Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

聴覚では不可能な無理難題

2016-01-17 | 文化一般
外気温はそれほど摂氏四度ぐらいと低くはない。それでも篭り部屋で今季初めて暖房を最強にした。ヒーターは十分に機能している。それでも十分ではない。理由は分からないが、外の風が強いので、屋根裏部屋は冷える。それでも吹雪く様な雪にはなっていない。夕方時間があったので、走りに行こうかと思ったが、身体を壊しそうなので思い留まった。足元がずんずん冷えて来る。篭り部屋の窓は二枚の天窓しかないので、気密性にも問題が無いのだが、室温を計ると摂氏16度ぐらいである。ヒーターの空気抜きをすると18度まで上がって流石に暖かくなった。篭り部屋にして最初の冬の2010年は吹雪が入り込んできて、隙間から机の上を濡らしたことああった。あの冬は積雪が多く、早くから寒かった。

ミュンヘンからメールが入っていた。予想以上にミロスラフ・スロンカのオペラ「サウスポール」初演が大変なことになっている。新曲といっても新たに総譜台を作らねければいけないような大曲のようで、「グレの歌」にはアンサムブルの大きさでは及ばないが、各ヴァイオリンを別々に弾かす ― フラクタルな編成のようだ ― などで、それよりも10CMも長くなっているらしい。「ディ・ゾルダーテン」よりも複雑になり、殆ど劇場が指揮者により難しい課題を与えているような趣さえする。偉才、天才といっても人間であるから、無理難題を課すわけにはいかないのだが、我々もどうしても期待してしまうところが恐ろしい。

前振り情報を見ると、舞台装置にしても新たな枠まで工場で作り上げてしまうとは知らなかった。あれだけ大掛かりな常設舞台装置があっても、木枠のチャチナものでは駄目なようだ。正直マンハイムはおろかこれだけの大掛かりな作品は、予算だけ考えてもベルリンぐらいでしか上演不可能だろう。

それも「アラベラ」などを含む通常の上演の合間に総稽古が入るなど、我々そうした大劇場を知らない者からすると、その日程や準備、仕事ぶりなど想像を超える大規模舞台上演であることが分かる。そのような按配だから、通常の初演に比べても関連の催し物などが多い。

そして想定以上にドイツ山岳協会が関わっている。予備演奏会の一つは中之島にある山岳博物館で催されたり、スポンサーのBMWの風洞を使ったりしている。これだけ宣伝されていると、話題性も高く、券の売れ行きも良い筈だ。ミュンヘンのオペラでの初演はいつもこのようなイヴェントになっているのだろうが、どういった社会の関心を集めるかによってターゲットも違ってくるのだろう。

そして最終的には音楽的にも何らかの文化的な影響があるものでなければ報われない。台本は、二つの探検隊を外側から描くのではなく、二人の内面的な世界を描くということで、その楽器編成や複雑さとは裏腹に、音楽劇の形をとることになるようだ。英語の台本なので、どうしてもベンジャミン・ブリテンのオペラを思い出してしまう。但し、英国演劇のような台詞にはならずに、寧ろマドリガルのような形が多くなるのだろうか?二つの同時進行の音楽はホケットス状の形になるという。

歌手の準備のために、先ずピアノ譜が提供されたというのも面白い。それだけ管弦楽の書き込みに時間が掛かったということだろう。耳だけでは聞こえない編成で、ピアノ伴奏ではそのダイナミクスは再現不可能という。視覚でキューなどが分かる席で良かったようだ。リゲティの曲でもPのピアノが八個ぐらい重ねられている弱音があるが、奈落で求められると聞こえないのは当然だろう。



参照:
21世紀に生きている実感 2016-01-10 | 文化一般
八秒と長めの露光時間 2015-11-07 | 生活

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