反核運動が盛んであるが、やはり長期的には核融合の実用化に期待がかかる。マックスプランク研究所のヴァンデルシュタインプロジェクトも7Xと呼ばれる恒常型の試験炉が三年後には完成する。今までのプロジェクトの成果を踏まえて、さらに合衆国からの技術参画によって勢いがついてきている。核融合に必要な計測器以外にも、磁気場のための磁石もヘルムホルツ研究所などで準備されている。
7Xは、アクティヴ冷却装置が出来上がる2017年になって初めて三十分毎の恒常運転を始めるようだが、タービンなどの発電施設を持たない試験機である。南フランスにあるITERのトカマク型核融合機が500MWの発電のために僅か50MWのエネルギーでプラズマを加速して最低の経済性は確保することになる。
しかし、EU以外に六カ国も参加するそのITERのプロジェクトは政治的な問題を抱えていて2019年まで待たなければいけない状況以外に、ヴァンデルシュタインのステラレーター型とは異なり、間欠型の運用しか出来ないため恒常運転とはならない。
燃料は、リチウムと重水素で、一億度に加熱されて、核融合されたヘリウムに生じたエネルギーの二割方が重水素とトリチウムに受け渡される。原子力発電との差異は、ヘリウムは死の灰とならないことであり、いくらかプラズマによって放射能汚染された装置も80年から100年で再び「正常化」されるということである。要するに原子力発電のような「トイレの無いマンション」とはならないというのである。
さらに危険性も、八割方のエネルギーを得る中性子がブランケットに流れ出て、その運動エネルギーがヘリウムガスなどの冷却材を熱して、さらに中性子と共にリチウムを沸かすので、連続した中性子線の存在である。つまり、そのリチウム原子に中性子が数段に亘って捕らえられる工程が原子炉の設計の味噌となる。しかしその臨界を迎えても所謂連鎖反応を起こすことが無く、上の装置においてもいかに回すことが難しいかであって、そのために炉の形状の精巧さが要求されて、ごみや汚れを避けるヴァキューム掃除機型の灰取器でプラズマからヘリウムなどが分離される。ヴェンデシュタインの特徴はそのように計算機で厳密に計算された複雑な未来形状を精緻に製作するクラフトマンシップにもよるところが多いようでドイツ製の良さが出ることだろう。
今回、テネシーのオークリッジ研究所提出の水冷の掃除機は初期軌道の安定化を齎し、ニュージャージーのプリンストンプラズマ物理研究所から提供された磁場調整装置は、五つの新たなプラズマ軌道を提供することで、安定するまでの修正の必要が小さくなる。そしてそれを赤外線で計測する機器がニューメキシコのロスアラモス国立研究所から提供された。
研究段階を含めて実現化までは強大なプロジェクトであることは変わりなく、原発のような歴史を抱えていないとしても上ITERの例で見られるように国際競争の中でプロジェクトのマネージメントが難しいことには変わりない。しかし、所詮競争は必要であり、市場競争力が出てくるときは実用化は間近である。
1000メガワットの発電の2050年までの実用化へと、マックスプラントの予算枠150億円を含めて400億円の経費が計上されているが、ITERが一兆五千億円以上の予算であるので大分安上がりである。しかし再生可能エネルギーへの投資に比べるとやはりこの予算額は目立つ。
もちろんその可能性と共に核融合への反対の意見もあって、その最も代表例は、核融合技術が実用化される頃にはそのようなエネルギー消費はプロジェクトを執り行っている先進工業国社会にはもはや必要ないであろうとするものである。そしてその技術は所謂発展途上国で産業発展のために生かされるだろうというものである。もしそれが事実だとすれば、それはそれで国際的社会形成の経済的基盤となる訳で必ずしも否定されるものではないであろう。当然ながらCO2排出問題もこれで解決できるのである ― どこか原発の発展利用を謳った共産主義のユートピア思想を思い起こすかもしれないが。
参照:
Die Sonne vom Himmel holen, Ulrich Hnida, vom 16.8.2011,
Amerika heizt mit im Sonnenofen, Günter Paul, FAZ vom 3.8.2011
核融合へと舵を切るエネルギー政策 2010-02-02 | 女
再生不可能な科学的教養 2011-08-09 | 文化一般
潮流を正しい力に換えるには 2011-07-30 | テクニック
獅子のように強い心で 2011-07-08 | アウトドーア・環境
重要な歴史的証言となる事件 2011-05-01 | 雑感
勝手に風呂敷を広げる面白さ 2011-03-09 | BLOG研究
7Xは、アクティヴ冷却装置が出来上がる2017年になって初めて三十分毎の恒常運転を始めるようだが、タービンなどの発電施設を持たない試験機である。南フランスにあるITERのトカマク型核融合機が500MWの発電のために僅か50MWのエネルギーでプラズマを加速して最低の経済性は確保することになる。
しかし、EU以外に六カ国も参加するそのITERのプロジェクトは政治的な問題を抱えていて2019年まで待たなければいけない状況以外に、ヴァンデルシュタインのステラレーター型とは異なり、間欠型の運用しか出来ないため恒常運転とはならない。
燃料は、リチウムと重水素で、一億度に加熱されて、核融合されたヘリウムに生じたエネルギーの二割方が重水素とトリチウムに受け渡される。原子力発電との差異は、ヘリウムは死の灰とならないことであり、いくらかプラズマによって放射能汚染された装置も80年から100年で再び「正常化」されるということである。要するに原子力発電のような「トイレの無いマンション」とはならないというのである。
さらに危険性も、八割方のエネルギーを得る中性子がブランケットに流れ出て、その運動エネルギーがヘリウムガスなどの冷却材を熱して、さらに中性子と共にリチウムを沸かすので、連続した中性子線の存在である。つまり、そのリチウム原子に中性子が数段に亘って捕らえられる工程が原子炉の設計の味噌となる。しかしその臨界を迎えても所謂連鎖反応を起こすことが無く、上の装置においてもいかに回すことが難しいかであって、そのために炉の形状の精巧さが要求されて、ごみや汚れを避けるヴァキューム掃除機型の灰取器でプラズマからヘリウムなどが分離される。ヴェンデシュタインの特徴はそのように計算機で厳密に計算された複雑な未来形状を精緻に製作するクラフトマンシップにもよるところが多いようでドイツ製の良さが出ることだろう。
今回、テネシーのオークリッジ研究所提出の水冷の掃除機は初期軌道の安定化を齎し、ニュージャージーのプリンストンプラズマ物理研究所から提供された磁場調整装置は、五つの新たなプラズマ軌道を提供することで、安定するまでの修正の必要が小さくなる。そしてそれを赤外線で計測する機器がニューメキシコのロスアラモス国立研究所から提供された。
研究段階を含めて実現化までは強大なプロジェクトであることは変わりなく、原発のような歴史を抱えていないとしても上ITERの例で見られるように国際競争の中でプロジェクトのマネージメントが難しいことには変わりない。しかし、所詮競争は必要であり、市場競争力が出てくるときは実用化は間近である。
1000メガワットの発電の2050年までの実用化へと、マックスプラントの予算枠150億円を含めて400億円の経費が計上されているが、ITERが一兆五千億円以上の予算であるので大分安上がりである。しかし再生可能エネルギーへの投資に比べるとやはりこの予算額は目立つ。
もちろんその可能性と共に核融合への反対の意見もあって、その最も代表例は、核融合技術が実用化される頃にはそのようなエネルギー消費はプロジェクトを執り行っている先進工業国社会にはもはや必要ないであろうとするものである。そしてその技術は所謂発展途上国で産業発展のために生かされるだろうというものである。もしそれが事実だとすれば、それはそれで国際的社会形成の経済的基盤となる訳で必ずしも否定されるものではないであろう。当然ながらCO2排出問題もこれで解決できるのである ― どこか原発の発展利用を謳った共産主義のユートピア思想を思い起こすかもしれないが。
参照:
Die Sonne vom Himmel holen, Ulrich Hnida, vom 16.8.2011,
Amerika heizt mit im Sonnenofen, Günter Paul, FAZ vom 3.8.2011
核融合へと舵を切るエネルギー政策 2010-02-02 | 女
再生不可能な科学的教養 2011-08-09 | 文化一般
潮流を正しい力に換えるには 2011-07-30 | テクニック
獅子のように強い心で 2011-07-08 | アウトドーア・環境
重要な歴史的証言となる事件 2011-05-01 | 雑感
勝手に風呂敷を広げる面白さ 2011-03-09 | BLOG研究