まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第583回定期演奏会

2014-09-29 19:58:41 | kyokyo

2014年9月27日(土) 14:30開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : ドミトリー・リス / 独奏 : 川久保 賜紀(ヴァイオリン) / 京都市交響楽団

            *  *  *  *  *

● ブラームス : 悲劇的序曲 作品.81
日本の「私小説」風の感傷的な悲しみよりは、大きなスケール感。 演奏会用の大序曲です。
やはり、オペラ的というか演劇的というか、「悲劇」のヒーロー(ヒロイン)にこそ相応しい感じ。

指揮者のドミトリー・リスさん。 しなやかな身のこなしと、きびきびとした棒さばきが印象的。
楽団員をその気にさせて、ぐいぐいとドライブしていくタイプ。 広上さんと共通したイメージ。

ブラームス特有の(ドイツ的な)深沈とした響きというよりは、もっと荒々しく開放的な音作り。
ウラルという語感から受けるイメージ。 見渡すかぎり荒涼たるユーラシアの大平原が広がる。

● チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品.35
大味な印象が拭えなかったブラームスに比べ、さすがに、お国ものはお得意のレパートリー。
微妙なニュアンスに富んだ表情、テンポの動かし方。 手慣れた「職人技」を見るようです。

第1楽章の終盤に、川久保賜紀さんのヴァイオリンの弦が切れてしまうというアクシデント!
楽章の合間に修繕のため数分間の中座。 それでも、破綻を感じさせない堂々とした演奏。

主席奏者の方が外れているパートもありましたが、その分、層の厚さを十分に感じました。
熾烈なポスト争いはない?にしても、お互いの切磋琢磨が相乗効果を生んでいるようです。

● ストラヴィンスキー : バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)
今回採り上げられるのはパリ初演で好評を博した、ピアノが活躍する1911年版になります。
作曲者の意向やステージ編成の都合上、現在では1947年の改訂版が主流だそうです。

物語には、生命を吹き込まれたペトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人の三体の人形が登場。
カーニバルの熱狂の中、ペトルーシュカがムーア人に惨殺されるという悲劇が起こります。

この辺りで殺害されたんじゃないかなというところでは、寒々とした戦慄が走るようでした。
ほら、あそこに! えっ、どこ? 恨めしそうなペトルーシュカの亡霊は、どこに現れたのか?

情動的で、色彩感あふれる管弦楽法。 革新的な要素とロシア伝統音楽との見事な融合。
2月定期の「春の祭典」に負けず劣らず、ストラヴィンスキーの音楽世界を堪能できました。

            *  *  *  *  *

視覚障害者の方でも、音楽会を楽しめる社会を。 日本盲導犬協会のCMはご存知ですか?
今回、京都コンサートホールにもご来場。 盲導犬、お利口で、とてもよく訓練されていました。

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第18回京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート

2014-09-15 15:26:00 | kyokyo

2014年9月14日(日)14:00開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 広上 淳一 / ピアノ : 佐藤 彦大 / 管弦楽 : 京都市交響楽団

            *  *  *  *  *

● ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝」
ピアノの佐藤彦大(さとうひろお)さんは東京音楽大学大学院卒業で、広上先生の教え子。
彼は学生の頃から知っているので、今日の協演はちょっとドキドキしたと、広上さんの感想。

先月の「京響プレミアム」では、同じく東京音楽大学卒業の作曲家・菅野祐悟さんとの協演。
将来性ある若手音楽家にステージの機会を提供して、大きく育てていきたいという熱い思い。

京響による「皇帝」の演奏は、仲道郁代さんのピアノ、指揮は山田和樹さんで聴いています。
女性らしい繊細さを感じさせる演奏でしたが、この曲には男性ピアニストが似合うようです。

佐藤さんに、巨匠風の威厳、風格、円熟味を期待するのは、無理な要求ではありましたが、
その分、テンポ感のある、瑞々しく溌剌とした「若き青年皇帝」を楽しむことができました。

            *  *  *  *  *

● ベートーヴェン : 交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」
広上=京響のコンビでベートーヴェンの「運命」を聴くのは、今回で通算3回目になります。
毎回、新しい「試み」にチャレンジされているようで、聴く度に新しい発見と感動があります。

クラシック通を自認する人の中には、「通俗曲」とか「耳タコ」とか、揶揄する人もいますが、
こういう耳に慣れ親しんだ名曲こそ、指揮者とオーケストラの力量を測る上では格好の選曲。

就任から3期7年目のシーズン、指揮者とオーケストラの幸福な関係を実証するかのように、
京響の演奏力と対応力の向上と相まって、今回の「運命」も燃焼度の高い、充実した演奏。

正直なところ、家にあるクライバー=ウィーンPOの演奏と比べても、遜色のない出来栄え。
来シーズンの欧州公演に思いを馳せながら、ベートーヴェンの崇高な音楽を堪能しました。

            *  *  *  *  *

演奏後の広上さんのスピーチでは、音楽祭の時期に公演を行うモントリオール響の話題。
市民の熱烈な応援により、世界的オーケストラへと成長した軌跡は、京響も目指すところ。

2014aki

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