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自衛隊観艦式体験記~そして「くにさき」は征く

2012-10-14 | 自衛隊

われわれが自衛艦「ひゅうが」に乗り込んで、しばらくしたころ、
ドックで隣に停泊していた「くにさき」が一足さきに出航していきました。

この観艦式というもの、観る方も観られる方も、洋上に出て行いますが、
伝統的に海軍時代から日本では、海上で観閲部隊と受観閲部隊がすれ違う方式を取っています。

1347年、英仏戦争が行われたとき、国王エドワード三世が出撃前の艦隊を観閲したのが、
観艦式の起こりです。

以後、各国の海軍が観閲式を慣行として行うようになったのですが、現在においても、
多くの海軍は受艦部隊(観られる方)が洋上に投錨し、観閲艦がその前を航行する方法、

「停泊方式」

が主流となっているのですが、我が海軍じゃなくて海上自衛隊は、このすれ違う方法、

「移動方式」

を取っています。
これは艦隊単位で考えても非常に難易度の高い方法で、
さらに海自では、それのみならず訓練展示をも行うわけですから、
このあたりにも旧軍から受け継がれた伝統の実力が現れているのだそうです。

 

スタンバイ中の信号手を発見したので、ズームで撮影してみました。
当たり前のことですが、手旗信号って、現在も使われているんですね。
全てのことが電化されて通信も容易になった今でも、手旗の方が便利なこともあるのでしょうか。



われわれが「ひゅうが」にこれから乗り込まんとするとき、お隣の「くにさき」は、
まさに人員全て乗艦を終え、出航準備の最後の段階に入っていました。
一時間「ひゅうが」より早く洋上に出るもののようです。
「ひゅうが」乗艦は8時がリミットで、受付が7時に始まったとすれば、「くにさき」組は、
おそらく朝もまだ暗いうちから大桟橋に来なくてはいけなかったのではないでしょうか。




出航準備のため、ブイに掛けてあったロープを巻き上げている・・・のかな?
この赤いベストの人が、その作業を一人でやっているようにも見えます。
当ブログ軍事顧問(勝手に任命)の鷲さん、ご存じですか?



この人たちはおそらく地上居残り組?
お見送りの体勢になって並んでいます。
水兵服が並んでいると「か~も~め~の水兵さん」
という歌をつい思い出してしまうのはわたしだけでしょうか。
カモメと違って冬服ですが。



「くにさき」と「ひゅうが」の間からベイブリッジを臨む。

ところで、「くにさき」ですが、一時間も早く出航するのは、これが「観られる側」、つまり
「受閲艦隊の一員だからです。
「観る側」が観閲部隊5隻、付属部隊5隻の計10隻。
「観られる側」は・・・・
数えるのが面倒なので、この表をご覧下さい。



モニターによっては横に並ばないかもしれません。
縦になってしまい見にくかったらスミマセン。

受閲艦艇部隊の旗艦となっている「あきづき」は、先日、元海幕長の講演を聴いた日、
デビューした新鋭艦です。
実は赤☆氏は、この式典に出席して、そのあと講演をなさったというわけ。
(ちなみに、この式典にもさりげなく『参加したいなあ』と言ってみましたが、そのときは
元海幕長の御威光を借ることのできる以前でしたし、そもそもこういう式典に出るには
『関係者』が原則なのだそうで、さすがに不可能でした)

各艦は、横浜、横須賀、木更津の三カ所の各港から出港し、実地海面で集結します。
航行が進むにつれ、周りに一隻、また一隻と艦船が増えていく様子は、
あなたがたとえ艦船や海自のファンでなくとも、その壮観さに血湧き肉躍ること請け合いです。
(自衛隊広報部になり替わりまして宣伝してみました)



皆取りあえず毛布を敷いて「場所を確保」するのですが、実際は、
広い艦内をくまなく探検したり、自衛官を捕まえて話を聞いたり、
訓練部隊の展示を見たり、音楽を聴いたりしていると、
一所でじっとしていることなどまず無いと考えて良いかと思います。
出航してまだ内海を航行しているときには皆座ってお弁当を食べますが、
それが終われば毛布はほとんど用済みになります。
しかも、沖に出ると「いかに強風」(知ってます?この軍歌)状態で、
甲板にじっとしていることが非常に困難になってくるので、
目の色変えて場所取りをする必要は全くありません。

そうこうしていると、いよいよアナウンスが
「くにさきが出航します」と告げました。



軍艦旗が、美しい。
艦尾に並ぶ海の男たちのシルエット。
さんざんブログでお話ししてきたので、何百回も見たような気になっていましたが、
実は生まれて初めてだということに気づきました。

そして、こういった美しい礼式を目の当たりにして、
自分がなぜ海軍というものに心惹かれてきたのか再確認したような気がします。



「くにさき」はドックの停泊位置から、バックで出て行きます。



「くにさき」は8.900tの輸送艦です。
映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」の撮影に使われたそうです。
山本司令が井上成美と歩くシーンかな?(←適当)
オフィシャルサイトのスタッフ日誌によると、撮影が終了したとき、「くにさき」乗員が
スタッフを「帽振れ」をして見送り、思わぬことに皆感動。役所広司は「感涙した」とのこと。
そうでしょうなあ・・・。



船首側の乗員。
よく見ると水兵さんもいるぞ。
甲板向こう側では士官が何かを点検していますね、
こういう答舷礼のとき、自衛官はどのような気持ちなのでしょう。
慣れてしまって日常的な行為というか、ルーチンなのでしょうか。
それとも、やはり「海の男として誇らしい」気持ちが湧き起こるのでしょうか。





かわいらしいタグボートが、押して方向を調整します。
この前日、乗馬に行って馬の可愛らしさに魅せられたのですが、
フネも・・・・・可愛いですよね。
こういう小さいフネが大きな艦船を押している様子、なぜだか分かりませんが、
思わず胸がじ~んとしてしまいます。
軍艦を擬人化して「萌え」たりする人々の気持ちがこういうときはよくわかります。
理解して下さる方、いますよね?





タグボートの船首を見て下さい!
ちゃんと「ここを押しましょう」みたいな白い部分を押していますね。



出て行くフネの人は皆(自衛官以外は)皆手を振ります。
こちらも皆手を振って見送ります。
そこで、ふとエリス中尉、思いました。

帽振れは?帽振れは行わないのか?

礼式で舷に立っているときは旧軍でもしなかったのかもしれませんが、
「日本海海戦」の映画「海ゆかば」では、出稿のとき全員が帽振れしていたんだけどなあ。

あの美しい海軍の慣習は必ずどこかで受け継がれているはず、
・・・・・・なんですが、今回それを確認できなかったのは残念です。



右から二人目の自衛官、こちらを見てないで手を下ろしなさい。(教育的指導)

あれ?「くにさき」は甲板にジープを、しかも見える限りでは二台も乗せているぞ?
誰か陸自の偉い人でも運んできたのかしら。
実は、我が「ひゅうが」の船首側右舷には

ごらんのようにクレーンが積まれていたんですよ。
何に使うために乗せられていたのか、聞けばよかったなあ。



そして「くにさき」は征く。
ああ、かっこいいなあ・・・・・・。
受観閲艦である「くにさき」、観閲実地海面ですぐまた逢おう!

タグボートは右舷左舷、各一隻ずついたのがこのとき初めて分かりました。


というわけで(まだ出港もしていないけど)次回に続く!







おまけ*
鷲さんの指摘により無罪と分かった右から二番目の自衛官のアップ。