まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第632回定期演奏会

2019-03-19 11:26:25 | kyokyo
2019年3月17日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 広上 淳一(常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団

              *  *  *  *  *

● マーラー : 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」
全曲は5つの楽章から成り、第3楽章「スケルツォ」を中心として、きれいにシンメトリーの構造をなしています。
曲想は共通点やストーリー性に乏しく、独立性の高い各々の楽章がコラージュ風に合わさった「組曲」のような体。

○ 第1楽章
冒頭、テノールホルンという珍しい楽器による不思議な旋律が奏でられる。 トロンボーン奏者の戸澤さんが担当。
プレトークでは楽器を持って登場。 全曲の基調を決定づける象徴的な役割。 相当なプレッシャーが掛かるようだ。

○ 第2楽章 「夜曲Ⅰ」
小鳥たちがさえずり、カウベルがにぎやかな音を立てる。 のどかな田園風景の中を、のんびりと行くピクニック?
タイトルは「夜曲」なのにと違和感を覚えます。 野辺の送りのような「弔い」の行進曲が聞こえてきたりもします。

○ 第3楽章 スケルツォ:影のように
シンメトリー構造の中心となる楽章ではありますが、「影のように」という難解な指示の付いた奇怪なスケルツォ。
弟子のブルーノ・ワルターは、「マーラーが書いた最も美しい音楽だ」と評していますが、まるで百鬼夜行の世界?

○ 第4楽章 「夜曲Ⅱ」
甘美なセレナードを独奏ヴァイオリンが美しく歌い上げます。 コンサートマスターの泉原さんのソロは久しぶり。
通常、オーケストラでは使用されることのないギターとマンドリンの音色が、濃密な夜のムードに彩りを添えます。

○ 第5楽章 ロンド・フィナーレ
前楽章の雰囲気を断ち切るかのように、決然としたティンパニの連打が小気味よい。 中山航介さんの冴えわたる妙技。
唐突さを感じなくもありませんが、「組曲」の中の独立した終曲と捉えるならば、まばゆいばかりのフィナーレでした!

              *  *  *  *  *

年度末らしくステージ上では、この3月で卒団される楽団員さんへのセレモニー。 テューバ奏者の武貞茂夫さん。
アンコール曲、エルガーの「エニグマ変奏曲」から「ニムロッド」が捧げられる。 情感たっぷりの演奏に感極まる。



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広上淳一 指揮 京都市交響楽団

2019-03-11 20:30:04 | kyokyo
2019年3月9日(土)15:00 開演 @兵庫県立芸術文化センター・大ホール
指揮 : 広上淳一 / 管弦楽 : 京都市交響楽団

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● シューベルト : 交響曲第7番 ロ短調「未完成」D.759
京響の演奏会では、モーシェ・アツモンさん、ユージン・ツィガーンさん。 両氏の指揮で聴いたことがあります。
誰もが知っている名曲中の名曲。 それだけに、指揮者の解釈(個性)を聴き分けるには格好の素材と言えますが。

普段、聴いているCDが室内オーケストラによる演奏であったせいか、堂々としたスケールの大きさを感じました。
半面、足取りは重たく感じる部分はありましたが、一画一画をおろそかにしない「楷書」風の、きちんとした演奏。

この曲の持つ「感傷的で、はかなげ」とか、「天国的な美しさ」とかいう側面を、過度に意識させることはなく、
どちらかと言うと、未完の第3、第4楽章をも含めた「一大交響曲」の前半部分、といった感じのアプローチか?

● マーラー : 交響曲第1番 ニ長調「巨人」
個人的に思い出のある「さすらう若人の歌」の旋律が使われているということもあり、懐かしさを感じさせる作品。
京響の演奏で初めて聴いたのは、びわ湖ホールでの篠﨑靖男さんの指揮。 下野竜也さんの指揮でも聴きました。

広上さんの指揮では、数年ぶりの「東京公演」を目前に控えて、壮行会的な雰囲気も感じさせた14年3月の定期。
その後の京響のさらなる進化もあって、今回の演奏では、「材質感(テクスチャー)」を感じさせる音色が印象的。

各楽器パートの主張(個性)がより明確になり、音がぶつかり合い、溶け合っていく様も、さらにダイナミックに!
マーラーの音楽が含有する「聖と俗」「正と邪」の混沌とした世界(観)が、とても効果的に表現されていました。

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終演後の「私の自慢のオーケストラです!」という、広上さんのスピーチに感激。 そして、アンコール曲の披露。
エルガーの「エニグマ変奏曲」から、情感たっぷりに「ニムロッド」。 私的なエピソードの紹介もあり、感極まる。



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