まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第660回定期演奏会

2021-09-28 17:54:44 | kyokyo
2021年9月26日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : クリスティアン・アルミンク / 管弦楽 : 京都市交響楽団


            *  *  *  *  *

● ワーグナー : ジークフリートの牧歌
この曲は、ワーグナーの妻コジマの誕生日のために、密かに作曲されたという。 誕生日の当日、クリスマスの朝。
寝室のベッドの中のコジマは、この穏やかで安らぎに満ちた調べで目を覚ます。 素敵なサプライズ・プレゼント!

タイトルの「ジークフリート」は、夫妻の愛息の名前から命名。 「指環」の第3作、英雄の名もジークフリート。
愛情あふれる温かな曲想は、「良い仕事は良い家庭環境から」との言を十分納得させるもの。 公私とも充実の時。

弦楽アンサンブルを主体とした編成の京響もそれに相応しく、しみじみとした情感を呼び起こすような美しい響き。
あまりの心地よさに、思わず「寝落ち」してしまったのは、ここだけの話。 高山郁子さんのオーボエが素晴らしい。

● ワーグナー : 楽劇「ニーベルングの指環」オーケストラル・アドヴェンチャー
この4部作は上演に4日間、総時間は約15時間にも及ぶという「大河ドラマ」。 「ええとこどり」の70分版。
オランダのオーケストラの打楽器奏者、デ・フリーヘルという人が、大胆にも(無謀にも?)編曲、まとめたもの。

オーケストラが充実している部分は、もれなくカバーされていますが、独唱、二重唱、合唱の名シーンでの欠落も。
例えば、ジークフリートが刀を鍛えるシーンの独唱とか、貴族の家臣たちの男声合唱とか。 欲を言えばきりがない。

英雄ジークフリートのライトモティーフとされる「角笛の動機」。 京響ホルン首席の垣本昌芳さんのソロは絶品!
また、最終盤の「ジークフリートの葬送行進曲」は、深い悲しみを湛えながらも、勇壮で威厳に満ちた圧倒的演奏。

個人的には、メトロポリタンオペラのWOWOWライブが鑑賞の手助けに。 純粋に管弦楽だけではハードル高し。
京響の皆さんには、あの「びわ湖リング」での成功体験が、この日の演奏に大きく作用したことは想像に難くない。

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14日間の自主隔離期間という障壁にも関わらず来日、素晴らしい演奏を聴かせて下さったアルミンク氏に感謝!
ウィーン仕込みの紳士的で優雅な振舞い。 ドイツ的な要素が過度に強調されず、入門者にも気軽に楽しめました。



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マーラー・シリーズ 沼尻竜典 × 京都市交響楽団

2021-09-20 16:07:04 | kyokyo
2021年9月18日(土)14:00 開演 @滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール・大ホール
指揮 : 沼尻 竜典(びわ湖ホール芸術監督)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団


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● マーラー : 交響曲第10番 ~ アダージョ
マーラー最後の交響曲。 全楽章を完成することなく、あの世に旅立ってしまった未完の作品。 第1楽章のみ演奏。
私自身の個人的なことになりますが、これで第1番~第8番、そして第10番と聴くことが出来ました。あと少し。

冒頭から、不安な感情を呼び起こす様な旋律。 息の長いフレーズ、うねる波のイメージ。 心地よいとは言い難い。
達観した境地というよりは、いろいろな感情が渦巻く? 聞こえてくる管楽器のトーンは、悲鳴、冷笑の様な不快感。

後半部、突然現れる不協和音の絶叫は、パイプオルガンの響きの様な威圧感で迫って来ます。 耳にも、心にも痛い。
ラストは「救い」にも似た気持ちがわき起こってくるものの…。 シューベルトの「未完成」とは、ちょっと異なる。

● マーラー : 交響曲第1番「巨人」
マーラー最初の交響曲。 歌曲集「さすらう若人の歌」からの引用。 凱旋の行進曲を思わせる終楽章の盛り上がり。
京響の定期演奏会でも、たびたび取り上げられる作品。常任指揮者の広上淳一さんを始め、記憶に残る数々の名演。

びわ湖ホール芸術監督14年目の沼尻竜典さん。 京響とのコンビでは、「指環」全4作の上演など、輝かしい実績。
オケと指揮者が積み上げてきた、揺るぎのない信頼関係、絆を十分に感じさせるパフォーマンス。 高いクオリティ。

京響は、圧倒的なフル・オーケストラの強奏はもち論のこと、どの楽器パートの組み合わせであっても美しい響き。
定期演奏会での広上さん、オペラでの沼尻さん、京響の躍進、充実ぶりは、この両輪の尽力の賜物といってもいい。



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第25回 京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート

2021-09-13 16:28:08 | kyokyo
2021年9月12日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 大友 直人 / 独奏 : 宮田 大(チェロ)、冨田 一樹(オルガン)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団


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● すぎやまこういち : 序奏 MIYAKO(2016)
2016年の「第20回 京都の秋 音楽祭」を記念しての委嘱作品。 初演時も、実際、この会場で聴いています。
すぎやまさんは、ゲーム音楽の分野で人気を誇る作曲家。 自らもオーケストラを指揮、精力的な音楽活動を展開。

● サン=サーンス : 交響詩「オンファールの糸車」作品31
タイトルのオンファールとは、ギリシャ神話に登場する小アジアの女王の名。 糸車は、糸を紡ぐ「機械」のこと。
糸車がくるくると回転する様子をイメージさせる曲想が随所に現れ、全体的にコミカルで愛らしい印象を与えます。

● サン=サーンス : チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33
独奏の宮田大さん、京響の演奏会でお聴きするのは、これが3回目。 今や、日本を代表するチェリストのお一人。
前回は、2015年のニューイヤー。 奇才、F・グルダのチェロ協奏曲。 現代的なアプローチと卓越した技術力。

先鋭的でテクニカルな響きに耳目が惹き付けられた前回に比べ、今回は王道を行くかの様なオーソドックスな演奏。
叙情豊かに、美しい音色で旋律を歌い、聴衆を魅了。 アンコールの「白鳥」は無伴奏で、静謐な美しさが満ちる。

指揮の大友直人さんは、現在は京響の桂冠指揮者というポスト。 端正でスタイリッシュ、紳士的な立ち居振る舞い。
自らがリードしていくというより、若い独奏者に寄り添うようなサポートぶり。 京響も清澄なアンサンブルで対応。

● サン=サーンス : 交響曲第3番 ハ短調 作品78「オルガン付き」
京都コンサートホールには、国内有数の規模を誇るパイプオルガンが設置されています。 そのおかげを持ちまして。
このサン=サーンスの名曲を聴けるのは、これが3回目。 広上淳一さん、小林研一郎さん、そして、大友直人さん。

今回の演奏で特に印象的だったのは、オーケストラとオルガンのバランスが絶妙だったこと。 巧みなコントロール。
また、各声部をくっきりと描き出すと共に、テンポの動かし方、強弱の付け方にもメリハリが効いていて、大盛況。

前回登場のドヴォルザークの第8番のときにも感じましたが、時として、イメージ以上の熱演を披露する大友さん。
サッカーなどで例えると「アグレッシブに攻めた」演奏。 それでも、品位と節度を保ちつつ。 さすがの指揮ぶり。

            *  *  *  *  *

今年は、サン=サーンス(1835~1921)の没後100年というメモリアルイヤーにちなんでのプログラム。
8月定期は、オール・モーツァルト。 そして、9月定期は、オール・ワーグナー。 企画ものの演奏会が続きます。



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