まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

生誕100年 佐藤太清展

2014-02-04 20:57:40 | art

2013年12月22日(日)~2014年2月9日(日) @京都文化博物館
「煌めきの瞬間を永遠に」。 福知山市に生まれた文化勲章受賞者。

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京都府福知山市出身の日本画家佐藤太清(1913~2004年)の生誕100年記念展。
佐藤太清は平成4年(1992)には文化勲章を受章、日本画壇を代表する作家のお一人。

展覧会のポスターにも使われている代表作「雪つばき」。 ふんわりとした雪の質感が見事!
雪や外気の「冷たさ」というよりも、動植物を優しく包み込む「温かさ」が伝わってきます。

「雪の名手」と言われた太清。 同じく雪景色を描いた「東大寺暮雪」も、印象深い作品です。
黒々とした大仏殿を背景に、しんしんと音もなく降りしきる雪。 奥にひとつ、灯明の灯り。

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だんだん暮れてゆく春景色の中、芳香を放つ梅の古木。 深山の緑の中、咲き誇る一本の桜。
華やかさと力強さの中にも、どこかしら、太清自身の宿命的な孤独が漂っているようです。

突然の夕立に見舞われるサギたちを描いた「風騒」。 大空を力強く飛翔する「行雲帰鳥」。
伝統的な「花鳥風月」画に留まらない、一瞬の煌めき、ドラマチックな要素を感じさせます。

静かな池の面に映る塔の影と、ひらひらと舞うチョウ。 この世のものとは思われない美しさ。
旅先の羽黒山を描いた「昏」という作品(1974年)も、印象に残る作品のひとつでした。

Yukitsubaki

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ターナー展 英国最高の風景画家

2014-01-29 11:54:24 | art

ターナー展 英国最高の風景画家 「その風景画には物語がある」。
2014年1月11日(土)~4月6日(日) @神戸市立博物館

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イギリス風景画・最高の巨匠、J・M・W・ターナー(1775~1851年)の大回顧展。
風景画という分野を確固たる地位にまで高めた、一人の天才画家の画業を振り返る展覧会。

この展覧会に行ってみようと思い立ったのは、CDの表紙に作品が使われていたからです。
後期の海景画だと思われますが、今回の展示作品の中には含まれていませんでした。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」の一風景を想起させるような、崇高な自然を描いた作品。
画面いっぱいに散乱する光を描いた「レグルス」。 厳粛な儀式を見る「平和‐水葬」など。

ポスターに使われているのは、「チャイルド・ハロルドの巡礼 ‐イタリア」という代表作。
建造物や地形はぼんやりとした固まりとして描かれ、陰影は独特な味わいを帯びています。

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風景画ばかりだと絵はがきを見ているようで面白くないのでは? と思われるかもしれません。
しかし、ターナーの作品にはドラマ性があります。 その現場に居合わせたような臨場感が!

Turner_2

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特別展 「平山郁夫 悠久のシルクロード」

2013-04-27 14:02:15 | art

特別展 「平山郁夫 悠久のシルクロード」
2013年4月20日(土)~6月30日(日) @龍谷ミュージアム

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● 釈迦の生涯 「受胎霊夢」から「入涅槃幻想」まで
第1章は平山作品の原点とも言うべき、仏教の源流を幻想的に表現した作品群が並びます。
おぼろげな輪郭、とけあう色彩。 暗闇の中、黄金のオーラをまとい浮かび上がる尊いお姿。

キリスト教絵画の「受胎告知」とは異なる、静かなる気品、慈しみをたたえた「受胎霊夢」。
釈迦の入滅による深い悲しみ、嘆きが胸を打つ「入涅槃幻想」。 まるで荘厳な儀式のようだ。 

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● シルクロードから日本へ
朝日を浴びてシルクロードを行くキャラバン。 同じく月光に照らされながら進むキャラバン。
朝と夜、進む方角の違いはあれど同じもの。 隊列から全員の無事を確認して思わず安堵。

TVのドキュメンタリーで拝見した平山さん。 ヤクの背にしがみつきながら進む険しい山道。
峠の向こうには「須弥山」と見紛う秀麗な山々。 パミール高原を行く玄奘三蔵の姿とダブる。

隣りどうしに並べられた「バーミアンの大石仏」描いた二つの作品。 破壊される前と後の姿。
人類の愚行に対する怒りと悲しみ。 同時に、それらをも受け入れてしまう偉大な「仏」の力。

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● ガンダーラ美術と東西文化の融合
インドで誕生した仏教がギリシャ芸術の影響を受けて、ガンダーラの地で花開いた仏教文化。
日本に仏教が伝わる数百年も前、長髪をなびかせ、彫りの深い西洋風の顔立ちをした仏陀。

仏たちはゆっくりでも確かな足取りで、シルクロードを東へと向う。 そして、海を渡り日本へ。
幾多の民族の祈りを昇華させながら遥かなる道を歩んで来た、その足跡に思いを馳せます。

異質な文化が出会い、せめぎ合い、融け合う。 新たな文明が誕生する壮大な歴史のドラマ。
平山さんが文化遺産保護活動中に収集された貴重なコレクションが、雄弁に語りかけます。

Chirashi_2

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イリヤ・レーピン 「皇女ソフィア」

2013-03-09 18:48:46 | art

国立トレチャコフ美術館(ロシア・モスクワ)蔵 「レーピン展」
2013年2月16日(土)~3月30日(土) @姫路市立美術館 企画展示室

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皇位継承を巡る争いに敗れたソフィアは、義弟ピョートルにより修道院の奥深くに幽閉される。
このシーンは、ソフィアを尼にするよう命令を受けた将兵が扉を開けた瞬間をとらえたもの。

長年の幽閉生活にもかかわらず衰えを知らない闘争心、圧倒的存在感と王者としての風格。
怯えた目つきでこちらを窺う小柄な侍女と比べると、よりいっそう際立つ彼女の強烈な個性。

部屋右奥の窓外には、親ソフィア派の銃兵隊長の死体が見せしめのために吊るされている。
前身から溢れんばかりの憤怒の情の背後には、凍りつくような恐怖・絶望感も読み取れます。

            *  *  *  *  *

私たちをドラマチックな歴史の一場面の目撃者のように思わせてしまう、見事なまでの画力。
ロシア歴史画の傑作と共に、家族の日常を描いた微笑ましい作品も印象的な展覧会でした。

Sophia

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山口華楊 展 YAMAGUCHI kayo

2012-11-07 21:59:44 | art

2012年11月2日(金)~ 12月16日(日) @京都国立近代美術館
日本画家・山口華楊(1890~1984)の初期から晩年に至る作品、約80点を出展。

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華楊さんは日本画の伝統をくみながらも、開明的な眼差しで新時代の動物画を開拓した人。
会場に入ると、悠然と横たわるライオンが迎えてくれます。 「百獣の王」に相応しい気高さ。

次の展示スペースには、身体中にエネルギーを漲らせた「耕牛」。 存在感に圧倒されます。
たぶん親子であろう動物たちの作品には、そこはかとない情愛・優しさが満ち溢れています。

展覧会のパンフレットの表紙を飾った「黒豹」の、大胆かつ斬新な構図が印象に残ります。
猫好きの人にはたまらない「青柿」と「秋晴」の二作品。 黒猫の視線から目を離せません。

他にも、トラ、サル、カラスなど、描かれている動物はどれも穏やかで親しみを感じます。
植物や木立ちを描いた作品にも、よく見れば、蝶が舞っていたり、小鳥がとまっていたり。

Kayou

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