Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

実体感溢れるSACD再生

2015-01-06 | 
外付けハ-ドディスクと同時に届いたSACD「ルイージ指揮シュターツカペレドレスデン演奏リヒャルト・ショトラウス管弦楽曲集二枚組」をオフライン中に何回も鳴らした。読書中の本に対応したオペラなどと並行してである。最初はネットアクセスの作業をしながらなので十分に耳を傾けることも無く邪魔にさえなったが、その真価は徐々に評価出来るようになった。先ずは録音がとても良い。ソニーがある意味パイロット版のように制作したのだろう。今時珍しく大管弦楽団をルーカス教会で丁寧に録音している。CD一面を三日づつ掛けているので長くも短くも無い。マイクロフォンなどの情報はないが、必要不可欠のマルティマイクロフォンが見事に使われていて、残響も控えめながら十分な量があるので、人工のものは使っていないに違いない。とても自然な音場感が珍しい。

おかしなことに鳴らしているほどに音質が良くなってきたので、CDとは異なるSACDの回路のエイジングなどということがあるのだろうか?最初はあまりにも自然な鳴り方をするので、原版の音を知らない多くの人にとってはあまりその差異は気が付かないかと思ったが、鳴らしているうちに圧倒的にHiFi音響になってきたように感じだした。一週間近く鳴らしたことになる。これだけのふくよかさで開いてくると通常のオーディオファンも納得がいくかもしれない。それでも方向は飽く迄も自然にHiFiへの方向でありマイクロフォンが受け取った音に幾ら近づくかという話になる。それにしてもソロもテュッティーも素晴らしい鳴り方をする。最初はこの程度の差異では全く将来性がないかと落胆したが、ここまで鳴るようになれば徐々にではあっても市場は開ける可能性も見えて来る。

今回の録音では、特に二枚目の「ドン・キホーテ」では、独奏のチェロとヴィオラの楽器の基本振動から倍音成分までの差異がくっきりと分かって、その粒立ちがとても良い。SN比が優れているとしても、昔宣伝文句にあったような漆黒から音が湧き上がってくるわけではない。当然のことながら会場の雑音があり、そこから音が湧き上がってくるのではないのは当然なのである。それでも無指向性のメインマイクを結構高みに位置させているようで、あまり低い雑音はソロのマイクぐらいしか入ってこない様になっているようだ。会場の教会の音響特徴などもあるのだろうが、そうした雑音を避けるようなマイクロフォンセッティングになっているのかもしれない。そのためか実演でも会場によれば押さえつけがましいような重低音の癖が無くて、思わずスピーカーのウファーをプラスの方へと捻った。

それでも少々音量を上げても全く喧しく感じさせないのは、高音と重低音がとても上手にバランスがとれているからなのだろうか?それとも超高音に歪が少ないからなのだろうか?こうした経験は特に家庭用の装置ではあまり感じたことがない特徴であって、長いオーディオ経験の最初から考えればここにきて急激に雑音成分が減少して、喧しさを感じないHiFiが我が家にも実現したと言えるのかもしれない。これだけ大人しければ可成りの音量を上げれそうであるが、近所迷惑になるのでその実験はもう少し適当な音盤を試聴するまでは我慢しておこう。

正月明けのスーパーのレジに並ぶ前に雑誌を捲っていると、LP特集があった。そこには初心者向きプレーヤーなどが紹介されていて、本格的なブームであることが伺いしれた。それにしてもである。こうしたSACDを鳴らしても、CDの時のように中抜きの実体感の無い音と批判する人がいるのだろうか?なるほどCDの限界ははっきり存在したのも事実であるが、その判断をするためには可成りの装置などが前提となっていたことは間違いない。その証拠に私自身CDプレーヤーに高級機などは購入したことがないのである。つまり、幾ら金をかけてもCD自体のデジタル情報力が限られていたからである。そしてそこにはアナログの遊びの要素がなく、スタジオ仕様の商品も殆ど頭出しなどの機能が充実しているに過ぎなかったからである。しかし、こうしてSACDを鳴らすともはやアナログでこれだけ精緻なハーモニー感を表現することなどは不可能だと実感するのである。実際に同じマイクロフォンで、たとえアナログのミキサーを使ったとしてもその原音を聞けば、そのSACDとアナログ音との違いは明らかな筈だ。つまり音の実体がこのデジタル録音にはあるということにはならないか。



参照:
原音再生を意識させるCD 2014-08-08 | テクニック
年末年始のプローザ一抹 2015-01-11 | 文学・思想

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