。
「おかあさん、おめでとう」、娘からの電話。
「うん、ありがとう」Kはうれしそうな顔をした。

トースターで焼いていた便秘予防の焼き芋ができた。
それをふうふう云いながら、二人で食べた。

洗濯機に柔軟剤を入れるのを、いつも忘れるので、
タイマーをセットしておいた。

11時半、Kの様子がおかしくなってきたのを感じた。
自分で作ったキルト製の小さな座布団を胸に抱えて、
トイレの方に向おうとしている。
私は、Kの後ろに立って、そっと背中を押してやり、
トイレの中へ誘導した。Kは何の抵抗もみせなかった。

私は「南無阿弥陀仏。どうか出ますように」と祈った。
Kは「みんなやってくれるのよ。どうなっているの。
あっ、それ!早くしてよ・・・」ひとり言を云った。
Kに、おしっこが出るという確信を得た言葉であった。
「しゃーっ」という排尿音を聞いて、ほっとした。
私の日記帳の排泄記録欄に、「11-尿」と書き込んだ。

ほどなくして、「顔を洗おうか?」と声をかけた。
「洗ったからいいよ」って断われることもあるので、
探りを入れながらの誘いであった。
すると、Kは「何かやんなくちゃなぁー」と笑った。
「そうだよ、何かやんなくちゃなぁ」私も笑った。

私は、一山の特殊なブラシでKの歯と歯間の歯垢を、
取り除いてやる。「80歳で20本の健康な歯を残す」、
これが私の願いである。

次に、Kに歯ブラシを持たせ、私が歯みがき(クリーム)
をつけると、Kは自分で上手に歯を磨いた。
水道栓を開け、ブラシを洗った。

「クチュクチュペっをしようね」と私。
Kは水を口に含んで、口の中でがらがらとやって、
ぺっと吐き出す。
「もう一度」と私。Kは云うとおりにできた。

「目を洗おうか?」と私。「顔を洗おうか」というと、
戸惑うことがあるため、こう云うようになった。
タオルを渡すと、Kは上手に顔と手を拭く。

「化粧水をつけよう」と私。Kの両手を広げさせ、
そこへ私が化粧水を乗せる。
「さっ、顔につけよう」と私。Kの顔を指差す。
ここでもわからなくなることがあるので、注意。
顔に化粧水をつけるときの顔、仕草はまさに女性。

昨日、訪問美容師さんにカットしてもらった。
「顔もきれいになったし、髪もきれいだし、美人だよ。
俺が歯を磨いたら、キッスしてやる。待っていて」
「・・・」Kはうれしそうに居間に戻った。


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2 コメント

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よかつた。 (サブリン)
2007-05-14 00:20:33
よかつたですね。笑顔お二人の笑顔・・・。
463さんの優しさ、愛、・・・・・。
どうしたら・・こんな優しさ出るのですか?
私は・・・・?強くなれない、向き合えない。
優しくなりたい。
これでよかった? (Route463)
2007-05-14 23:08:35
サブリン様
紙パンツの着用には、いろいろな考えがあります。
できることならば、着用しないに越したことはない。
そう思いますが、仕方がないということもあります。
幸いに、Kは抵抗もなくはいてくれました。
それでよかったと思っています。

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