病室を訪ねると、妻は寝ていた。
いつも寝ていて、寝るのが仕事みたい。
それが彼女にとって一番楽な方法なん
だろうね。だから寝ていていいんだ。
「寝たきり」という言葉があるけれど、
こういう状態のことを言うのだろう。
ただ妻の場合、自力で寝返りを打つこ
とができないので、寝たきりランクで
いえば、最上位に当たると思う。
しばらくして目を開けてくれた。
目線が私のほうに向かってきているよ
う . . . 本文を読む
もともと私(Route463)は、時間の使
い方があまり上手くなくて、放ってお
くと、自分の好きなことにいつまでも
入り込んでしまい、ほかのことに目が
届かなくなる、そんなタイプの人間で
あった。
そんな訳で、一日中パジャマ姿でいた
り、夏ならステテコ一枚でいたり、髭
も剃らないでいたりと、時間の使い方
は実にいい加減であった。
だけど、妻のKが入院してからは、少
し変わったような気がする . . . 本文を読む
高齢化が進行する中で、認知症の人が
運転して引き起こすと思われる事故が
増えてきている傾向にある。
そんな背景があって、2009年からは、
75歳以上の後期高齢者が運転免許更新
を行う際、認知機能検査が義務づけら
れている。
これは、記憶力や判断力をみる30分程
度の筆記試験で、具体的には、「時間
の見当識」」(検査日当日の年月日、
曜日と時間)、「手がかり再生」(16
種類のイラストを記憶し . . . 本文を読む
今年の元旦で妻のKが介護療養型医療
施設に入院して843日になった。
夫である私は、余程の理由でない限り
毎日妻の病床を訪ねてきた。
私の日誌を読み返してみると、声かけ
しても、体に触れても、何の反応も見
られず、いつも「悔しい」という言葉
で締めくくられていた。
そんな思いが募ったのか、今年の初夢
は、妻Kの世界(脳)で使われている
言葉(脳波?)を、私のスマホ上に、
翻訳して表示してくれ . . . 本文を読む