「くまとやまねこ」の著者(文 湯本香樹実 絵 酒井駒子)が14年ぶりに描いた絵本。
前回ご紹介した、新聞掲載の湯本さんのインタビュー記事によると、あのとき、どうして、くまは暗い部屋を出て、外に出る気になれたのか。その問いに対する答えとして、書かれたそうだ。くまの心を外に向けさせるきっかけは、なんだったのか。。
「橋の上で」は、ある少年がおじさんに出会う話。学校の帰り道、「橋の上で川を見ていた夕 . . . 本文を読む
食卓の椅子の上にも食卓の上にも新聞が山積みになっていて、立ったまま食事をしていた。ある日、思い立って、新聞を一気に片づけた。食卓の半分ほどにできた空間がうれしくて、いっぱいおかずをつくって、久しぶりに座ってご飯を食べた。
山ほど捨てた新聞の中に、母が荷物と一緒に送ってくれた毎日新聞の書評があった。その中に、宝物のような記事があった。2022年9月24日の書評。湯本香樹実さんという作家のインタビュ . . . 本文を読む
山の辺の道で、鶏を見たので、最近読んだ本のことを書こうと思う。「羽根」というタイトルで、レイモンド・カーヴァーの短編集「大聖堂」の一篇。図書館でたまたま「頼むから静かにしてくれⅠ」と一緒にカーヴァーを2冊借りたものの、積読で、もう返さなきゃと枕元に置いてあった。他に読む本もなく、短編集という読みやすさも手伝って、寝っ転がりながら、10日間くらいかけて、ちょこちょこと読んだ。
とっつきにくい作家で . . . 本文を読む
向田和子さんは、向田邦子さんの末の妹。赤坂で、小さな小料理屋「ままや」を開いている。
図書館で向田邦子さんの本の横に、和子さんの本があった。「かけがえのない贈り物 ーままやと姉・邦子」
向田邦子さんのエッセイには、家族のことがたくさん書かれている。この本を読んで、邦子さんは、とても家族を大切にした人だと知った。母や妹のことをすごく気にかけていて、美味しいものを送ったり、食べに行ったり、旅行に連 . . . 本文を読む
図書館で、タイトルに魅かれて、借りてみた。
弟子丸氏という名前を見て、読んだことがあると思い出した。でも、内容は覚えていなかった。2編の短編から成り、1994年、小川洋子さんの初期の作品。
「薬指の標本」たゆたうようなお話。
思い出の品を標本にしてほしいとやってくる人々の受付や手伝いをする事務員として雇われた「わたし」。
弟子丸氏は、経営者であり、標本技術士。
小川さんの小説の舞台は、い . . . 本文を読む
川端康成は、ノーベル文学賞を受賞した文豪。ゆえに、今まで、妙に手が届かなかった。でも、この年になってみると、実家の古いダンボール箱の中から出てきて、捨てずに読んでみようと持ち帰ったのは、文豪ゆえかもしれない。若い時分に読んだかどうかもわからない昭和51年の古い文庫本。読んでみて、とてもおもしろい作家だと発見。
「イタリアの歌」タイトルからして、美しい世界かと思えば、いきなり研究室で火事が起こり、 . . . 本文を読む
少し前の読売新聞で、今年は、向田邦子さんの没後40年で、向田さんの本が売れているという記事があった。懐かしくなって、本棚の移動の時に、ダンボール箱に入れたまま、ずっと眠っていた中から向田さんの文庫本を見つけ出して、読み始めている。
「眠る盃」は、短いエッセイばかりで、今の私にはうってつけ。
しかし、30年以上前の昭和の文庫本は、ふりがながあまりないことに気付いた。読めない漢字がある(笑)。。。 . . . 本文を読む
病院に行くのに、あわてて鞄に入れた本。
水の話かと思って読んでいたら、意外にも、火が出てきて、驚いた。ちょうど病院に持ってきたもう一冊の本「リーチ先生」にも、陶芸の話の中で、火が重要なモチーフだったので、本と本のめぐりあわせを感じて、少しうれしくなった。
雪のひとひらが生まれて、地上に舞い降りてからの旅を女性の人生にたとえて描いた不思議なファンタジー。
雪のひとひとらが、雨のしずくに出会い、 . . . 本文を読む
寝っ転がりながら、本を読む。ちょっと読んでは、休むの繰り返し。しかし、昨日読んだ本の中身を、今日さっぱり思い出せないことも、結構あって、一体、ちゃんと読めているのか不安になることも多いこの頃。この本もきっと大半は忘れるでしょう。(実際、難しそうなのは読み飛ばしているし、今時点で、すでに忘れている(笑)。)
でも、好きな人について書かれたエッセイは忘れない。巻末の「渥美清とフランス座」。若い頃、フ . . . 本文を読む
今回、入院するかもと思って、積読の中から急いで鞄に入れた本。随分前に、ぢょん でんばあさんが、コメントで薦めてくれて、入手したものの、なかなか読む機会を逸していた。
リーチ先生ことバーナード・リーチや柳宗悦、高村光太郎とどこかで名前を聞いたような人がたくさん出てきて、東洋と西洋の交流、芸術への熱い思い、人と人とのぶつかりあい、友情、陶芸への情熱が伝わってきて、夢中で読んだ。人物像、構成とも見事で . . . 本文を読む
ポール・ギャリコの猫物語。主人公の少年は、冒頭いきなり車にはねられて、意識を失う。意識が戻ると猫になっている。
ジェニィが、猫としての生き方を手ほどきする。初めは教えられてばかりだったのが、段々と自立していく。
でもいつも二匹は一緒。海の航海中、ジェニィが波にさらわれて海に落っこちる。
ポールは躊躇することなくジェニィを助けに海にとびこむ。この場面、見事で船を止めて助けにいく船員たちに感動し . . . 本文を読む
私は犬派である。小学生の頃、マルチーズを飼っていた。いたずらばかりしていたから、私や弟たちにはなつかず、母のあとばかり追いかけていた。亡くなって何十年も経つけれど、今でも帰省するたびに庭のお墓にお参りする。子どもの頃から、友達にも猫を飼っている人はあまりおらず、猫は、縁遠い存在だった。
最近、若き友人夫婦が猫を飼い始めて、SNSに可愛い動画や写真をアップしている。会ったことのない猫だけれど、飼い . . . 本文を読む
小川洋子さんの小説を読むと、どこまでも深く、静かで広い内面の世界に潜っていったような気持ちになる。
ひそやかで、それでいて、豊かで、光あふれる世界。
ひっそりと生きている人たちのそれぞれの内面にこんな豊饒な世界が広がっていることが伝わり、敬虔な気持ちになる。
チェスは知らない。でも、将棋なら知っている。チェスを愛し、チェスに愛された主人公。物静かで、やさしくて、想像力豊かで、賢い少年の心の動 . . . 本文を読む
いきなり入院して、鞄に中に入っていたのは、習っているジャズピアノのプリントのほか、ポール・ギャリコの「スノーグース」という文庫本一冊だけでした。
検査を待つ間や、入院中、元気な時に、少しずつ読みました。薄い短編集でちょうどよく、それぞれの短編に読みごたえがあって、どれも目頭が熱くなるものばかりで、偶然に感謝です。
「ルドミーラ」は、スイスの山奥で、小さな牝牛に起きた奇蹟のお話です。
乳が全然 . . . 本文を読む
以前、ご紹介した漫画「BLUE GIANT」の続編。主人公の宮本大が、日本の仲間たちと別れ、ひとり、ドイツに渡り、ジャズを始める。
このシリーズ、やはり、前半がとりわけよい。ドイツ語もろくにしゃべれない大がまだ誰とも出会わず、練習場所を見つけるのにも苦労し、ひとりでがむしゃらにジャズ道を突き進んでいこうとする。
そんな大の熱い姿をそっと見守ったり、さりげなく手を差し伸べる大人や同輩たちの姿がい . . . 本文を読む