Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

引渡されるネットの反映

2008-12-11 | 
日曜日に注文したCDが火曜日には届いた。ドイツェポストの民営化の問題は、今も生きている連邦国内のどこの地域にも同じように配達されなければいけない法律からして、なかなかそれを保つのは容易ではないこととして表面化する。

ワイン街道の中央部に当たるミッテルハールトは、マンハイムの集配センターから直接配送されるので、嘗ては集計地でもあった町の支局が閉じられて文具屋に委託業務になったとしても、変わったのは配達の時刻だけである。

一度漏らしたようになぜかこういうものを注文すると、それが届く日はてんてこ舞いで殆ど封を切る事が出来ない。こうしたものをネットで注文する時は暇な時でそのあとも暇なことが少ないと言うことだろう。

それでも、午後には封を切る事が出来て、用事をしながら音を流していたのだが、予想通りのCD特有の痩せた堅い音とテープのヒスノイズがあまり分からずに、デジタルマスターリングの時に少々手を加えたかなと思ったのだった。

あれやこれやと考えて散歩などから戻って来て、暗くなってからもう一度同じCDを鳴らすと、全く印象が異なり耳障りにならないヒスノイズの中に弱音が浮かび上がってきた。そしてなによりも、同時に音の減衰のクラスター状の表れては消える響きの期待していた和音の雲の繋がりが綺麗に浮き上がってくるのである。

二三曲流すとなるほど会場はザルツブルクのモーツァルテェイムらしいがセッションによって、そのときの空気によってまた曲目によって楽器を覘き込む近接マイクロフォンの位置が適確に調整されていてなかなか凝った録音になっている。またそれでいて楽器が良いのかペダリングのダンパー音などを巧く押さえてある。 

流し進むとどうしても気になる事がでてくる。一つは、演奏会においての経験で、一体何時その曲の演奏実践に接したのかと手元の資料の多さから探し出すのに苦労するのだ。資料のないものは音楽祭のデータべースなどを調べる事になる。

特に気になったのはソナタ二長調D850で、最近のプログラムには載っていないのだが兎に角聞いている。あれは何時の事だったかとなんとなく最近アンコールに弾かれた状況などを思い出すのである。

こうした記憶は、前後の繋がりさえ分かればありありと思い出すことができるが、さもないと十五年前の記憶と五年前の記憶が入れ替わることもありえる。特に十五年前の事を昨日の事のように思い出すととても不思議な気持ちになる。

芸術音楽のこうした体験は、「時は世に連れ」の流行音楽のそれとは全く異なり、特定の歴史的事象に結び付けられるものではなく、また個人的主観による体験でもない、文化的な事象として記憶されて想起される。

それ故に、ラジオ番組で行なわれるような録音の聞き比べもその事象を認識する事に役立つ。バイエルン放送協会のクラシック音楽専門波バイエルン4でのベックメッサーこと評論家マックス・ニッフェーラーの批評もだから歴史的な背景を説明している。

その中ではイ長調D959が扱われていて ― ピアニスト自らがこの古い録音の最終楽章のフローティングするカンタービレ旋律を録音の成功例として回想している ― 、 当時のシューベルト・ルネッサンスを導いたアルフレッド・ブレンデルの演奏実践をしてかなり歴史的な差異を示すばかりにそれが前面に出すぎているとしている。実際にあの70年代・80年代のプログラミングはその後お目に掛からなくなっていて、ハ短調D958などはどうも日本で一度遺作三曲を二日に渡って並べた70年代のプログラムでしか体験していない。

そのように、なるほど1970年代には作曲家ディーター・シュネーベルから後にはヴォルフガンク・リームなどへと影響を与えたシューベルト・リヴァイヴァルは、再びフィードバック的に再影響を与えた文化的な螺旋がそこに見られる。それは、文化的な体験が個人という主観によりものではない、― まるで主題の動機でもあるような ― 次から次へと引き渡されながら反映していく主観である事を示している。



参照:
生半可にいかない響き [ 音 ] / 2008-12-08
とても そこが離れ難い  [ 音 ] / 2008-11-28
Franz Schubert: Klaviersonate A-dur, D. 959 (Max Nyffeler, Bayerischer Rundfunk, Sendung vom 29. 5. 1999)
シューベルト ピアノソナタ 第16番イ短調 (日々雑録 または 魔法の竪琴)
シューベルト作曲、ピアノソナタ第16番 D.845 (yurikamomeの妄想的音楽鑑賞)

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