まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第641回定期演奏会

2020-01-19 18:44:00 | kyokyo
2020年1月18日(土)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : ジョン・アクセルロッド / 独奏 : アンドレアス・ブラウ(フルート)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団


            *  *  *  *  *

● ベートーヴェン : 「アテネの廃墟」op.113から序曲
序曲と言えば、同じくベートーヴェンの「レオノーレ第3番」が好き過ぎる私。 この曲は初めて聴くことになります。
作品番号からして、晩年の作品。 いかにもベートーヴェンと言ったフレーズや響きは、あまり感じられませんでした。

プログラム・ノートに「オーボエとファゴットの掛け合い」との記載がありますが、この部分は最大の聴きどころ。
演奏時間はわずか5分という小品でしたが、京響首席の高山郁子さんのオーボエの美しい音色は存分に楽しめました。

● バーンスタイン : 「ハリル」独奏フルートと弦楽オーケストラ、打楽器のためのノクターン
標題の「ハリル」とは、ヘブライ語で「フルート」の意。 第4次中東戦争で命を落とした若きフルート奏者に献呈。
バーンスタインさんから受ける陽気で親しみやすいイメージからは、かなり隔たりを感じる曲調。 少々難解な印象。

独奏フルートには、カラヤンの時代からベルリン・フィルの首席奏者を務めてこられたアンドレアス・ブラウさん。
彼らが残した数々の名盤の中で聴こえるフルートは、この方が演奏されていたと思うにつけ、感慨が胸に迫ります。

冒頭の数小節だけで、ホールの空気を一変させたブラウさんのフルートはまるでマジック。 いわば「魔笛」のよう。
アンコールで披露されたドビュッシーの小品では、楽器特有の硬質で透明感ある音色に包まれ、心が洗われる思い。

● ショスタコーヴィチ : 交響曲第7番ハ長調「レニングラード」op.60
ドイツ軍とのレニングラード攻防戦のさなか、この交響曲は作曲された。 愛するレニングラードの街と市民に献呈。
地球上からレニングラードの街を殲滅すると公言したヒトラー。 900日にも及ぶ封鎖、60万人にも及ぶ犠牲者。

存亡の危機に直面しながらも、市民のために音楽を提供し続けたレニングラード・ラジオ・シンフォニーの人たち。
空襲の恐怖と背中合わせの状況下、まさに命懸けで、レニングラード初演のコンサートに詰め掛けた市民の皆さん。

アクセルロッド=京響の演奏は、当たり前のような平和の中で、のん気に暮らしている私にとって、相当な衝撃度。
こうした極限の状況に在って、人間の(或いは音楽の)持っている力とその可能性について、思いを巡らせました。



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京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」

2020-01-13 17:03:03 | kyokyo
2020年1月12日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : クレメンス・シュルト / 独奏 : 岡田 奏(ピアノ)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団


            *  *  *  *  *

● シューマン : 歌劇「ゲノヴェーヴァ」op.81から序曲
クラシック愛好家の方でも、「シューマンの遺したオペラ作品は?」という問いに答えられる人は少ないでしょう。
作曲者唯一のオペラ作品。 ゲノヴェーヴァとは、新妻のヒロインの名前。 イマイチ、印象に残らなかったかな…。

● シューマン : ピアノ協奏曲イ短調 op.54
当時の音楽界は、ソリストの超絶技巧がもてはやされていた時代。 そのブームに反旗を翻したのがシューマン氏。
独奏ピアノとオーケストラが渾然一体となった作品。 聴衆に過度の緊張を強いることなく、溢れ出る情緒・ロマン。

正直な話、演奏時間の大半を心地よい「まどろみ」の世界の中で過ごしていたので、感想の述べようがないという…。
我が「コンサートで安眠できる演奏=ストレスのない快適な演奏」という自論からすれば、素晴らしい出来栄えのはず!

● シューマン : 交響曲第3番変ホ長調「ライン」op.97
端正でスマート、かつ、細部まできちんと表現しようとする意欲。 若々しく、けれんみのない指揮ぶりに好印象。
重心はやや軽めながら、伸びやかにきびきびとした音楽の流れ。 京響ライブCDとの演奏比較も、なかなか興味深い。

京響では、随所に登場する祝祭的な、或いは、牧歌的な金管アンサンブル(ファンファーレ)が、とても見事な演奏。
首席奏者が登壇されていないものの、充実の木管パート。 女性奏者の比率が高い弦楽パートは、見た目も実に華やか!

            *  *  *  *  *

アンコール曲は、NY定番のシュトラウスの作品の中から、チャーミングで愛らしい「ピツィカート・ポルカ」が披露。
お馴染みの「美しく青きドナウ」や「ラデツキー行進曲」をつい望んでしまうのは、聴衆の我がままなのでしょうか?



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京都市交響楽団 2019年 わたくし的ランキング

2020-01-02 10:51:12 | kyokyo
今年は、全部で13公演(定期8、特別2)を聴きに行きました。 印象に残ったステージの中からランキング。
あくまでも個人的な「感動」の度合いで順番を付けてみましたので、「えー、なんで?」なのかもしれませんが。

            *  *  *  *  *

● 第1位 レスピーギ : 交響詩「ローマの松」
2019年7月7日(日)14:00 開演 @ザ・シンフォニーホール


京都市交響楽団 大阪特別演奏会 / 指揮 : 広上 淳一
圧巻は、終曲の「アッピア街道の松」。 豊かな響きを誇るホールの空間が、まるで「箱鳴り」するようでした。


● 第2位 ストラヴィンスキー : バレエ音楽「春の祭典」
2019年11月17日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール


京都市交響楽団 第640回定期演奏会 / 指揮 : シルヴァン・カンブルラン
センセーショナルで、原初的、土俗的な色あいよりは、洗練された機能美を強く意識させるモダンな「ハルサイ」。

● 第3位 ベートーヴェン : 交響曲第9番ニ短調「合唱付」作品. 125
2019年12月28日(土)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール


京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」 / 指揮 : ユベール・スダーン
軽快なテンポと重心で、推進力と躍動感のある第9。 しかも、内声部の細やかな動きも丁寧に浮き上がらせる熟達。

● 第4位 モーツァルト : レクイエム ニ短調 K. 626(ジュースマイヤー版)
2019年11月23日(土・祝日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール


京響スーパー・コンサート / 指揮 : 広上 淳一 / 合唱 : スウェーデン放送合唱団
極端な言い方をすれば、消えゆく余韻までが愛おしく感じられるほど! 合唱音楽の神髄を聴かせてもらいました。

● 第5位 ベートーヴェン : 交響曲第6番「田園」作品. 68
2019年9月22日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール


京都市交響楽団 第638回定期演奏会 / 指揮 :下野 竜也
終楽章では、ベートーヴェンが託した「オー、ゴッド!」という思いに、ホール全体が優しく包まれているかのよう。

● 番外編 ワーグナー : 「ニーベルングの指環」から
2019年9月15日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール


第23回 京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート / 指揮 : 飯守 泰次郎
「指環」からの抜粋のステージなので番外にしましたが、飯守さんの重厚で、滋味あふれる「いぶし銀」の職人技。

            *  *  *  *  *

京響の演奏会に通うようになって初めて、1月の第630回定期をインフルエンザのために欠席したのが心残り。
高関健さん指揮の「モルダウ」、ワイケルトさん指揮の「ロマンティック」も、ランク外ながらも印象的な名演。



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