Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

引き継がれるとても重い遺産

2011-09-14 | マスメディア批評
福島の六ヶ月を迎えたFAZの記事の一つである。科学技術的観点から現象を纏めてある。

先ずは大気中に放たれた総放射線量から、チェルノブイリと比較してセシウム137で六分の一、ヨウ素131においては十分の一として、最初の数週間を総計している。そのセシウムのうち五分の一が陸地に落下していて、その他は海上への落下としていて不幸中の幸いとしている。結局3月15日から21日の陸へと吹いた風向きによる汚染であり、それが東京を直撃していたならば状況は全く変わっていただろうとしている。

その結果もたらされた汚染は、チェルノブイリの150KMに亘っての強い汚染地域に相当するのは、東北方向へと広がった僅か幅10KMほどの40KMの長い汚染地域として、IAEA提供の汚染地図を提示する。つまり20KM圏以内の僅か八万五千の避難者を出したような規模で広がる地域と、チェルノブイリにおいての三十三万六千人の避難者出した地域とまた逃げ遅れた七百万人の居住地域に相当する中長期的に居住不可能な汚染地域が相当する。

その汚染地域の広がり方の差異は、原子力炉のタイプ以上に当時は標準であった格納容器に包まれていなかった「むき出しの圧力容器の破裂だ」としていて、少なくとも福島の炉は格納容器の中に入っていたことが幸いしていると技術的解析を放射能防護協会理事のロルフ・ミヒェルは試みる。つまり、格納容器が無ければ大量のプルトニウムとストロンティウムが飛び散って、十キロ以内圏の放射線量は全く異なっていただろうとする。

福島の場合は、格納容器の存在に加え幸いにも核反応の暴走も無かったことから、問題となるのはセシウムだけで、先ずは30年間の汚染を考えればよいとなっている。そこで、どうしても浮かび上がるのが、原子炉自体の現況であり、ただただ確実なのは、第一号機と三号機で完全にメルトダウンしていることだけで、そうなると1千℃を超える熱で格納容器が抉られていて、そこに穴が開いて地面にメルトアウトしているかどうかは釈然としないとしている。原子炉の専門家であるカールスルーへの研究所のヨハヒム・クネーベルは、恐らくそうした状況は起きていないと予測する。その理由は、もしそのような状況となっていたならば地下水の甚だしい汚染が計測されている筈だとする。つまり、その場合は、最初の時点で溜まっていた水の量が千度の熱を冷やすに十分なだけあったと言う結論になる。

これは、東電などが説明しているメルトダウンと地震からの経過に反していて、改めて東電らの説明や技術的な解析への疑惑の念が強く沸き起こる。そうなると京大の小出氏が語るように万が一の水蒸気爆発の危険が今も残っているということになるのではないだろうか。

さて汚染水の話題となると、これまた小出氏が漏らしているように、今も海へと汚染水が流れ続けているのは明らかとしている。しかしそれは放射線としての影響は少ないと、海岸線の強い潮流の影響で広く薄められているからとミヒェル氏は語る。しかしそれに反して、淡水魚への影響は、野菜やお茶同様に、憂慮すべきだとしている。

もちろん消費されてしまった牛肉問題は、今までの最大のスキャンダルであったが、菅前首相の後任者である野田氏にとっても、保安員のやらせや原子力むらの政党への献金などでの信用の失墜を回復するのは容易ではなく、日本の社会が求めているのは核汚染の軽減でしかないとしている。

つまり、実際の放射能がどれぐらい強く、それが健康被害を齎すかどうかを明白にすることであると言明している。先の統合会見においても惚けたことを政治家は発言するが、世界の誰もIAEAと合衆国政府を除いて、日本国民に知らされる情報以上の情報を教えてくれなどとは要求していない。世界の国が日本政府に要求しているのは日本の市民への正確な情報提供なのである。それは事故当初から一貫している情報先進国の姿勢である。

その代表的なものに福島における不十分なモニターリングデータが挙げられている。より地震被害の強かった岩手県においてのみ最初の数日の子供の被曝量が提供されていて、100ミリシーヴェルトを下回っていることから、チェルノブイリの何千件かの甲状腺がんの増加の資料を加味しても、明らかな発症率の増加は認められないだろうとする大変喜ばしい予想をミヒェル氏はしている。逆に福島での今後の発症率は予想できないと、国連の専門部会がその結果を纏める早くとも2013年までは疑心暗鬼の日々を多くの家庭が送らなければいけないのである。

そしてテプコがあれこれ策を巡らしている、事故を起こした原子炉の核燃料の処理は、即死を意味する10シーヴェルトを指すような強烈な放射能下においての格納容器を修理してからが前提であって、スリーマイル島の30トンの燃料体を細かく刻んで処理するのに五年以上掛かったことを考えれば、福島の100トン以上のそれは如何に条件が良くても遥かに長い期間が必要になるとしている。

環境への放射能漏れを防ぐために、地下水の流出防止に地下ダム、また既に着工されているが第一号機でカヴァーを被せるなどの方法がとられているが、その後はやはり四つの建屋全てを鉄筋コンクリートで包み込むことが必要になるとクネベル氏は予想する。そして、その中で気の長くなる解体作業が始まるというのだ。

チェルノブイリでは今日も3500人が解体作業に従事しているが、現在の福島における1200人ほどでは到底人員が足りないとしている。まさに小出氏の見解の如く、我々今生きている者が福島の最後を見ることは無いという「世代間にまたがる工事現場」の表題通りの見解なのである。



参照:
Eine Baustelle für Generationen, Robert Gast, FAZ vom 12.9.2011
細野補佐官のついた嘘 2011-06-08 | テクニック
核廃棄物の無毒化の錬金術 2011-06-24 | 数学・自然科学
真実に与しない東京の官僚 2011-08-15 | マスメディア批評

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