Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ラジオに耳を傾けて

2006-01-14 | 生活
グリンデルヴァルトでシーズン初スキーをする。朝から薄暗闇に車を走らせる。途上に聞くラジオの見聞だけでも盛り沢山である。前夜から所謂アイスレインと言う、振る矢先から凍り付く雨が降って、その量や温度はそれ程でもなかったが、ニ三件の事故を目撃する。ラジオが伝えるには、ルートヴィヒスハーフェンからマンハイムへのライン河越えの橋の上で多数の事故が発生、最も被害が大きかったようである。橋の上は風が吹きすさび凍結しやすい。普段は温暖な地域でも気象条件が揃うと必ず事故の発生する幾つかの危険箇所が存在する。エルザスでの、トラックに突っ込んだ乗用車の死亡事故も関係があるのかどうか判らぬが、フランスの国境ではトラックの税関で何処も大渋滞していた。9.11の当日の風景を思い出す。

歌手のビルギッテ・ニルソンが既に亡くなっており、生まれ故郷で埋葬されていた事を伝える。インタヴューの録音を交えながらその芸と人となりを詳しく紹介している。ヴィーラント・ヴァーグナーとの協調上演こそがバイロイトでの本格的な活動の場であった事、多くの指揮者とはその歯に衣を着せぬ物言いで余り良い関係を築けなかった事、特にカラヤンには「心が籠って無い」と言われて「心はお金と一緒に金庫に締ってあるのじゃないの」と皮肉を言ってのけ、「この時ばかりはお互いに心から通じ合えた」と言う。それでも何故かこの人にはその声や喋り方に可愛いらしさがあり、お高く留まっている大プリマドンナとは違う親しさがあった。その芸も、中音域の不足やその最高音域の変ロ、ロ、ハ音程の歌い別けが出来る歌唱力の反面、中音域での弱さが指摘される。何れにせよ、フラグスタートとしか比較で出来ぬイゾルデで、またその比類の無いブリュンヒルデで歴史に残る歌唱であった。弱音不足は現代の指揮者にも言えることで、その音響を乗り越えるためには強い声こそが必要だったと言われる。

2006年1月12日は、現象学の哲学者レヴィナスの100回目の誕生日だそうで、SWR2では特番を流している。専門家のサイトによって幾らかは馴染みがあるお蔭で、凍結注意の走行中に係わらず、大変興味深く聞いた。ユダヤ教について語りあったお孫さんの回想インタヴュー等を「究極のヒューマニズム」の説明に交えている。こうして我々一般の聴視者にも大変印象に残り、その業績を認識させるには充分である。スイスのDRS2も誕生日を記念してトピックスとして流す。

フランスの音楽専門波MUSIQUEは、フランスでのアーノンクール指揮の実況録音でモーツァルトを流すがどれもそれほど特別なものではなく、そうこうしている内にスイス国境に辿り着いてしまう。最後までは聞けなかった。しかしその前の時間に流された古楽が、グレゴリオ聖歌との繋がりを詳しく説明していて、ドイツの放送局ではどうしてもここまで深く扱う余裕が無いので、これも興味深い。

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8 コメント

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初スキー (ちょこばす)
2006-01-14 18:46:59
今年初のスキーはいかがでしたか?

ゲレンデから見る風景も、日本とはまた違う様子なのでしょう。



私の研究室では、常時FMが流れています。

電波状況が良くなくて、ノイズがかなり入るのですが。。。

テレビはほとんど見ないので何とも言えませんが、

ラジオからの情報はなかなか面白いものが多い気がします。
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文化放送波 (pfaelzerwein)
2006-01-14 19:55:00
足の筋肉痛と疲れを癒しつつ、スキーやスキー場についても改めて書かせて頂きます。



上の写真の陰になっている壁がアイガーの北壁で、その下の疎らに少し光が入っている所もピステになっています。更に右に行くとアイガーの北西壁と西壁の間の尾根が終わる、写真の右端の光っているところもピステです。更に手前は殆んどピステになっています。



ラジオの文化放送波は、音楽の多少や種類に係わらず、聴視率とは無関係にあるべきものと思います。勿論、一人でも多くの人の耳に到達する事は大切ですが。
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monsieur_taupe@yahoo.co.jp (Flamand@擬藤岡屋日記)
2006-01-14 23:09:28
はじめまして。



弊blogにコメントを頂戴し、ありがとうございました。



未だ全てを拝見してはおりませんが、極めて充実した内容の記事を書かれておられ、これから度々お邪魔させて頂き勉強させていただきます。



今後もよろしくお願い申し上げます。



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Unknown (murakami)
2006-01-14 23:11:11
こんにちは。拙ブログをあげていただき恐縮です。

レヴィナスについての情報、ありがとうございます。聴きたかったです。フランスでしたらFrance Cultureが似ているかと思いますが、ヨーロッパのラジオ局は本当に質が高いですよね。教えていただいた番組についてイスラエルのレヴィナス研究所の方にもお知らせしてみます。



僕はヴァグナーはあまり聴かないのですが、ニルソンもフラグスタートも今では考えられない存在感のある声ですね。
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ラジオ (やいっち)
2006-01-15 13:49:53
シーズン初スキー!

小生が最後にスキーをやってから十数年。ゲレンデを滑る感覚が懐かしい。

その前に初めてゲレンデを前にした時のどきどき感が今も鮮烈。

ラジオの内容がこちらとはまるで違うようですね。仕事柄ラジオに親しむ時間の長い小生、結果的にNHK中心になってしまう。

断片的にしか聴けないけど、得た情報(幾つかのキーワード)をネットで検索して補強する。

結構、ネタやヒントを戴いてます。

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シュトラウスとか、レヴィナスとか、エーコとか (pfaelzerwein)
2006-01-15 19:29:49
Flamand@擬藤岡屋日記さん、ニルソンとリザネックの「影の無い女」のデッカの録音は絶えず気になっていたのですが未だに聴いておりません。確かにこの二組の男女の他方への投影が面白いので、その点から改めてこの楽劇に興味を持ちました。



こちらこそ宜しくお願い致します。







murakamiさん、こちらこそ「著書のタイトル」等を何時も拝見しているお陰で、興味を持つ事が出来ました。リンクのマニュスクリプトを再度読んでみました。



http://db.swr.de/upload/manuskriptdienst/wissen/wi20051221_3477.rtf



お孫さんのDavid Hansel氏は、エルサレムとパリで物理教授とかで、各地での記念行事を企画されていると言う事です。Bernhard Taureck氏の説明も理解の助けになります。その他「面の比喩」だけでなく、英米の倫理との対照など何処までが的を得た考察か判りませんが、お孫さんの言うように現象学分野以外での影響も一括して示されると、一般の関心は随分と高まりそうです。



見落としているかもしれませんが、最も詳しい筈のFAZの新しい記事が見付からない反面、アレマン地方の放送局がこうして放送しているのも珍しい事です。独仏文化TV「ARTE」の動向も興味あります。



CultureもMUSIQUE同様に面白そうなテーマに気が付けば!聞くようにしています。文化放送局は、どれ程の人が興味を持つか持たないかは別に(今回の切り口ならば部分的に興味を持つ子供もいるでしょう)、流す事に意味がありそうです。知る可能性を開いて措くと言うか。シラー、ヴァーグナー、ハイデッカー、レヴィナスと連想ゲームを楽しむ素地を準備してくれますね。







やいっちさん、私も自宅でラジオを付ける事は少ないので、車に乗ると必ず興味ある情報に巡り合えます。その面白さは、ウムベルト・エーコもラジオの音楽プロデュサーであった事でも理解出来ます。垂れ流しされるのが良いです。ネットと組み合わせると、ラジオ情報は価値ありますね。



独の場合は各地方放送局が文化波を持っているので、これに関しては全体量で仏を凌いでいるかもしれません。近視眼的な経済効率とは相反するもので、こちらでも頻繁に裁判沙汰になっていて状況は厳しいですが、メディアとしては最も将来的にも期待しています。



十数年前のスキーとその後のカーヴィンは大分変わりました。容易に手軽になりました。またスキー編は改めて。

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レヴィナスの番組 (murakami)
2006-01-15 22:14:27
シノプシスを斜め読みですが拝見してみました。丁寧に生涯をたどっていますね。Cahiers d'etudes levinassiennesの編集者に訊いたところFrance Cultureでも一週間の間特番を組んだそうなのでヨーロッパではすっかり大哲学者なのですね(研究者の内輪の世界にいると社会での評価がなかなか見えにくいです)。亡くなったときには、ヨーロッパのメディアでも一月前のドゥルーズの死の方が大きな扱いでしたが。
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les Archives (pfaelzerwein)
2006-01-16 03:10:32
番組情報が残っていましたので、リンクを貼って置きます。ディスカッションが面白そうです。



http://www.radiofrance.fr/chaines/france-culture2/dossiers/2005/levinas/





素晴らしいアーカイヴも生きていました。



http://www.radiofrance.fr/chaines/france-culture2/dossiers/2005/levinas/emissions.php





écouter:



-Emmanuel Levinas (1/5)

Emission du 08 Août 2005



http://www.radiofrance.fr/listen.php?pnm=pnm://son.radio-france.fr/chaines/france-culture/dossiers/2005/levinas/thema_archives20050808.rm



-Emmanuel Levinas (2/5)

Emission du 09 Août 2005



http://www.radiofrance.fr/listen.php?pnm=pnm://son.radio-france.fr/chaines/france-culture/dossiers/2005/levinas/thema_archives20050809.rm



-Emmanuel Levinas (3/5)

Emission du 10 Août 2005



http://www.radiofrance.fr/listen.php?pnm=pnm://son.radio-france.fr/chaines/france-culture/dossiers/2005/levinas/thema_archives20050810.rm



-Emmanuel Levinas (4/5)

Emission du 11 Août 2005



http://www.radiofrance.fr/listen.php?pnm=pnm://son.radio-france.fr/chaines/france-culture/dossiers/2005/levinas/thema_archives20050811.rm



-Emmanuel Levinas (5/5)

Emission du 12 Août 2005



http://www.radiofrance.fr/listen.php?pnm=pnm://son.radio-france.fr/chaines/france-culture/dossiers/2005/levinas/thema_archives20050812.rm
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