やっぱり酒池肉林かな・・・性的倒錯で、血みどろかな・・・と怯えながらも、あまりの良席につられて恐る恐る出かけた「カリギュラ」でしたが、残虐シーンというのはあんまりなく、安心して観られました。
小栗君の成長、すごいです。蜷川さんが小栗君のために探してきたというだけあると思いました。見違えるほどの滑舌の良さ。今まで、早口になるとちょっと舌がまわらないことがあるような感じがしましたが、みごとに歯切れのよい、皇帝のプライドを感じる台詞回しと気高い立ち居振る舞い。ハムレットに勝るとも劣らない膨大な台詞。絶望し、混乱し、無茶苦茶な論理でとんでもない悪逆非道の限りを尽くし、やがて破滅に向かって突っ走る若き皇帝カリギュラ。「あわれ彼女は娼婦」をご覧になった方には、あの結末の続編とも感じられる展開です。実際、小栗君もそんな感想をどこかで語っておられました。
小栗君は登場のシーンから圧倒的なオーラで劇場を支配してしまいました。息を飲む静寂。彼が次にどんな風に動くのか、全ての観客が、舞台の上の貴族が固唾を呑んで見つめているという異常なまでの緊張感。そして、噂どおり肌をかなり露出してボロ布をまとっただけの姿は、まるでギリシャ彫刻のよう。ダビデをもっと細くして手足を長くしたような美しさでした。ポスターも衝撃的でしたが、舞台のカリギュラの肉体は、もっと引き締まり、豹のようでした。
2幕の最初はちょっとやりすぎ?と思う登場のしかた。客席からは「ファンサービス??」と、失笑がもれるほどでした。まあ、あれとあれはなくていいかも。という演出もありました。
印象的だったのは、貴族ケレアを演じた長谷川博己さん。冷静で強い説得力を持つ理論で、カリギュラと対峙します。長谷川さんは文学座の方で、蜷川さんの「キッチン」や、岩松了さんの「シェイクスピア・ソナタ」でも、甘い雰囲気を持ちながらきりっとした台詞回しをする方でしたが、この役は本当にはまり役だと思いました。年長の貴族達も尻込みするカリギュラのやりたい放題に、毅然として立ち向かいます。
そしてカリギュラにひどい仕打ちをされながらも、彼を慕う詩人シピオン勝地涼くん。熱演でしたが、後半にはもっと良くなる予感が。「犬神家」の後だからそう思ってしまうのかも。。。
蜷川一家の名女形、月川さんもご出演ですが、今回は歌担当で、ちょっともったいない役です。カリギュラに陵辱される貴族の妻でもよかったかも。だらしないのは分別盛りの老貴族達。やられっぱなしの怯えっぱなし。まあ、その時代は皇帝の力は計り知れないものだったのかもしれませんが、最終的に決然と問題を解決したのは若いモンで、狂った皇帝も自分にはっきりとした物言いをするものしか信じていなかったような気がします。そして、最後に彼を愛するものは死によって愛を完結させ、狂った皇帝は死によって何かを完結させます。残ったものはただ空しさのみ。不条理。
私は、カミュは学生時代に読んだ「異邦人」一冊で挫折しましたが、何故カミュがカリギュラに固執したのか、ちょっとだけわかった気がしました。
小栗カリギュラは白くて長い皇帝の衣装がお似合いでしたが、ある場面ではそれがオヤジ狩りするヤンキーの「戦闘服」に見え、思わずびびった私でございました。
カーテンコールが終わって時計を見ると10時25分。休憩(20分)入れて約3時間25分というところでしょうか。息もつかず、眠気も感じず、迫力の観劇でございました。
『あわれ彼女は娼婦』の続編と聞くと、ますます気になります。
でも、2幕始まりのファンサービス?場面はもっと気になるところです(笑)
いいな~!お席もよくて・・
最近、「おしゃれイズム??(なんだっけ?)」で小栗くんがゲストで、本当は天パーで髪を決めるのはかなり大変、とか映画のエピソードや幼少のころのお話とか沢山みたばかりで・・明日の「情熱大陸」もたしか小栗君ですよね。
「カリギュラ」は蜷川さんがゲネプロのあとでか、小栗くんを絶賛していたのをTVでみて、「見たかったよ~~」とかなり落ち込みです・・
いいですよね~!小栗くん!私が初めてみた舞台は「偶然の音楽」でした。次は絶対、チケット確保頑張ります。
来週の後編にはカリギュラ映像も出そうですね。楽しみです。