まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第558回 定期演奏会

2012-06-11 21:19:37 | kyokyo

2012年6月10日(日) 午後2時30分 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : アンドリス・ポーガ / 独奏 : ジャン=エフラム・バウゼ(ピアノ)

            *  *  *  *  *

● ウェーバー : 歌劇「魔弾の射手」序曲 作品.77
これから演じられる歌劇の予告編、ダイジェスト版という点から言えば、最も序曲らしい序曲。
ドラマの中から、「エエとこどり」した魅惑的な旋律の数々。 期待感、わくわく感いっぱい。

私たちをヨーロッパの深い森の中へと誘ってくれるようなホルンの響き。 あっ、そう言えば!
思わず閃いたのが、男声合唱による「狩人の合唱」。 この曲も「魔弾の射手」の有名曲です。

後ろの席から、「なかなかレベルが高い」との声。 「京響は、これくらい当たり前!」と私。
ポーガさんの明瞭な指揮。 呼応する弦楽器の弓の運びも一体感があり、視覚的にも美しい。

            *  *  *  *  *

● ラヴェル : ピアノ協奏曲 ト長調
前半の2曲目はイメージがガラリと一変して、溢れるような色彩感が魅力のフランスもの。
ポーガさんのレパートリーの広さ、柔軟性、対応力の高さを披瀝するような選曲になりました。

自由奔放・変幻自在の曲想を簡単に弾きこなしてしまう、バウゼさんの圧倒的なテクニック。
プログラム・ノートにもあるように、随所に感じさせるジャズやブルース由来のエッセンス。

華やかに彩られたピアノに呼応するオーケストラの各パートも、見事な協奏と言えるもの。
エンターテイメント性があり、アクロバティックな技巧を要する部分も、そつのない対応ぶり。

            *  *  *  *  *

● ブラームス : 交響曲第1番 ハ短調 作品.68
先日お亡くなりになった吉田秀和さんなら、果たしてどんな評論を残されたのでしょうか?
言葉にしてしまうと少々色褪せて感じてしまうくらい、実に堂々としたブラームスでした。

第4楽章の主題の提示部で「泣こう!」と思っていた私ですが、ちょっと肩すかしの状態。
むしろ、第2楽章での木管楽器が旋律をリレーしていく、息を飲むような美しさに「涙」。

フルート首席の清水信貴さんは本当に素晴らしく、楽器同様、キラリと光り輝いていました。
ウェーバー同様、4本のホルン隊も実に安定感がありました。 素晴らしい演奏会に大満足!

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高樹のぶ子 「マルセル」を読んで

2012-06-05 17:49:58 | book

1968年の暮れ、京都国立近代美術館で発生したロートレック作の「マルセル」盗難事件。
時効成立後、「マルセル」は発見されたものの、今なお犯人は見つかっていない未解決事件。

ベテランの純文学作家、恋愛小説家として定評の高い著者が、初めて挑んだミステリー小説。
話題性と共に、小説の主な舞台が地元の京都という親近感とリアリティーにも惹かれます。

            *  *  *  *  *

図らずも父と同じ新聞記者の道を選んだ千晶。 父の遺品の中に当時の取材ノートを発見。
生前の父との間に生じた微妙な距離感を埋めるように、事件の核心に迫ろうとする千晶。

物語は千晶の出生の秘密、若くして亡くなったとされている母親の存在とも絡み合って…。
運命的、必然的な糸に手繰り寄せられるように、千晶の周りに出現するいわく有り気な人々。

            *  *  *  *  *

利害・思惑が複雑に錯綜する人間関係、飛び交う投機的なマネー、嫉みや妬みの世界。
画壇のダーティーな部分を垣間見せつつ、物語の終盤は芸術の都「パリ」が舞台となります。

絵画の世界における、オリジナルとコピー(偽物)の問題を提起し、迫真のクライマックスへ。
国際的犯罪組織の存在を浮き彫りにしながら、「マルセル」盗難事件の謎が解き明されます。

            *  *  *  *  *

実在の絵画盗難事件をベースにした「謎解き」に、この作品の魅力が集約されていますが、
千晶による親探しの過程を一緒になって歩んでいくのも、貴重な「読書体験」となります。

帯には「恋愛小説の名手が贈る芳醇な絵画ミステリ!」と、魅惑的な言葉が書かれています。
さすがに「名手」と謳われる著者だけあって、千晶の恋の行方もドキドキ感たっぷりです。

Maruseru

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