Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

向上に相応しい動機付け

2006-02-14 | 雑感
オリンピックのアルペンスキー競技は、フランス・サヴォアとの国境いセストリエーで催されている。残念ながら男子滑降競技をTVライヴ観戦出来なかったが、フランス人の優勝は想定内での番狂わせであった。オーストリーのシュトロープが二連覇を注目されていたようだが、スイスのケルネンやノルウェーのベテランオールラウンダー、オーモットや米国のミラーなどの上位に立ったのはオーストリーのヴァルヒホファーとオーサヴォア出身のアントワン・デュネリアであった。

この競技での何時もの通り予想が外れるには理由がありそうで、あのマイヤーでさえフランス人に金メダルを譲っている。連戦のワールドカップの滑降競技でそれほど活躍しないでも、此処一番で勝つフランススキーの成果は、その西部アルプスの斜面の広大さから導かれた実力の現われと何時も思う。

今回の滑降コースで、有力選手がそれほどタイムが伸びなかった一方で、練習時から一人走り、本番で二位以下に一秒の差をつけたというのは尋常ではない。子供の時から高速で滑り慣れているとやはり違うのだろうか。その辺の感覚は、技術とか体力だけでない、底知れぬ強さに繋がるのだろう。猪谷千春選手はスタート地点でびびっていたと言うライヴァル金メダル選手の証言は、これを証明している。

女子の滑降コースで試走があって、転倒が続出した。議論されていたように、凍ったカーヴやハーフパイプ場のコースでトリッキーな作りが、あまり豪快さの無いコースを大変難しくしている様である。時速100キロメートルを越えての事故では、何人もの犠牲者が出ており、今回も一人は重傷でありそうだ。スキーだけでなく高速運動での女子選手の事故が目立つ。

年齢差はそれ以上に大きく、言われるところの「短い足」飛行隊の大スター原田の失格は、世界のメディアの折角の話題作りを潰したようだ。東ドイツの旧ライヴァル、ヴァイスフルックへのエールも空しく、オリンピックドラマのフィナーレを飾れなかった。この選手については、オーストリーのザンクト・アントンのスキー学校で同級であったフィンランドの16歳のスキー教師の娘から、この選手の「名誉挽回の心意気に感激した」と聞かされた事がある。雪国に育ち、雪に馴染んだ世界中の人達に通じる心理やスポーツドラマがあるのだろう。

そうかと思えば、ドイツのフィギアスケートの女性などは、「これで初めてのオリンピックの華やかな舞台で選手引退が出来た」と喜び、「今後は何よりも大事な商業科を学ぶ」と言う。「スポーツはそれほど重要ではないから」と聞いて、ドイツ・女子アルペンスキーの大スター、カチア・ザイチンガーを思い出した。あれ程の歴史的業績を残しながら、父親の工場の跡取りとしての義務を最優先させた見識には恐れ入る。また今回のフィギュアスケートの違うペアーなどは、ウクライナから遣って来てつい4週間前に国籍を取得したばかりで、コーチは東独のスパイ組織の方棒として現在訴追されている。

選手が全てを大舞台に賭けるのは当然だろうが、運動競技に於いて健康を失うのは間違っていないだろうか。結果を見ていると、金銭慾を動機付けとした人類の運動力の向上には限度があるようで、動機は尊い方が向上に相応しい。金銭慾の為の競技大会とするとオリンピックが一転して人類の最低の祭典のように映るから不思議である。ショートトラックのTV観戦に興奮した韓国人の雄叫びが女性の悲鳴と間違えられて通報されたとか、個人の金銭欲よりも性質の悪い動機付けも存在するのだろう。



参照:
何処へ向って滑り降りる [ アウトドーア・環境 ] / 2006-02-15
本当に一番大切なもの? [ 文学・思想 ] / 2006-02-04

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