まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第606回定期演奏会

2016-10-09 13:03:06 | kyokyo
2016年10月7日(金)午後19:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : ラドミル・エリシュカ / 管弦楽 : 京都市交響楽団 / コンサートマスター : 山口 裕之


            *  *  *  *  *

● スメタナ : 「わが祖国」から、交響詩「モルダウ」
これまでに幾度となく演奏されてきた名曲ですが、初めて聴くような新鮮な「響き」が随所にありました。
曲のもつ描写性やストーリー性も巧みに表現されており、聴かせどころいっぱいの魅力的な演奏でした。

85歳のご高齢とは思えない、エリシュカさんの瑞々しく、生き生きとした指揮ぶりにも感銘を受けました。
「神は細部に宿る」という名言がありますが、細部にまで配慮の行き届いた「職人技」を見るようでした。

作曲当時、スメタナの耳は全く聞こえなくなっていたらしい。 総譜には、「完全な失聴者になって」の記載。
楽譜と頭の中だけでオーケストラを鳴らし、作られたという経緯を思うと、思わず涙がこみ上げてきました。

● ドヴォルザーク : 交響的変奏曲 作品.78
素朴で親しみやすい主題が、さまざまにスタイルを変えて演奏されていきます。 主題及び28の変奏曲。
冗長で退屈な印象を受けかねませんが、次にどんな変奏が登場するのやら、期待感の方が優りました。

民族風舞曲、ワルツ、スケルツォ、葬送行進曲など、指揮者とオーケストラの対応力が問われるところ。
京響には初客演のエリシュカさん。 限られた練習時間のことを考えると、十分納得の及第点レベルの演奏。

今回のコンサートマスターは、元NHK交響楽団の山口裕之さん。ソロ・パートも、落ち着いた美しい響き。
京響の弦楽アンサンブルも、「ああ、こんなに美しい音がでるんだ!」と、あらためて認識、評価した次第です。

● ドヴォルザーク : 交響曲第9番ホ短調「新世界から」 作品.95
CDの録音では機械的にコントロールされ、オーケストラの機能性を前面にうち出した演奏がある一方で、
今回の定期のように、ライヴならではの豊かな質感、情緒を堪能できるような名演奏に巡り合えることも!

かつての定期で聴いた、ラザレフさん、アシュケナージさんのチャイコフスキーに優るとも劣らない感動。
やはり、「お国もの」と言われる名曲は、その国を母国とする指揮者やオーケストラで聴いておくべし!

「家路」というタイトルで有名な、第2楽章のイングリッシュホルンの吹く主題の、何とも言えない美しさ!
夕刊に紹介記事を書かれていたコントラバス奏者の江刺豊さんも、恩師との共演に感慨深いことでしょう。

            *  *  *  *  *

エリシュカさんは、今回の来日が通算20回目だそう。 それでも、世界的には無名の存在であるらしい。
その分、誠実かつ真摯に積み上げてこられた日本との「絆」が、いっそう誇らしく思える演奏会となりました。


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第20回 京都の秋 音楽祭 開... | トップ | 京都市交響楽団 第607回定... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。