Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

迎撃構想の世界戦略

2007-03-13 | 歴史・時事
中華人民共和国が軍事費を高騰させていくニュースとまたヘッジフォンド等の投資に対して制限を加えて行く情報が流れていたが、改めて全人代の正式文書を踏まえて観察していかないといけないだろう。中華人民共和国の衛星爆破のニュースが世界中を驚かせ、またミュンヘンでの安全会議の結果を踏まえて、その後の世界のミサイル防衛網構想が新聞記事となっていた。

軍事情報に詳しい者には目新しくはないのだろうが、あまりにも日常生活とは異なる上空で起こることなのでイメージが湧かないのは当然である。はたして、その記事を読むとやはり印象は変わった。

何よりも意外であったのは、レーガン大統領が提唱したスターウォー構想に始まり、これは未だに到底完成されないと言う事実である。90年代にドナルド・ラムスフェルドによって再び協議され、1999年のクリントン大統領時に実行に移されるが、冷戦後には第三世界の悪党国からの予期せぬ攻撃に備えると、その目標は推移した。故に2001年以降にABM協定中の迎撃ミサイル条項が、米国によって一方的に破棄されて、子ブッシュ大統領の舵取りで弾みがついたのは当然かもしれない。

2008年には89億ダラーの防御構想の予算が、2013年には507億ダラーになる事から、これから本格的に整備されることになる。2004年にはアラスカ・カリフォルニアに迎撃ミサイルが配備され、弾道ミサイルへの攻撃に初めて備える事が可能になったらしい。

しかし、ロシアが3800個の弾頭を飛ばすことが出来て、中国も410の核弾頭中32個は飛ばせるものとして、また中国としては少なくとも米国の幾つかの大都市は灰にできる反撃力を維持する意図があるとされる。つまり、量的な平衡が理論的に存在しても、決して完全に防御されることはない。

嘗てヴァルシャワパケットでは、ポーランド、チェコ、ブルガリア、東独に弾道ミサイルを配置していたとされて、その当時核保有国を含めミサイル保有は九カ国であったのが、現在は二十五国に拡大されアジア・近東の多くは危険を孕んでいるとされる。

特にロシアは、今回もNATOと共に防御システム構築を試みたが、結局NATOによって、現在ロシア周辺国での整備が進んでいる事から、モスクワでは500個保有すると言う核弾頭を運ぶ弾道ミサイルの高性能化などに弾みがついている。特にチェコにおけるレーダーシステムやポーランドを含める滑走路上への迎撃ミサイルの設置は、第三国の欧州や米国攻撃に備えたものとして、ロシアの軍事圧力の骨抜き化になるので、モスクワは嘗ての弟国に政治的圧力をかけた。

ここで気が付くのは、ポーランド軍がイラク派兵に応じた成果は、ロシアに対して牽制出来るカードを持ち得た事だろう。

同じように戦略的なシステムを、米国は、イスラエル、日本、カナダ、オーストラリア、英国と協調して構築する。特に北朝鮮のミサイルは、東京のみならずアラスカを狙う可能性もあるとして、またイランのミサイルはイスラエルだけでなく西欧を狙えるとして、システム構築の根拠としている。

この記事を読むとなるほど、こうした軍事バランスがあるからこそスカットミサイルが売れるのであって、完全に防衛出来るようになると、核の傘さえすらも取り払われる。ポーランドの二股膏薬のような政治戦略を見ていると流石に歴史の智恵を感じさせるのである。

一方日本は、諜報活動的な操作も困難ではない、大資本メディアが握る二項対立的に偽装化されたオピニオンにナイーヴな世論は左右されてイラク出兵を果たした、そのように外からは見えるが事実は違うのだろうか。こうした戦略的なノウハウは、占領政策から蓄積されたライシャワー氏などを代表とする極東研究の一貫として生まれてきたに違いない。

そうしたバランス感覚を以って戦略構想を練り、外交的な軸を上手に築いて行くのを政策と呼ぶ。しかし、それ以前にジャーナリズムと称する道化師は、筋書きの定まった茶番劇を演じるサーカスの緞帳の前で、一体誰に向けて何を演じるのだろう?



参照:
Verteidigung gegen Schurkenraketen von Nikolas Busse,
Alte Bedanken, neue Nervositäte von Michael Ludwig,
Aus der FAZ vom 22.2.2007

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6 コメント

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こちらこそコメントありがとうございます (toxandoria)
2007-03-13 23:10:44
pfaelzerweinさま、こちらこそコメントありがとうございます。

また、コメントの仕方について余分なお手数をおかけしておりますこと、お詫びいたします。
ちょうど今は第1回「日豪自由貿易協定(FTA)の公式交渉」の開始(4月23日~ )を目前にしてオーストラリアのハワード首相が来日中ですが、言うまでもなく、その主要な目的は豪州産「農畜産物」の輸入枠拡大の約束を安倍総理(及び松岡農水相)から取り付けることです。

これによって、現行約40%の日本の食糧自給率が更に下がることは確実となっており、ひいては、このようにガチガチの市場原理主義政策の波に飲み込まれる日本全国の中小弱小農家の疲弊状況は着実に破局へ向かうと思われます。国民を想う「愛国者」を唄う(仮装する?)安倍氏らの本心が疑われる所以です。

ともかくも、このような点について容赦がない安倍政権は、間違いなくサッチャリズムの一面的な受け売りのような小泉政権の後継者です。このため、伝統の農山漁村風景と山紫水明の自然環境を土壌とする「美しい国」ニッポンを創るというキャッチフレーズは“擬装右翼の戯言”に聞こえてしまう訳です。とても、これは“格調高く正統右派たるヤマト・オノコの発想”とは思えません。

また、小泉政権と同じく安倍政権の中枢も、喩えれば“博徒または無頼”風体の面妖な国会議員で固められた魑魅魍魎の一群といったところで、ともて品格と品位に欠けることが気がかりです。従って、渦中の松岡農水相の「光熱水費問題」などは氷山の一角という感があります。

ボードリヤールのシミュラクルの予見にせよ、アンソニー・ギデンズのデモクラシー論にせよ、ロバート・R・ダールのポリアーキーにせよ、欧米諸国の政治には、未だに一定の理念型を希求する情熱と良質な価値観が残っていることに羨望をすら覚えてしまいます。いずれにせよ、再び、日本の場合はブッシュ後のアメリカに左右されることになると思われます。

余談ですが、来月上旬にドイツを巡る予定です。ベルリン、ドレスデン、ニュルンベルグ、ミュンヘン、シュバンガウ、ローテンブルグ、ハイデルベルク、フランクフルト辺りとなる予定ですが、ドイツは初めてのこともあり、天候の具合が気がかりなところです。
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新たな平衡の中に包含されていく仮想状態 (pfaelzerwein)
2007-03-14 04:52:18

先ず、この場を借りて、ベルリンを初めとする政治情勢を短く補足致します。

やはり、ロシアを包囲する形となる東欧両国の戦略は激しく非難されていて、ヴァルシャワはその右翼団体の政治的影響を以って警告されました。また、プラハもプライヴェート事では無く、EU事であるとして名指しされています。

ロシアへの牽制は冷戦への復帰として恐れられており、ベルリンでは米国の防御構想を新たな軍拡とする意見が強まってきそうです。この構想は、クリントン政権を引き継いで今後も民主党でさらに推進される時、最重要の外交課題となりそうです。

昨日のTVにおいても、イランのミサイルを欧州で迎え撃つのは、ワシントンの新手の被害妄想外交戦略としていたようです。これは、北朝鮮問題で良くご存知の通りです。

ある種の平衡・均衡の破れに対して、あたかも更なる平衡の中に包含されていく、仮装・擬装(仮想)状態が、まさに、冷戦復活と言われる完全に防御され得ない防御構想なのでしょう。



食糧自給政策や反対に地産が矛盾しているようで面白いのですが、食育とか、日本食認定とか訳の解らぬイデオロギーが一人歩きして、批判力の無いメディアに平然と載るようで、食卓まで国家が管理する全体主義に驚いております。利権を持ってなんとかそれを産業にしようとする魂胆は、今や小子化対策で性生活と生殖にまで及んできているようで大変恐ろしいです。

ドイツの4月は、5月ほどに安定はしていません。特に本年は何が起こるか分かりません。この時期、地域による差は少ないですが、晴れると日差しが強いので昼夜の温度差は大きいでしょう。昼はしばしば外で食事が出来ますが、夜は野外で食事出来る日は殆ど無いでしょう。出来てもかなり肌寒いです。昨年と比べてアーモンドの開花一月以上違うので昨年5月とも比べました。
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早速のウェザー情報ありがとうございます (toxandoria)
2007-03-14 07:33:24
早速のウェザー情報ありがとうございます。参考にして身支度するつもりです。こちらも、今までの暖冬はどこへやらの状態で、ここ数日は一転して極寒の日本列島(特に北半分が)となっております。

やはりそうですか、ヨーロッパの現在の空気がよく分かりました。米国の対ロシア及びイランを睨んだ軍拡は「テロとの戦い」の先にある新たな「冷戦体制画策」シナリオのような気がします。

ご指摘のとおり、今の日本で市場原理主義の先に見えつつあるのはバイオポリティクスの世界だと思われます。本当に恐るべきことが日本では起こりつつあるようです。
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先ず利を得る (pfaelzerwein)
2007-03-14 15:36:18
冷戦偽装でプーティン大統領は先ず利を得たようです。しかし、先のミュンヘンの安全保障会議時点ではこうした情勢は政治的に不利に影響していた筈なのです。その後、タカ派な態度を示して有利に導いたのでしょうか。

軍事費は、タミフル備蓄どころの公費の流出ではありませんからね。
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拙記事にプロローグを追記しました (toxandoria)
2007-03-14 21:22:56
拙記事、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070314に下の<プロローグ>を書き加えましたので、お知らせいたします。

<プロローグ>

【「末は博士か大臣か」。こんな言葉が語られたのははるか昔のこと。博士はともかく、大臣、政治家の権威は著しく失墜した。「政治家」という言葉から多くの人が抱くイメージは、企業から裏金を受け取り、国家を利用して私服を肥やす悪人だろう。いつのまにか政治家は公に奉仕するものから、売国奴になってしまった。】

上の【文章】は、【連想検索サイト[想・IMAGINE、http: //imagine.bookmap.info/imagineの「新書マップテーマ:政治家、http: //shinshomap.info/theme/politician.html]】からの転載です。

残念ながら、現在における日本の政治家についての我われの共通認識は、こんなところでしょう。しかし、この共通認識は未来永劫にわたり不変であるはずがなく、我われ自身が変われば、このような共通認識の中身、つまり売国奴まで身を落とした日本の政治家の中身は変わり得るのです。我われは、このように「単純明快な事実」を決して忘れるべきではないようです。

ところで、この連想検索サイト[想・IMAGINE、http: //imagine.bookmap.info/imagine]は、国立情報学研究所の高野明彦・教授(http: //www.nii.ac.jp/index.shtml)らが中心となって作った非常に野心的なサイトです。

その特徴は“複数の情報源からの“見え”を組み合わせることで、我われが電子情報空間の中での緩やかな位置を知り、その電子情報空間内でのアバウトな位置と我われの脳内にある潜在記憶とを緩やかに摺り合わせることで、これから我われがどの方向へ歩き出すべきかを自分で判断(決断)できるように工夫してある、という点にあります。

高野教授は“いたずらにWeb2.0などという流行(はや)り言葉に踊らされた我われが、グーグルの絞り込みは全ての知識の結果だなどという軽薄な錯覚に嵌ることのないように”と警告を発しています。それは、そのグーグルの絞込みの結果が極めて狭く偏った知識であるかも知れないからです。

そのことの喩えとして、高野教授は次のようなことを言っています。

・・・指定したコトバの有無だけで探すウエブ検索は超強力なサーチライトのようなものであり、地球の裏側まで見通せるかも知れないが、その視野は非常に狭い。
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興味ある観察対象 (pfaelzerwein)
2007-03-14 22:31:55
なるほど、ネットでの知識の選択は重要な教養をベースとした能力になっています。まだまだ、学術データや論文など、解放されていないアーカイヴが多く、その真価はまだまだ示せていないと思われます。

一方、商業的・政治的利用も一般のBLOGなどの洪水のもとに限界が見えてきているようで、グーグル検索による工作も見えないように行われることが大切なのでしょう。

膨大な情報量の動きは興味ある観察対象です。
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