Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

象徴天皇を庇護するとは

2016-08-10 | 文学・思想
週明けの車中のラディオはお昼のニュースで明仁天皇のヴィデオメッセージについて報じていた。東北震災以来の異例の二度目の語り掛けであるという事である。私も朝から生を観ようと思っていたが最初の数十秒は欠けた。文字起こしで内容を再確認した。

「始めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する機能を有しません。」の「始め」が気になったからだ。どうもメッセージの題目の「象徴としての天皇」を指すらしい  ― これに関しては、宮内庁の公式文書で再確認すると、「天皇という立場上,現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら,」もしくは「本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇…」となり、題目は「象徴としてのお務めについて」である。そして、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく,安定的に続いていくことをひとえに念じ,」と締める。つまり、「これを弄るようなことは認めがたいが、それに対して発言することが出来ない。」という事である。最高級の形で護憲を声明したことになる。

新聞は第一面の二大トップニュースとして伝えている。因みにもう一つは先週から続いている当局のリーク情報の続きで ― 電話で、人の殺し方を車でひき殺ろせとアドヴァイスしたが、アフガニスタン難民の方は免許を持っていなかったという電話会話の中身であった ―、ヴュルツブルクとアンスバッハのイスラム国テロ犯罪とサウディアラビアの関係についてである。その一面で、「(これまでのように、全身全霊をもって、象徴の務めを果たしていくことが、)難しくなるのではと案じています」と言葉を引用して副見出しを付けて、先ずは「右翼日本政権自民党は天皇の退任希望に拘わらず、憲法改正で象徴天皇を元首としようとしている。」と書いて、第三面の写真入りの記事に繋いでいる。

そこでは、病後に長く考えていたことが今回七月の予告に続いて公にされたことで、必要で困難な法改正などに迫られるが、二つの対処法があって、一つは時限立法にするという方策で、これも時間が掛かるという、そしてもう一つは一切無視して、これまでの様に負担軽減で誤魔化すという方法だったが、今回のヴィデオメッセージでそれが明白に否定されているので、これも儘ならなくなったとする。

つまり象徴天皇制が議論される。ここでも七月に伝えられていたように、そこで右翼筋が問題にするのが、空位になる皇太子に女子を選ぶかどうかの議論を再び呼び起こすことだとされる。日本のネットメディアも今回漸くこれを扱った。どうも女子の継承権は日本ではもはやタブー視されているようで、小泉政権から安倍政権への性質の変化がここにもみられる。

しかし女子継承権の議論は、何も男女平等の問題だけではなくて、今後の天皇家の維持を考える場合の重要策だとする。つまり、次世代の男子ヒサヒトはまだ九才であり、それでは危ういとされる。一部の見解として、政治的発言を許されない明仁天皇が平和主義を堅守して、修正主義や民族主義の大きな流れの防波堤となっていて、日本国の良心とされていると書く。

そうした良心も責任も天皇に担保出来ないのが象徴天皇なのだ。つまり、天皇の政治利用を認めないという根拠で天皇発言を無視したり、そもそも象徴天皇をも認めないというならば、私の様に移民するしかないのである。さもなければ自身の科学的な立場に懐疑せよ。男女同権を語る前に女子の継承権を語るのがそれを専門とする学者の仕事であり、市井のものは象徴天皇制の下でこうした発言に真摯に向かい合うことが求められているのである。

新聞には、放送のモニターの前で頭を垂れる者もいたという。戦時戦争世代の人だと思うが、どうなのだろうか。少なくとも私の周りにはそうした人はいなかったので分からない。震災時にも労い、時間を掛けて率直に話しかける姿は、映像を意識する政治家とは全く違うと書いてあったが、象徴制を排して元首としたい人たちの立ち振る舞いをしっかり見届けろと言いたい。



参照:
Beginn einer neuen Zeitrechnung, Patrick Welter, FAZ vom 9.8.2016
退位の緊急事態への一石 2016-07-15 | 歴史・時事
天皇の「悔恨」の意を酌む 2015-08-16 | 歴史・時事
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2 コメント

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Unknown (oki)
2016-08-31 05:42:30
まあ、陛下は今の政治には危機感がおありですよね。いつだったか、園遊会で、国歌の強制は望ましくない、と述べられたり、去年も今年も、終戦記念日に、深い反省、でしたっけ、入れられたり。
もともと、ご存知のように、安倍さんは、70年談話で、侵略とか、入れたくなかった訳ですが、読売新聞に譲歩して入れた。
読売新聞は、わざわざ社説で、侵略戦争へのお詫びを、と題した記事載せて、それに従えば、安保法案に賛成すると打診したそうだし。
もう、陛下は、今の政治にはウンザリされたのかな?
陛下の政治利用は激しく、解散に、7条解散?だっけ、使ったり、当然、象徴といいつつ、外国訪問者からすれば、国王扱いですしねー。
女性天皇を認めるのは、もう当然と言え、そもそも、最高裁が夫婦同姓を合憲にしたこと自体が日本の遅れですね。
最高裁は社会に混乱を与える判決は絶対出さない。これ、不文律。
ところで、懲役8月が出ちゃったんですが、ドイツの刑務所って、どんな感じなんですか?
ノルウェーなんかは、刑期が短い刑務所は、社会に開かれて、外出も出来るっていいますね。
犯罪者も必ず社会に戻る。ただ、閉じ込めておけばいいという訳ではない。
日本はここもダメだ。
拘置所で、当所執行、つまり、拘置所で受刑している人を見ると、軍隊のよう。それなら、受刑者を災害救助とかに行かせればいいと思うけど、大震災の時も、仙台刑務所は、何事もなく、普通の生活を受刑者はしたそうでー。
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「混乱を与える判決は絶対出さない」 (pfaelzerwein)
2016-09-01 02:02:35
不文律、政治判断との兼ね合い、最近は砂川判決の統治行為論が巷でも話題になりますが、ドイツの憲法裁判所でも逆に政治判断をさせない事にもなりますね。これに関しては法務省は調査官を派遣しているのは知っています。

懲役ですか。詳しくはないですが、昨年は禁固になるBMGの元代表の検査収監が話題になっていましたが、恐らくその刑の内容によってある程度すり合わせはあるのではないかと思います。自由度も刑の目的や州で相違がありそうです。

ネット情報では北ドイツを中心に全体の16%が昼は出れるようになっていて、上の代表もまた有名な偽絵画親方のベルトラッチなどもVW重役などと並んでこれになっています。ネット完備はまだ少ないようです。

ある種の人たちにとっては懲役の更生への効果があるのは分かりますが、あまり時代外れなことをやらせると余計におかしくなりますよね。拘留を引いてまだ八カ月ですか。来年の春過ぎまでですね。まだ収監までは日にちはあると思いますが。
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