まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第686回定期演奏会

2024-02-19 19:04:28 | kyokyo
2024年2月17日(土)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 川瀬 賢太郎 / 独奏 : 石田 泰尚(ヴァイオリン)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団


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● マルサリス : ヴァイオリン協奏曲 ニ調
作曲者は、マイルス・デイビス亡き後、現代屈指のジャズ・トランペット奏者として、最前線で活躍されてきた、あのウイントン・マルサリス氏のこと。クラシックにも造詣が深く、数々のアルバムをリリースされている他、自ら作曲も手がけられています。

今回の作品の日本初演は、同じく、川瀬賢太郎=石田泰尚のコンビで、神奈川フィルの演奏会で取り上げられています。そして、今回の演奏はこのコンビによる3度目のステージで、神奈川フィル以外では京響が初めてのことになります。この曲のCDを初めて聴いた川瀬さんが、「ソロは石田さんで行こう!」と即決されたというエピソード。まさに、ぴったりとはまったキャスティング! その練度も、ますます上がってきました。

独奏ヴァイオリンの石田泰尚さんは、2020年のシーズンから京響の特別客演コンサートマスターも兼任されているので、演奏会のプログラムによっては、短いながらも印象的なソロを聴く機会が、これまでに何度かありました。本格的なソロといえば、コロナ禍の影響を受けた、2020年8月の京響第648回定期(指揮:阪哲朗さん)での、ヴィヴァルディの「四季」以来、2回目のことになります。

この作品は、それぞれ標題の付いた4楽章からなる協奏曲で、演奏時間は40分を超える堂々としたスケールを有しています。ジャズやブルースを基調にしていますが、それ以外にも、さまざまな音楽的要素が取り込まれ、曲想は目まぐるしく変化し、展開されていきます。そこには、クラシックの安易なジャズ化(逆に、ジャズの安易なクラシック化)とは一線を画す、マルサリス氏の矜持のようなものが感じ取れます。

そうしたこの曲が持つ諸々の側面を具現化する、石田泰尚さんの音楽性と技術力の高さに圧倒されます。突然の耳をつんざくようなホイッスルの音、独奏ヴァイオリンとドラムス(中山航介さん)が対話をするかのようなカデンツァ、熱狂する人々の足踏みやクラップの効果音など、斬新で刺激的な試みが随所に施され、視覚的にも楽しめる作品になっていました。

● ドヴォルザーク : 交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
もはやコメントする必要がないほど、高い人気を誇るクラシックの名曲。京響の演奏会でも、2016年10月の第606回定期で客演されたラドミル・エリシュカさんをはじめ、沼尻竜典さん、下野竜也さん、垣内悠季さん、原田慶太楼さんなど、数々の指揮者のタクトで聴かせてもらいました。

私が、川瀬賢太郎さんの指揮される演奏を最初に聴いたのは、2013年11月の京響・オーケストラ・ディスカバリーの第3回、「和と洋」というテーマのとき。続いて2回目が、2017年8月の第615回定期でのヴェルディの「レクイエム」。これで3回目のステージとなりますが、クラシックの王道とも言うべき交響曲の演奏を聴くのは、実質上これが初めてのこと。期待が高まります。

コロナ禍で演奏会の開催もままならないとき、ドヴォルザークの自筆譜の写しを取り寄せて、もう一度勉強し直したという川瀬賢太郎さん。従来とは異なる新しい知見(響き)を見いだし、今回の演奏ではこだわりを持って、トライしてみたい!と抱負を語っておられました。実際聴いてみると、「この部分かな?」と思えるところが、いくつかあったような…。「間違い探し」的な気分で聴くことによって、いつになく新鮮な気持ちで、集中が途切れることなく聴くことが出来ました。

第2楽章、イングリッシュホルンによって演奏される「家路」を代表格として、全編にわたって魅惑的な旋律が散りばめられた名曲ですが、私がとりわけ好きなのは、同じく第2楽章の中間部で、先住民の「森の葬礼」に着想を得たとされる旋律です。悲しみを称えた静謐な「祈り」を思わせるもので、その情景までが思い浮かぶようでした。川瀬=京響の演奏は全体として、整然とコントロールされた中にも爽快な疾走感があり、新たな感動を呼び起こしてくれました。



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