まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第674回定期演奏会

2023-01-25 15:39:40 | kyokyo
2023年1月22日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 鈴木 優人(すずき・まさと) / 管弦楽 : 京都市交響楽団


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● プロコフィエフ : 古典交響曲 作品25
この交響曲は、「今、ハイドンが生きていたら、(たぶん、こう)書いたであろう」という着想をもとに、作曲されたと言われています。あえてハイドンの交響曲を聴くという機会は殆んどありませんので、その意味での作品の面白味はわかりませんでした。ただ、整然とした伝統的な交響曲のフォーマットを基にしながらも、20世紀前半(1916-17年、作曲)の斬新な響きやリズムが楽しめるユニークな作品でした。

プレトークの際には、鈴木優人さんがプロコフィエフらしいユーモラスな幾つかの仕掛けについて解説してくださいましたが、それは、プロの音楽家という高いレベルでこそ楽しめるものであって、当然ながら、素人の私には聴き分けも、見分けもつきませんでした。

この着想でいくと、モーツァルトのジャズや、ベートーヴェンやチャイコフスキーのラブ・バラードなどは、是非とも聴いてみたいなあという思いを強く持ちました。

● ストラヴィンスキー : 弦楽のための協奏曲 ニ調
ジャズの天才アルトサックス奏者、チャーリー・パーカーの自伝的映画「バード」(クリント・イーストウッド監督)の中で、西海岸に演奏旅行中のバードが、ストラヴィンスキーの邸宅を訪ねるシーンがあります。実際のところ、対面はかないませんでしたが、ジャズの第一線のミュージシャンをも魅了し、影響を与えたのが、このストラヴィンスキーの音楽だったというエピソード。

協奏曲というタイトルが付けられていますが、いわゆる、特定の独奏楽器が名人芸を披露するというスタイルではなく、「バロック時代の合奏協奏曲のアイディアを用いて書かれている」と、プログラムノートにありました。前ステージのプロコフィエフの「古典交響曲」の着想と同じで、このあたりにも、単にロシアン・プログラムというだけでなく、選曲にも統一感を持たせた鈴木優人さんの意図、センスを感じさせるものでした。

と書いていますが、当日は曲の途中で寝入ってしまいましたので、とてものこと、感想などは述べることはできません。「え、ストラヴィンスキーで寝られるの!?」なんて言われそうですが、逆に言うと、「眠りに誘われる」というのは、それだけストレスの少ない、心地の良い演奏だった(はず?)と、自分なりに評価しています。

● ラフマニノフ : 交響曲第2番 ホ短調 作品27
この曲は、「サントリー音楽賞」を受賞した広上淳一と京都市交響楽団が、受賞記念コンサートとして、2017年9月に、東京・サントリーホールに乗り込んで演奏した、京響にとっては馴染みの深い作品です。京都から聴きに行かれた熱心なファンの方も、きっといらっしゃるでしょうし、当時から在籍されている数多くの楽団員の皆さまにとっては、思い入れのある作品でもあると思います。

ラフマニノフの作曲した交響曲的作品の中でも、演奏される機会が特に多いとされる第2番ですが、他の第3番や交響的舞曲については、それぞれ定期演奏会でも採り上げられ、この京都コンサートホールでも聴く機会に恵まれましたが、どういう巡り会わせか、この第2番はホームのホールで聴くことができず、残念に思っていました。ようやく念願がかない…

歌うような息の長いフレージング、とろけるように甘美であり、また、哀愁の漂う魅惑的な旋律。対照的に、ロシアの広大な平原を疾走するかのような躍動的なドライブ感。さまざまな曲想の要素が巧みに組み合わされ、息を飲むような音楽的世界が繰り広げられていきます。プレトークで、鈴木優人さんは、第3楽章・アダージョのことを「交響曲の数ある緩徐楽章の中でも、最も美しいものの一つ」と称されていました。

どの楽章のどの部分をピックアップしても、京響の演奏水準の高さが窺い知れる演奏でした。安定した弦楽合奏に支えられ、京響の誇る管楽器セクションの花形プレーヤーの皆さんがメロディーをつないでいく様は、まさに至福の時というものでした。ただ、個人的な好みでいうと、演奏時間の60分はちょっと冗長な感じがしないわけでもないですが…

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今回の客演指揮者の鈴木優人さん。京響2回目の登場となりましたが、初登場の第656回定期(2021年5月)は、残念なことに、新型コロナ感染症の感染拡大のために、無観客のライヴ配信で行われました。それだけに、実質の京響デビューとなった今回の演奏会には期する思いもあったことでしょう。厳冬期の寒さを吹き飛ばすような熱い思いがこもった演奏会になりました。但し、お客さんの入りは、いまいちかんばしくありません…


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京都市交響楽団 第九コンサート

2023-01-01 19:06:21 | kyokyo
2022年12月27日(火)午後7時開演 @京都コンサートホール・大ホール

指揮 : デニス・ラッセル・デイヴィス / 管弦楽 : 京都市交響楽団 / 合唱 : 京響コーラス
独唱 : 安井 陽子(S)、中島 郁子(MS)、望月 哲也(T)、山下 浩司(B)

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● ベートーヴェン : 交響曲第9番 ニ短調 作品. 125「合唱つき」
今年の指揮者は、デニス・ラッセル・デイヴィスさん。そのプロフィールを見ると、欧州の著名なオーケストラの主要ポストを歴任されています。ここ最近は、進境著しい若手・中堅指揮者の客演が多かった京響の定期でしたが、今回は久々に、「巨匠」という名に相応しいキャリアと実績のある、実力派指揮者の登場です。

私は、こういう「第九」が聴きたかった!というのが、第一印象です。少し強めのアクセント、メリハリの効いた小気味の良い演奏。加えて、管楽器、打楽器の自己主張もはっきりと、おかげで、京響の誇る首席奏者の皆さんの妙技も存分に楽しめるものでした。
4人の独唱者の中では、ソプラノの安井陽子さんが素晴らしかった。「魔笛」での「夜の女王」役で高い評価を得ていると、プロフィールで紹介されていましたが、その言葉通り、煌びやかで安定感のある高音域の歌唱は群を抜いていました。
また、マスク着用ではないにしても、鼻や口元を布切れのようなもので覆った(一瞬、異様な光景が…)京響コーラスの皆さんも、制約をものともしない立派な歌唱ぶり。あらためて、その実力の高さを認識させるステージとなりました。

ただ、演奏を聴かれた方々のツイートを拝見すると、「優しく、穏やかな」とか、「中庸の美しさ」とかいう表現が目に止まりました。私の感想とは全く真逆のコメントのようなので、一瞬「あれ?」と思いましたが、実は、それが「第九」演奏の奥深いところであり、面白いところでもあるように思い直しました。
年末恒例の「第九」コンサート、当然ながら、聴衆の皆さんにもそれぞれ、自分なりの「第九」演奏というのが出来上がっています。そして、その演奏を基準にして、その年の「第九」を聴くわけで、同じ演奏を聴いても、前述のように全く違う感想が出てくるのも仕方がないかと思います。名曲の名曲たる所以も、その辺りにあるのかもしれませんね。

ちょっと残念だったのが、ツイッター上で交流させていただいている、京響セカンド・ヴァイオリン、副首席奏者の杉江洋子さんが「降り番」?だったこと。いつも先陣を切って、颯爽とステージに登場される杉江さんのお姿が見られなかったのは、長年、京響の演奏会に通っていますが、たぶん初めてじゃないかと。事前のPR動画では、楽しそうに日本酒の試飲もされていたので、何となく「肩透かし」を食らった感じがしました。もしかして、大流行の兆しを見せている新型コロナウイルスとか、インフルエンザの感染でなければいいのになあと、祈っております。


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